【裏面史】警察が警護の落ち度を問われてから始まった、暗殺事件後の狂騒
加藤文宏
トランプ銃撃事件を巡ってアメリカの警護隊長官が辞任したと伝える報道に、私は以下のようにポストした。嫌味を交えて書いたが、正直ありのままの感想だ。
警護と警備の不備を問われた奈良県警が話を逸らし、スクープのネタに飢えていたマスメディアが犯人の家族ネタに飛びつき、写真週刊誌系WEB媒体が参院選の投票日早朝に安倍元首相と統一教会(世界平和統一家庭連合)を名指しした記事を公開した。これが安倍晋三元首相暗殺事件と統一教会追及の発端であり、できごとの半分だ。残り半分は日本共産党が「最終戦争」と認めている通り政治でできている。
ではなぜ、こうした指摘が今まで大々的に展開されなかったのか。
アビゲイル・シュライアーの『トランスジェンダーになりたい少女たち』(原題/Irreversible Damage: The Transgender Craze Seducing Our Daughters)が翻訳され出版されるとなったときは激しい妨害運動が行われたが、安倍晋三元首相暗殺と教団追及では報道・言論界に見ざる言わざる聞かざるの状態が発生した。
安倍晋三元首相暗殺事件と統一教会追及の2年間になにがあったのか、表では語られない裏の歴史を書き綴ることにする。
1
奈良県警の警護と警備がどのようなものだったか確認しておく。
県警は安倍元首相の応援演説が決まった後、警護(特定の人物の安全を守るために行う業務)と警備(施設や周辺道路などで利用者の安全を確保したり、トラブルが発生しないよう行う警戒)について計画を作成した。しかも県警は自民党スタッフを伴って、当日の段取りと候補者や元首相の立ち位置などを確認している。そのうえで県警本部長が警護と警備の計画を承認した。
トランプ銃撃では、約130メートル離れた建物の屋根に犯人がいた。安倍元首相暗殺事件では、演説台からさほど遠くない背後に犯人がいた。
演説が始まってしばらくすると、犯人が安倍元首相に向かって歩き出した。このとき警護にあたっていた私服警官は犯人の動きを察知できなかった。観衆は演説者正面の左右だけでなく、バスロータリー側にも居て見通しが悪かったとされているが、道路を横切り演説者の真後ろに回り込んだ犯人を止められなかったのは杜撰と言うほかない。1回目の発砲音に気付いただけでなく、犯人がパイプ状の凶器らしきものを持っているのを視認した私服警官もいて、ここで初めて複数の警官が犯人の元へ駆け寄ったが間に合わず2発目が発砲されて元首相に命中した。
奈良県警は事件直後に「警護・警備に関する問題があったことは否定できないと考えている」と対策が万全でなかったことを認めたが、報道陣に非公式ルートで犯人についての情報を小出しにリークしたり、事件との関係が確認されていないにも関わらず家族についての情報を会見で語ったのは前述の通りだ。
2022年8月25日に警察庁は「令和4年7月8日に奈良市内において実施された安倍晋三元内閣総理大臣に係る警護についての検証及び警護の見直しに関する報告書」を公表したが、事実が細かく記述されているものの分析が甘く感じられる。「危険が見落とされ」たと書かれているものの、見落とされた原因が究明されきれていない。
会って聞いて、調査して、何が起こっているか知る記事を心がけています。サポート以外にもフォローなどお気持ちのままによろしくお願いします。ご依頼ごとなど↓「クリエーターへのお問い合わせ」からどうぞ。