オウム真理教を信じた私は いま統一教会報道に疲れはてている
──「自民党は悪い。野党にはひいきしていない。こう言うとコロっと騙される人ばかりだったじゃないですか。いままでカルト宗教の話は、被害者がいるからカルトだって言い続けてきたんです。そう言っていた人が、当事者の話をしないで政治の話ばかりしている。アイドルの子を見殺しにしてる」
彼女は嘘と雑音で疲れはててしまったと言う。目次と「序」で内容を確認のうえ記事をご購入ください。
・2023.2.5 『マスメディアが標本化した宗教二世像に不信感を募らせる二世たち』を踏まえた新規インタビューを(1600文字相当)追加
・2022.9.5 新規インタビュー(2500文字相当)を追加
・20220.8.31 誤記訂正および鮫島加奈子の動向を追加
聞き取り・構成
加藤文
序
鮫島加奈子(仮名)と出会ったのは一連のオウム真理教事件が発生していた1990年代だった。
鮫島加奈子はアートが好きで美術館や画廊を巡り自らも作品を制作していたほか、私の撮影モデルをつとめ、わずかな期間だったが広告にも出演したタレントだった。彼女とは私生活でも接点があり、バイクに乗せて房総や湘南などへ遠出をすることもあった。だが、突然連絡がとれなくなった
アパートの郵便受けから名札がなくなり、愛用の自転車は駐輪場でサドルを下に逆さ倒しにされていた。芸能関係の仕事を取り次いでいたプロダクションも途方に暮れていた。だいぶ経ってから、アーティスト主催のパーティーで親友を名乗る人物から鮫島加奈子がオウム真理教に入信したことを知らされた。
上九一色村の教団施設が捜索され麻原彰晃が逮捕されてから五年後、鮫島加奈子に再会した。メイクや髪型や服の趣味を変えて別人としてやり直そうとしているようすは痛々しかった。その後、私が著作を発表するとメールに感想を書いて送ってくれていたが四冊目には音沙汰がなく、催促するような気がして私からも連絡をしないまま十数年が経過した。
安倍晋三氏暗殺事件で逮捕された山上徹也容疑者が統一教会信者の二世と報道されカルト宗教の被害者に注目が集まると、私は鮫島加奈子について考えないわけにはいかなかった。何を感じ、考えているのか聞きたい。彼女にとっては迷惑だろうと逡巡したが、8月下旬にメールを送信すると会うか否かは少しやりとりしたあとに決めると彼女から返信があった。
けたたましかった江川氏、有田氏、紀藤氏
三度にわたった聞き取りから要点を抜粋して紹介する。インタビューイは筆者にとって無関係な第三者ではないため、この点に留意して読んでもらいたい。
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──話せないことまで無理に聞こうとは思っていない。
「そうやって気にしていたら何も聞けなくなってしまうし、話をするほうも落ち着かないから自分から言ってしまうと、メールに昔の名前を書いてるけど、改名手続きをして別の名前になっているし苗字も養子にしてもらって変えてます。この名前は書いてもらいたくない。結婚して姓が変わればよかったのだけど、もうそれは無理でしょう。名前と、いまの顔がわからないなら、あとはだいたい大丈夫なので」
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