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1日目。新北市新莊・TFAI(國家電影及視聽文化中心)で「一一重構:楊德昌」。(19回目の台湾旅2023/09)

TFAI(國家電影及視聽文化中心)は台北のおとなり新北市の新莊に2022年1月に出来たばかりの行政法人のフィルムアーカイブで、大小二つのスクリーンと、図書館に資料館、展示スペースと売店、カフェ、といった構成の施設です。

さらにここでは国家事業として数多くの台湾映画の収蔵と、過去作品の4K化などの修復作業が行われているのです。
おととし日本の国立映画アーカイブでの特集上映「よみがえる台湾語映画の世界」で、ここで修復した1960年代の台湾語映画を2本ほど観ましたが、本省人たち向けに台湾語で撮られた、例えば工員たちが週末の休暇に映画館で観るような、娯楽性の高い、いわゆるB級映画揃いの作品を美麗な状態で修復するところに、台湾の自国文化に対する意識の高さを感じました。

台湾語映画の資料も。

「一一重構:楊德昌」のもうひとつの会場として、ここでは楊德昌自身が描いたストーリーボード(絵コンテ)や、衣装合わせや現場のスチル写真、そして彼の作品のシナリオのコピーなどが展示されていました。

まだ幼さの残る張震。
張震も柯宇綸もまだあどけない。
「ヤンヤン夏の思い出」のファーストシーンを再現。

ちょうど今年の8月に柏のキネマ旬報シアターで「ヤンヤン 夏の思い出」を見た際に、気になっていたセリフがいくつかあったので、シナリオを手に取って読めたのは嬉しかったです。

「ヤンヤン 夏の思い出」の台本。
「牯嶺街少年殺人事件」の相関図。圧巻。

あとは「牯嶺街少年殺人事件」の主人公、小四と小明を中心とした100人に上る登場人物たちの相関図も、あの作品が試みた構想の凄さを感じられ、思わず声が出ました。

また、濱口竜介監督が当企画に合わせて来台した際のメッセージと、来場者からのメッセージが貼られた壁も感慨深かったです。
作品上映は週末中心に1日1作品といった感じで、残念ながらタイミングが合わず観られませんでしたが、展示だけでも十分に満足できるものでした。

上映も是非観たかった。
「憂鬱な楽園」公開時の侯孝賢のメッセージとサイン。
「この作品はわたしに言わせればひとつの大きな挑戦でした。なぜかといえばこれまでの自分の作品のリズムやパターンを突破する試みだったからで、それは容易ではありませんでした。」
85.4.25は民国85年=1996年4月25日です。

他、ここで修復した胡金銓(キン・フー)監督作をはじめとした過去の台湾映画の資料もあり、アクセスは必ずしも便利な場所ではありませんが、今度はぜひ所蔵作品の上映を観に来たいです。

ここの売店で楊德昌特集の映画雑誌を1冊買おうとしたところ、それを買うならこれも一緒に!と店員さんに半ば有無をいわせず別の雑誌も手渡され、2冊お買い上げとなりました。
確かにどちらも異なる切り口で面白いので、家で少しずつ読んでます。

楊德昌のオールタイムベスト10も上映されていた。
ラインナップは「アギーレ/神の怒り」「ブルー・ベルベット」「時計じかけのオレンジ」「8 1/2」「浮雲」「アニー・ホール」「アメリカの伯父さん」「ノスタルジア」「切腹」
「ラルジャン(ロベール・ブレッソン)」「ラルジャン(マルセル・レルビエ)」。
この施設には修復のラボもあるが、これは展示。
図書館もある。会員以外は当日上映のチケットを購入するか、250元を払えば閲覧ができる。
柱に「カップルズ」のオフショット。
こちらも。

國家電影及視聽文化中心

2024/10追記:
「カップルズ」、すでに4K修復版が完成し、2023/12にニューヨークでも上映されているので、いい加減日本でも上映の噂くらい聞こえてきてもいいと思うのだけど。非常に待ち遠しい。

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