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「抱っこ食べ」ってどうするの?(前編)

さて、前回は「抱っこ食べ」をするのに必要な道具について説明しました。
今回は「抱っこ食べ」って具体的にどうしたらいいのかを
説明しようと思います。

「抱っこ食べ」は、
大人主導で赤ちゃんに食べさせる前期と
だんだんと子どもが主導になってくる後期に
わけることができると考えていますが、
今回は前期について説明します。

まずは座ってみよう

「抱っこ食べ」に必要な道具も揃い、離乳食も準備完了。
そうしたらまずは大人が赤ちゃんを抱っこしながらイスに座り、
テーブルにつきます。
このとき赤ちゃんのおへそのあたりの高さにテーブルがくるように、
そして赤ちゃんの両ひじがテーブルの上で
自由に動かせるくらいの距離感で座ります。
赤ちゃんと大人が完全に同じ方向を向くように抱っこするのではなく、
お互いの顔が見れるように大人はテーブルにむかってななめに、
赤ちゃんはテーブルにむかってまっすぐになるように座るようにします。

食べる場所と時間はやっぱり固定で

ご飯を食べる場所に関しては、授乳のときの考え方と同じです。
基本的には毎回必ず同じ場所で食べるようにします。
できれば食事の時間も大体毎日同じになるように
過ごすことが望ましいです。
もちろん無理のない範囲で。

これまでに何度も同様の説明をしてきていますが、
これも赤ちゃんに見通しを持たせてあげるためです。
「ここに座ったらご飯なんだな」と
赤ちゃん自身がわかるようにするのです。

これから何が始まるのか見通しが持てていると、
赤ちゃんも落ち着いて食事にのぞむことができます。
何をするかわからずソワソワした状態でご飯を始めるよりも、
ずっと集中して食べることができるのです。

食事に集中できる環境をつくろう

集中という観点からいうと、
座る場所のまわりに赤ちゃんの注意をひくようなものが
ないことも大切です。
TVや携帯、おもちゃなどが目に入ると、
どうしてもそちらが気になってしまいます。
外の景色が見えるのも、
赤ちゃんにとっては集中を妨げる要因になります。
一度何かが気になってしまうとどうしても食事に集中できず、
食べさせることが難しくなってしまいます。

ただでさえ離乳食は食べてくれないことが
親や保育者の大きなストレスになりがちなので、
できるだけそういった要因は排除して、
赤ちゃんが食事に集中できる環境をつくることが大切だと思います。
まだ十分に育っていない赤ちゃんの集中力を
環境で補ってあげるという考え方です。

いざ食べさせるときに気をつけたいこと

このようにテーブルにつけたら、いよいよご飯を食べていきます。
大人が介助スプーンを使って赤ちゃんの口にご飯を運びますが、
このときに気をつけたいことが3つあります。
1. 介助スプーンですくうご飯の量
2. 介助スプーンを持っていく場所と引きかた
3. 顔を見合わせて、声をかけてあげる

以下、ひとつずつ解説していきます。

1.
介助スプーンでご飯をすくうとき、
介助スプーンの半分くらいの量を
前の方にのせるようにすくいます。

いっぱい食べてほしくて
ついつい山盛りすくってしまいそうになりますが、
赤ちゃんがひとくちで食べられる量は
それほど多くはありません。
咀嚼する力も未熟なので、一回の量はスプーンの半量で。
そして食べやすいようにスプーンの先側にのせるようにします。

2.
ご飯をすくったら介助スプーンを
赤ちゃんの下唇のところにのせるようにします。
そうすると赤ちゃんが自分で上唇と顎を使って
スプーンの上のご飯をとりこむように
食べることができるからです。

こちらの方から口の中までつっこんでしまうと
逆に自分でとりこみにくくなってしまいますし、
口の中を傷つけたり誤嚥の可能性もあったりします。
スプーンをひくときにも
ついつい上顎になすりつける形になりがちなので、
そうならないように下唇に置いて、
赤ちゃん自身がとりこめるようにするのです。

赤ちゃんが自分でぱくっと食べ物をとりこめたら、
スプーンをやさしく水平にひきます。

3.
愛着関係がしっかりと築かれていると、
赤ちゃんはご飯を食べさせてもらっているときに
何度も大人の顔を見るようになります。
ですから大人の方もしっかりと目をあわせて
「おいしいね」と声をかけて心を通わせるようにします。
幸せな気持ちでご飯を食べることがなによりも大切なことです。

また、食べているときに今口にしている食材の名前や、
感触や味などを言葉にしてもらうことも、
赤ちゃんの感覚や語彙力を育てていく上で重要です。
「にんじんだよ」「赤いね」「あまいね」など
、たくさん声をかけてあげながら食べさせてあげるようにします。

なかにはご飯のときに大人の顔をほとんど見ない子もいますが、
そういう子には特に意識して、
心が通い合うよう丁寧に関わるようにすることをおすすめします。

「もぐもぐ」じゃなくて「あんぎあんぎ」

食材に関する声かけ以外にも、咀嚼を促す声かけもあります。
赤ちゃんは先ほども述べたように
咀嚼がまだ上手にはできません。
赤ちゃんにご飯をあげるときに
「もぐもぐ」と声かけをする様子をたまに見かけますが、
じつは赤ちゃんにはまだ「もぐもぐ」の口の動きは難しいのです。
「もぐもぐ」のかわりに、
「あんぎあんぎ」や「あぎあぎ」と
声をかけてあげてみてください。
こちらは奥歯の方を動かす口の動きを誘導できるので、
赤ちゃんが咀嚼をしてくれやすくなります。

食事は何分で終わらせる?

こうして「抱っこ食べ」を進めていくのですが、
どのくらいの時間で食事を終わらせるかも
気になるところでしょう。
たまに、食べたり遊んだりしながら
食事時間がだらだらと続いてしまうんですがどうしたらいいですか?
と質問を受けることがあります。

これも何度もお伝えしていることですが、
赤ちゃんの集中力はまだそんなに育ってはいません。
もって10分~15分程度です。
ですから食事の時間も10分~20分を目安にして、
それ以上になるようだったら
完食していなくてもそこで食事を切り上げるようにします。
それ以上続けてもとっくに集中は切れているので、
あとは遊び食べになっていって、
食べさせる方がしんどくなってしまいます。
特に離乳食をはじめたときは
まだミルクを足したりもできるので、
完食することにそこまで神経質にならずに
決まった時間で終わらせるようにしてみてください。
続けるうちに赤ちゃん自身も
食事の時間に集中して食べる習慣が育っていきます。

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