街の本屋さんの極意
✴︎これは、3年前、敦賀に越してきたばかりの頃に、Facebookに書いたもの。
読み返して面白かったので、転載しておく。
敦賀の駅前から氣比神宮まで続くアーケード商店街。
半数くらいが閉店している、いわゆるシャッター商店街。
その中に一軒だけ頑張っている本屋さんがある。
文教堂とか有隣堂とかのチェーン店でもなんでもないのに、この不況の中、このシャッター商店街でどうやって食べてるのかと前から不思議だった。
ので、今日思い切って入ってみた。
辞書と学習参考書とコミックスと児童書、小説、ラノベの文庫本、実用書、あとは漫画雑誌とちょっとアダルトなグラビア雑誌という品揃え。
専門書やビジネス書、自己啓発本とかは一切置いてない。
店内を20分ほどウロウロしていると、おばあちゃんが入ってきた。
「あのな、孫にいいやつ、選んだってー。3歳やねんけど、本が好きでなー」
と店員さんに話しかけている。
あまりにざっくりしすぎて、逆に、超難しいオーダーだ。
「3歳の孫にいい本」ってどんなの?!
そもそもプレゼントなら自分で選びたくならないのかしら??
私だったら迷わず絵本を勧めるところだが、この本屋さんには絵本が置いてない。
店員さんは歳の頃40〜45くらい、メガネでキツめのパーマをかけているけれど性格は穏やかそうな方。
「女の子?男の子?」
「いつも何して遊んでるの?」
「こーいうの、やってるのみたことある?」
「アンパンマンとキティちゃんやったら、どっちが好きやろ?」
店員さんは丁寧にカウンセリングして一冊のパズルブックを選んだ。
間違い探しとか、隠れているキャラクターを探す系の知育本。
おばあちゃんは満足そうに帰っていった。
思わず店員さんに話しかけてしまった。
「あの」
「はい?」
「本がお好きで本屋さんになられたんですよねえ」
「ええ、まあ」
「絵本とか昔話とかすすめたくなりませんか?さっきみたいな時」
店員さんは、いきなり話しかけてきた怪しげな私にもニコニコと、
「とっかかりはなんでも良いんです。本が家の中にあるのが先ですから」
と答えてくれる。
衝撃!!
そっかー!
子どもに与えるなら良いものを!みたいに思っていたけど、本屋さんにこの思い込みは邪魔なだけなんだなー。
本の普及って、こーいうところからなんだわ、と改めて思ったのだった。