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好き好き大好きスキクイーン

一年ほど前からはまっている食べ物がある。
『スキクイーン』という名前のヤギの乳のチーズ(ゴートチーズ)である。ヤギの乳と聞くと
「え? あんな臭いものが好きなんて」
と顔をしかめる人がいるが、スキクイーンはヤギ乳の概念を覆す食べ物だと思う。味はほんのり甘い塩キャラメルだし、臭いも全く感じない。ついでに見た目も、キャラメル色だ。食欲をそそる。

お年を召した方の中には、幼少期に「体にいいから」と無理強いされて、ヤギ乳を嫌いになったという方もいらっしゃるようだが、そんな方にもお勧めしたいのがスキクイーン。一度食べたら定期的にダースで購入したくなるうまさなのである。洋の東西を問わず「甘塩っぱい」というのは、最強なのだ。

ところで、私は、カルピス子ども劇場の『アルプスの少女ハイジ』を見て育った世代である。そんな私がとにかくあこがれたのが、アルプスに暮らすハイジのおじいさんが作るヤギの乳のチーズだ。ハイジが舌なめずりしながら見守る前で、おじいさんがかまどの火でひとかたまりのチーズをあぶる。とろーりと溶けたところを黒パンに載せると、ハイジは「いっただっきまーす!」と元気にそれにかぶりつき「おいっしー!」と最高の笑顔を見せるのだ。

「あのチーズはいったい何だったのだ?」と疑問に思う人も多いようで、こんな記事も出ている。

公式には、「ハイジに登場するチーズの種類は定められていない」とのことなのだが、一日三食365日食べ続けても飽きないなんて、スキクイーン以外にないんじゃないかと確信していた。

ところが、スキクイーンの生産国はノルウェーであり、スイスからはかなり距離があるのである。え。うそ。
しかし、しかし、ヨーロッパの文化伝播の様子から考えると、北欧で作られていたチーズがスイスで同様に作られていたとしても違和感はない。どっちも寒そうだし。環境としては似たようなものでは? これは決まりだな。ハイジのチーズはスキクイーン一択だ。
無理矢理そうオチをつけようと思ったら、スキクイーンの原材料は「ヤギ乳と牛乳の混合乳」とあるのを発見してしまった。ハイジの家の家畜小屋にはヤギは二頭いたが、牛はいない。これではスキクイーンは作れない。

いやいや、それでも、もしかしたら、おじいさんが独自にヤギ乳だけでスキクイーンぽいものを作っていたんじゃないか? あの人ならやりかねないぞ、と思ったが、アニメを振り返るとハイジが食べていたのは黄金色に溶けたチーズであり、スキクイーンのキャラメル色とは全く違う。

昨年だったか、牛乳を煮詰めて日本の古代食「蘇(そ)」を作った人が話題になっていたが、もしかして煮詰めるときの火力や、ヤギ乳と牛乳の配合を工夫すれば、黄金色のスキクイーンを作ることもできるのでは? おじいさんは、神業的な秘伝の何かでカラメル色になる前のスキクイーンを製造していたのではないか? よし、実証実験だ。私もやってみよう、黄金色のスキクイーンが作れることを証明してこの問題に決着をつけよう、と意気込んだが、ヤギの乳はその辺で売ってない。

困り果てた私の頭に、一つの記憶がよみがえった。ハイジの物語の中には、おじいさんのチーズ作りを手伝う話があったはずだ。まずはそこから確認すべきではないか? たしか、ハイジが大鍋いっぱいのヤギ乳を火にかけながら温めていたシーンがあったと思う。「蘇」方式でヤギ乳単体のチーズを作っていたのではないか?

アマプラに飛んで確認した。第7話だ。

‥‥違った。乳を煮詰めて塊にするのではなく、凝集したたんぱく質のかたまりを濾していた。レンネットという凝乳酵素を入れて、固化させて作るチーズだったのだろう。ハイジはこんなにおいしいスキクイーンを食べたことはなかったのである。不憫なり、ハイジ。

「だからなんだ?」と言われると困るのだけれど、私の大好きなスキクイーンを、ハイジも食べていたチースだと紹介できたら布教も楽だったのに違ったわ、という与太話である。ネタ出しに苦心している様子がわかっていただける投稿になったかと思う。かように毎日書くのは大変なのだ。

さ。書けた。ご褒美のスキクイーンをひとかけ頂こう。

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