「抱っこ食べ」ってご存知ですか?
ご飯の食べさせ方には段階がある
生後5,6か月頃になると、
そろそろミルクだけでなく離乳食を始めようかとなってきます。
それまで抱っこでミルクを飲んでいた赤ちゃんが、
突然ひとりで座って離乳食を食べられるわけではないことは当然ですよね。
あたりまえのことですが、
ひとりで座って食事ができるようになるには
それなりの段階を踏んでいく必要があります。
授乳のみの段階から
何かに体を支えてもらいながら大人に食べさせてもらう段階、
食べさせてもらうばかりではなく自分からも食べようとする段階、
そしてイスに座って自分で体を支えながら食事する段階…。
このように少しずつ自分ひとりで食べられるように
成長していくわけですが、
個人的にはミルクの次の段階、
ここでの関わり方がとても重要だと考えています。
授乳の次の段階で用意するもの
何かに体を支えてもらいながら
大人に食べさせてもらう段階というと、
一般的には赤ちゃんがひとりでも座れるような
補助具や固定具のついたイスに座らせて、
大人が向かい合って食べさせてあげるというような
イメージを抱く人が多いのではないでしょうか。
でも、ConoCoではちょっとちがう食べさせ方を実践しています。
ではどういう風にしているかというと、
まず上記のような赤ちゃんを固定させるイスは使いません。
用意するものは、とてもシンプル。
・介助スプーン(スプーンを持てるようになったら乳児用スプーンも用意)
・かえしがあって重ためのすべりにくいお皿
・大人が座るためのテーブルとイス
介助スプーン
介助スプーンは、スプーンを持つことが困難な人を
食事介助するときに用いる
柄の部分が長くなっているスプーンのことです。
ご飯を赤ちゃんの口に運ぶときに、
あまりにも手と顔の距離が近いと圧迫感もありますし、
操作性も悪くなります。
また普通のスプーンを使うと、
口当たりが悪かったり、口の中でひっかかったり、
一回分の量が多すぎたりしてしまいます。
そういう理由から、赤ちゃんにご飯をあげるときには
介助スプーンを用いるようにします。
介助スプーンは薬局でもネットでも買うことができますが、
できるだけすくう部分が平ためのものを選びます。
赤ちゃんは口腔内の力がまだ十分には発達していないので、
深さがあるものだと口の中にものをとりこみにくいからです。
またステンレスの冷たさを嫌がる子には、
シリコン製のものも出ているのでそちらがおすすめです。
かえしがあって重ためのすべりにくいお皿
お皿に関しては、
離乳食を始めてすぐは子どもが自分で扱うことがないのですが、
いずれ子ども自身が使っていくことを考えると、
3,4cmほどの高さがあってかえしになる湾曲があり、
子どもの力ですくおうとしたときにお皿が動いてしまわないように
ある程度重さがあるすべりにくい無地のものがおすすめです。
こだわりのおしゃれな器だったり、絵柄が可愛かったり、
キャラクターが描かれていたりするものを選びたい気持ちもわかります。
でもそれは大人が楽しいだけのことです。
まだ機能の整わない身体で
初めてのことにチャレンジする
赤ちゃんの目線にたって選ぶことが必要です。
絵柄やキャラはどうしてダメなの?と思われるかもしれませんが、
赤ちゃんはまだそんなに集中する力が育っていません。
絵柄やキャラが描かれていると注意がそちらにいってしまい、
口にしている食材や食事自体に集中できなくなることがあるのです。
ですから少なくとも自分で集中して
最後まで食事を終えられるようになるまでは、
無地の食器を使うことをおすすめします。
可愛いと大人の方は嬉しいんですけどね。
お皿の数は、提供する素材分くらいあれば理想です。
とくに離乳食の初期は、こったものを作る必要はありません。
インスタなどで離乳食を見てみたら、
「○○と△△のなんとか和え」や「□□と××のリゾット風」みたいな
手が込んでいそうなものがたくさん出てきます。
でも離乳食の時期に必要なことは、
素材そのものの味を楽しでいくこと、
自分が何を食べているのか味覚でも視覚でも
わかるようになることです。
色んな食材が混ざり合って複雑な味わいになるよりは、
シンプルにニンジンのみ、ホウレンソウのみ、魚の白身のみなどの方が
赤ちゃんにはわかりやすいし、
食べやすいのです。
一素材一皿という具合に盛れたら、
食べやすさの面でもわかりやすさの面でもいいと思います。
大人が座るためのテーブルとイス
はじめに赤ちゃんの姿勢を固定して座らせるイスは
使わないと書きましたが、
ではどこに赤ちゃんを座らせるのでしょうか。
それは、大人の膝の上です。
膝の上に赤ちゃんをのせて、
大人の体と腕で赤ちゃんを支えてあげながら、
ご飯を食べさせるのです。
一般的にこれを「抱っこ食べ」と呼んでいます。
「抱っこ食べ」に必要なものは、大人が座るイスとテーブル。
赤ちゃんを膝にのせたときに、
テーブルの高さが赤ちゃんのおへそあたりになるのが理想ですが、
ご家庭ではわざわざそのために新しく買う必要もありません。
おうちにあるもので十分です。
ただ、10分~15分赤ちゃんをのせて座り続けても
大人の身体が安定するように、
イスや座り方を工夫してください。
座っている間に体勢が崩れてきてしまったり、
何回も姿勢を直さないといけかったりすると、
赤ちゃんが集中してご飯を食べられません。
背中にクッションを挟んだり、足置きを用いたりして、
大人が安定して座れるように工夫してもらえたらと思います。
ちなみに保育園ではちょうどいい高さになるので、
パソコンラックを「抱っこ食べ」専用に用意することが多いです。
なぜ便利グッズや練習グッズを使わないのか
ところで、
なぜ赤ちゃんの姿勢を固定するイスを使わないのか
疑問に思われる方もいると思います。
これは自力で座ることのできない子どもを
道具の力で無理に座らせると、
かえって姿勢が悪くなってしまうからです。
人間の赤ちゃんは頭が重いので、
まずは首、次に背筋・腹筋の発達を経て、
全身でしっかりと頭を支えられるようになっていきます。
その発達の筋道に逆らって
早くからひとりでイスに座らせてしまうと、
自分で自分の身体を支えるために必要な筋肉の発達を
妨げることになるのです。
そして結局は自分で姿勢を保つことができない、
姿勢の悪い子になってしまうのです。
人間の発達というものは、
本当にひとつひとつの積みかさねです。
何かを飛ばすと、その後かならずどこかに歪みが出てくるもの。
ですから大人の都合や便利さから開発されているような
便利グッズや練習グッズは、
保育のなかではできるだけ使用しないように心がけています。
おうちでも子ども用品を購入するとき、参考にしてみてください。
次回は具体的な食べさせ方について
さて、「抱っこ食べ」で必要な道具は以上になりますが、
次回は実際にどうやって食べさせていくのかというところを
解説したいと思います。