#2 「稼いでも稼いでも、会社にお金が残らないんです」モテアソブの不思議なお財布事情
外貨を稼ぐ、住民に還元する
ー こちらにモテアソブ三軒茶屋(以下「モテアソブ」)の3年分の決算資料があります。これをもとに売上と利益の関係を見ていきたいと思います。
カズキタ 引き続きなんでも聞いてください。
ー このスライドを見ると、案件数や取引数は順調に増加しているようです。第1期の案件数は5件でしたが、第3期は3倍以上になっていますね。
カズキタ ありがたい限りですね。
ー 一方収支を見てみると、利益はほとんど会社に残っていないようです。その原因を探ったところ、こちらのスライドにヒントがありました。
ー 外注費の割合がものすごい高いです。これでは、稼いでも稼いでもお金が外に流れてしまいます。どういうことでしょうか?
カズキタ ああ、これは大丈夫です。住民を中心とするビジネスパートナーに還元しているのです。そもそもそういう会社なので、問題ないです。
ー 方針通りということですね。
カズキタ モテアソブは、僕が「友達と一緒に仕事をしたい」と思って設立した会社です。モテアソブの方針は、住民や友達に利益を還元すること。みんなで遊ぶように働いて、その利益をみんなで分かち合うことを目的としています。そのため、外注費が高いということは、「住民への還元率が高い」というふうにポジティブに捉えています。
ー なるほど、シェアハウスの外から仕事を取ってきて、住民と一緒に取り組み、受け取ったお金はみんなで分配する…ということでしょうか。
カズキタ はい、そのとおりです。ぼくはこれを「外貨を稼ぐ」と呼んでいます。
ー シェアハウスの外からお金が入ってくる流れを作るということですね。
カズキタ このコンセプトはずいぶん前からあります。実は、モテアソブには前身となる「部活」がありました。モテアマスデザイン部といいます。
ー ぶ、部活ですか?
カズキタ デザインについてみんなで勉強して、高めたスキルで実際に仕事を受けるというのがモテアマスデザイン部の活動内容でした。シェアハウスで仕事ができて、お互いにナレッジを共有しあえうという側面からも、部活としてやりやすかったです。
ー 単価、めちゃくちゃ安いですね。
カズキタ こちらも勉強の一環でしたから。当時はデザインをやりたい住民が多かったんですよね。ちょうど住民の中でもフリーランスの割合が増えてきたタイミングだった、というのもあります。
カズキタ 家で働く時間が長く、安定収入はない。ときには家賃の支払いが厳しいということもあるフリーランスの住民達を見ていて、何かできることはないだろうかと考えるようになりました。モテアマスの主任として、単純に家賃を下げることはできなかった。でも、仕事は分けられるなと思ったんです。
ー それで「外貨を稼ぐ」につながったのですね。
カズキタ そんな背景もあって、モテアソブは今もデザインの仕事を請け負うことが多いです。
仕事の関わりしろを増やす
カズキタ しかし、ぼくたちの仕事はデザインのみに限りません。一人ひとり異なるタレント性を持った住民達と一緒に、新しい仕事づくりにも取り組んでいます。
ー 大工による部屋づくりとかもありましたね。
カズキタ それ以外にも事例は増えています。たとえば、クラウドファンディングのプロデュースを行う「インドからの刺客」。この事業に関わっているのは、デザイナーやライターだけではありません。過去にクラウドファンディングを経験した住民が、クライアントに経験談をもとにアドバイスをしたり、住民たちが提供できるリソースをクラウドファンディングのリターンに設定したりといったことも提案しています。
ー 経験が仕事になるというのはよいですね。
カズキタ また、今年度から「グッドニート養成講座」というプログラムを運営しています。受講生に対して、さまざまな経験を持つ住民たちが入れ代わり立ち代わりで先生として教えています。これも、多様な関わり方のできるというモテアソブの特徴を示す一例です。
カズキタ 住民に還元しているものはお金だけではありません。仕事を通した「経験」もまた、友達同士で分かち合えるものだと思っています。
ー 経験!お金よりも大事だったりしますね。
カズキタ 本当にそう思います。モテアソブにおけるぼくの役割は、いかに多くの人達をモテアソブに巻き込めるか、その関わりしろを増やすことだと思っています。たとえば、一人で完結するようなタスクを複数の人たちに割り振ったり、クライアントに提出する見積もりの項目にモテアソブの特徴を活かした発展的な提案を混ぜたりといったことをしています。
ー モテアソブの関わりしろを増やして、多くの住民を巻き込んでいるということですね。仕事に関わった住民である、ビジネスパートナーの人数も見てみましょう。
ー 順調に増えていますね!
カズキタ 今ではビジネスパートナーの数もこれだけの人数になっています。ビジネスパートナーの組み合わせ次第で提供できる価値は無限大です。
カズキタ ちなみに、モテアソブの仕事を一緒にしているのはフリーランスだけではありません。会社員として働く住民が副業として関わっているケースも多いです。
ー 案件への関わりしろが大きいなら、副業としての参画もしやすそうですね。
カズキタ モテアソブの仕事ははじめての副業に最適です。自分の力で稼いでみたいと思っても、いきなり1人で始めるのはハードルが高いと思うんです。
ー それ、とてもよくわかります。クラウドソーシングのサイトを見るとたくさんの案件が掲載されていますが、実際にエントリーするのは気が引けてしまって…という話をよく聞きます。
カズキタ モテアソブでは友達と遊ぶように仕事を進めるので、その心理的ハードルは限りなく低いと思います。本業を持ちながら、自分のできることから小さくはじめることができます。
「御社と友達になる」からはじまる新規事業
ー 冒頭のスライドに戻りますね。このグラフを見てもう1つ特徴的だと思ったのは、案件数と取引先数の伸び方の違いです。取引先の数は3年で2倍になっていますが、案件数は3倍以上になっています。
カズキタ これはモテアソブという会社を理解する上で重要なポイントなので、詳しく解説します。ぼくたちは「御社と友達になる」ことで、新しい事業を創出するベストパートナーになりたいと思っています。
ー 出ましたね、キーワード。一体どういうことでしょうか。
カズキタ クライアントとの流れを例に紹介します。まず、ぼくたちの仕事は簡単なデザインの相談から始まることが多いです。「こんなポスターを作ってほしい」「こんなロゴを作ってほしい」といった打診からクライアントとの関係がスタートします。
ー 事業ドメインでいうところの「クリエイティブ事業」ですね。
カズキタ その仕事を通じて、ぼくたちはクライアントと友達の関係になることを目指します。そのうちクライアントと遊びに行ったり、お酒を飲んだりする仲になるわけですが、仲良くなるとお互いの夢や妄想について語り合うようになります。
ー 「実はこんなことをやってみたかった」とか「今こんなことをやろうと思っている」という話ですかね。
カズキタ そうです。それらに対して「それ、モテアソブと一緒に実現しましょう!」と提案してからが、友達になったクライアントとの次のステージです。
カズキタ モテアソブは多様なタレントを有する人材バンクと化しているため、パートナーとして取り組める新規事業の幅はかなり広いと思います。また、ぼくたちが得意とするクラウドファンディング、これが新規事業の創出には非常に相性が良いのです。新しい取り組みには、先立つ資金やその事業を応援してくれるファンの存在が欠かせません。クラウドファンディングはそれらを解決する手段のひとつです。
ー なるほど、たしかに新しく何かをはじめたい人にはうってつけですね。
カズキタ 新規事業創出を手伝うコンサルタント会社は世の中にたくさんあります。モテアソブはそういった会社とはまた別の観点から、新しく何かをはじめる人をサポートします。
ー 詳しく教えてください。
カズキタ ぼくたちが得意とするのは、アイデアを膨らませることと、とにかく盛り上げること。この2点です。
カズキタ まずアイデアについて。人間が1人で考えられることには限界があります。ぼくたちはクライアントと友達になって、一緒に遊びながら未来のことを話し合う関係になります。
ー みんなで話し合いながら考えると、思考の幅も広がりますからね。
カズキタ その結果、自分ひとりではたどり着けなかったビジネスアイデアの発想にたどり着くことができるのです。ぼくを含めて、アイデアを膨らませることができる住民ばかりですから。
ー モテアマスがものすごくユーモラスな人達の集団であることは、なんとなく肌で感じるものがありますね…
カズキタ 三茶のインドですから。
ー インド。
カズキタ また、そうして生まれたアイデアですが、やはりこれも1人で実現できるものばかりではありません。世の中には、1人でできること、5人だからできること、20人いてはじめてできること、100人いなければできないこと…それぞれ異なります。
ー コミュニティデザインやまちづくりの考え方に似ていますね。
カズキタ モテアソブは関わる人を増やすことに長けています。1人ではできないけれど、多くの友達とならできる。そんなことを一緒に考えて、一緒に実行していくパートナーでありたいと思います。
ー なるほど、これが「御社と友達になる」というキーワードにつながるわけですね。
カズキタ その結果、例えば「クラウドファンディングの目標金額が想定よりも上がってしまう」ということもあります。当初の計画では50万円あれば実現できたビジネスアイデアに対して、あれもやろうこれもやろうとアイデアを膨らませた結果、目標金額は120万円まで高まったことも。
ー やりたいことが倍以上に膨らんじゃったのですね。その分、プロジェクトの達成は難しくなったのでしょうか。
カズキタ クラウドファンディングなので、クライアントもぼくたちも同じリスクを背負っています。だから、プロジェクト期間中はクライアントと同じくらいぼくたちも盛り上げることをがんばりました。
ー 同じリスクを背負っている、というのはまた友達関係に近いものがありますね。
カズキタ そのプロジェクトも、最後にはしっかりと目標金額を達成、無事にサクセスしています。1人ではそういった高い目標を掲げることもなかったし、プロジェクト達成のために走り抜くこともできなかったのではないかと思います。
ー これも、「1人ではできないことも、多くの友達とならできる」という参考になりそうですね。
カズキタ はい、そのとおりですね。ところで、そろそろモテアソブで働く人達の裏側を知りたくないですか?
ー はい!ぜひ伺いたいと思っていました。モテアソブのメンバーの集合写真とかあれば見せてください。
カズキタ いや、ないですね。
ー へ?
カズキタ それどころか、お互いの顔すら知らないかも。
ー ど、どういうこと…?
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