《選択的シンママ》-精子ドナーのリアリティ(1)-
妊娠に不可欠な精子ドナーについて色々と調べたので、ここから数回にわたって発信していきたい。
精子ドナーは必ずしも独身女性のためのものではなく、むしろ基本は婚姻関係にある不妊カップル(かつ男性不妊)のために活用されることが普通だ。
そしてもちろん、独身女性にとっても精子ドナーは重要なので、本当にいろんなことを調べました。これから複数回にわたって発信するために、まず大前提を最初にまとめてみたので、ぜひこの記事からご覧ください。
未婚の女性は日本国内の病院で正規に精子ドナーを利用することはできない
婚姻関係にある男女か事実婚男女でしか精子ドナーは受けられない。かつ、精子ドナーを選ぶことは日本ではできない(海外の精子バンクでは選ぶことができる)
日本国内で基本的には既婚異性カップルにのみ許されている人工的な受精には2種類あって、一つは精子を直接体内に注入するもの。もう一つは、体外受精もしくは顕微受精を体外で行い受精卵を体内に戻すもの。体外受精の方が妊娠確率は30代後半では5倍ほど高い
精子ドナーをめぐる話題として長年、子供の人権の中の「出自を知る権利」が議論されてきた。2020年、日本国内での議論開始から22年の時を経て、「生殖補助医療の提供等およびこれにより出生した子の親子関係に関する民法の特例に関する法律」が、“生殖補助医療のあり方を考える議員連盟”から提出、国会で成立された。出自を知る権利を実現するには、平たくいうと、匿名ドナーはダメで非匿名ドナーのみがOKとする必要がある。それによって慶應大学病院では2017年からドナーの候補者に同権利の告知を開始したところ、ドナーが集まらなくなり、2018年からは精子ドナー提供による人工授精を希望する無精子症カップル患者受け入れをストップしている。国は、国民感情的には非匿名ドナーでも提供者は十分に増えるだろうという見通しを、厚生労働省が2003年の時点でだしているが、慶應病院の2017年からの流れを見ると、慶應病院側の伝達の仕方もあると思うし、国からの十分な情報伝達や国民へのヒアリングが足りていないことは明らかだと思う。
出自を知る権利の加えて、2022年、衝撃の法案が提出された。野田聖子衆議院議員が議長を務める同議員連盟が、精子・卵子の提供・斡旋に伴う利益の享受を禁止、また非営利の提供・斡旋の対象は婚姻関係にある異性カップルのみとする法案を提出した。これによって、独身女性に精子提供したり、医療行為をした場合、事業者もしくは医療機関に、拘禁刑もしくは罰金、もしくはその両方が下されることになる。
これらの状況から、インターネットで精子提供者を自分で探している独身女性や同性カップルが出てきているが、それによって様々なトラブルが発生し、深刻化している。精子提供にあたり性行為を要求されたり、目の前でのシリンジ注入を要求されたりと、人の尊厳を傷つける、そして女性の身に危険を及ぼすような事象が起きている。(出典:「私の半分はどこからきたのか-AID非配偶者間人工授精で生まれた子の苦悩」)
これらが精子ドナーにまつわる現状である。
これから複数回にわたってそれぞれを紐解きながら、精子ドナーについて、学んでいきたいと思う。