PDMを使った配線引き直しの恩恵
PDMはリレーとヒューズの機能を内蔵した配電システムです。
レースカーの製作やコンセプトカーの製作現場では活用されていましたが、近年は旧車(クラシックカー)のリフレッシュの際に利用されることが増えています。
配線を引き直す際にエンジンルームや室内からヒューズやリレーのBOXが無くなり、スッキリした配線に仕上がりますが、単にボックスが無くなるだけではなく、その作業は同時に多くのメリットをもたらします。
リレーにはバッテリーからの配線、スイッチからの配線、電装品からの配線が接続され、ヒューズのカプラー両端の配線が接続されるため、5箇所の接点があり、さらにヒューズとカプラー間に2つの接点。合計で7つの接点があります。ひとつの電装品に7箇所の接点。つまり、そのまま引き直し作業をした場合には、加締め不良や接触不良のリスクが電装品ごとに7箇所。電装品30個分なら、210箇所もリスクが内在することになります。
対するPDMの場合、各電装品やスイッチを直結するだけで良いため2箇所。つまり配線の接続箇所は1/3以下。信頼性が3倍以上という事です。
配線の接続箇所が少ない事には、もうひとつメリットがあります。
接続箇所にはコネクターやスプライスを使用しますが、その箇所は配線の被覆を剥がして銅線を加締めます。
銅線は被覆を剥がした瞬間は金色に近い輝きですが、空気に曝されることで徐々に表面が酸化して、古い10円玉のような焦茶色になります。銅は導電性が非常に高い材質ですが、この焦茶色の酸化膜は電気を通さない「絶縁体」。
被覆を剥いてすぐの金色に近いタイミングでコネクターのピンやスプライスで圧着すれば、その部分は絶縁体が生成されずスムーズに電気を通します。
ところが、圧着が甘い状態だと間に空気が入り、酸化膜が生成。電気抵抗が大きくなるため、電気を通しにくくなると共に発熱してしまうのです。電気配線が高熱を発すると、高熱で被覆や内装が溶けます。接触不良から火花が飛ぶと、引火して出火するリスクもあります。
このように、配線のレストアをしたはずが、トラブルの原因になってしまう可能性もゼロではありません。
PDMを使用した配線の引き直しは、電装品を直結化することで継ぎ目の無いシンプルな配線に出来るため、トラブルのリスクも大幅に軽減できるのです。
古い配線と正確ではない作業のリスクの話しかしていませんが、PDM本体の性能や能力の話をする以前に、この部分の解説が重要だと考えました。
次回はPDMの本体について解説していきます。
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