小4 コマネチに憧れて
小学4年生の夏
モントリオールオリンピックが開催された。記憶がある中での初めてのオリンピック。毎日夢中になって観ていた。
なかでも女子の体操はすごかった。
ルーマニアのナディア•コマネチとライバルのソ連のネリー・キム。
コマネチの演技はもう完ぺきで、当時審査の点数のボードは10点満点を想定していなかったので、まさかの満点で桁が足りずに1点表記となる異例の事態が起きたりと、世界中を騒がせた。
白い妖精と言われたコマネチ。
ルーマニアの白いユニフォームに身を包み、体の線が細くしなやかな、まだ14歳のコマネチはまさに妖精。
「打倒!ネリーキム!」と、熱い闘いにのめり込んで、テレビにかじりつき、毎日新聞記事をスクラップしたり、もう夢中だった。コマネチの演技はどの種目も素晴らしかった。私が特に好きだったのは平均台とゆか演技。
平均台の幅が10センチしかないとは信じられない安定した完ぺきな着地。
ゆか演技はとても可愛らしくチャーミング。流れていた音楽は今でも脳内再生出来るほどだ。先日YouTubeで動画再生したら、記憶と微妙に音程が違ってたけど。
そうしてオリンピックで白熱した夏休みも終わった。でも秋になっても私たちのコマネチ熱は冷めなかった。
みんなで体操を習いに行こう!
仲の良かった同級生ミホちゃんが中野にあるTというスポーツクラブに水泳で通っていたが、そこに体操教室があるという。
さっそく友達3人で習いに行く事に。
初めて入った体操教室には、体育の授業で使うのとは全く違う大きいカラーマットや、見たことない高さの鉄棒や平均台などがあった。とび箱もなんかすごく大きくみえた。
初心者の私たちは、みんなで並んで、でんぐり返しの練習からスタート。
すると、鉄棒でグルングルンと回転する女の子が見えた。すごい!!回転してる!大回転!
生で体操演技を見たのは初めてですごく圧倒された。その回転してた子は「デメタン」と呼ばれてた。小柄で目の大きなかわいい子。きっと目が大きいから「けろっこデメタン」から付けられた呼び名だと思う。(カエルのデメタンが主人公のアニメ)私たちより下の学年で、たしか3年生だったと思う。
デメタンは床でも倒立とか難しい演技をこなしてた。すごい!!
でんぐり返しする私たちとは、とにかくレベルが違いすぎて、デメタンの登場により私たちのコマネチへの憧れは早々に挫折する事となった。当然体操への熱も冷めていった。
そして4年後のモスクワオリンピック。
コマネチの再登場に胸を踊らせたけど、18歳となったコマネチはすっかり身体が丸い女性的な線となり、妖精の面影が消えていた。メダルを取るぐらい演技はやっぱりすごかったけど、モントリオールの頃とは別人みたいに思えて、なんだかすごくショックを受けたのだった。
とはいえ、コマネチは後世に名を残す偉業を成し遂げたのだけど、日本ではタケシのギャグでお馴染みになってしまい、「コマネチ」といえば、あのポーズみたいになってしまってとても悲しい。