絵本
子どもらが成人して家を出てからもう4年経とうというのに、いまだに処分できないものがある。
それは、絵本だ。
本棚いっぱいにあったうち4分の3は、もらってくださる方に差し上げてきたのだが、子どもたちのお気に入りの絵本は、やはり手元に置きたくて、今も本棚二段分を占めている。
「いつか孫が生まれた時に」
とかなんとか理由を付けているけれど、たぶん、孫なんて生まれちゃったら狂喜乱舞して新しい絵本を贈ると思うので、ここにある絵本が活躍するときは二度と来ないだろう。
単なる自己満足で貴重な本棚を占拠するのは、よろしくないと思っているし、床に積み上げられた本たちを、早く棚にしまってあげたい。
けれど、名作絵本はどれも、くすりと笑わせてくれたり、名付けようのない寂しさを感じさせてくれたり、勇気をくれたりと、描かれる感情世界が豊穣で、絵本の中でしか味わえない気持ちを体験できる優れたコンテンツなのである。処分なんて考えられない。
私が今も時々読み返したり、人に勧めたりしている絵本の一冊に「ウエズレーの国」という作品がある。
とても強いメッセージ性のある絵本で、無理やりそれをまとめると「同調圧力に屈せず、自分が面白いと思うことを貫けば、人はあとからついてくる」といった、立志伝的人物が語りそうな人生訓のようでもある。かといって絵もストーリーも決して説教臭くはないし、発明の数々がおもしろいので楽しく読めるし、私は大好きだ。
しかし、今になってこの本をわが子らがどう受け取っていたのか、気になってきた。
もしも、学校で人間関係に悩んでいた時にこの本を読み聞かせられていたら、どう聞こえただろう?
勇気づけられる場合もあれば、「一人でも負けるな」と孤軍奮闘を後押しするように働いた場合もあっただろうし、圧倒的な魅力がないと友達はできない、他人を味方につけようと思ったら、センスや才能が大事なのだと曲解したかもしれない。
これくらい受け取る人の状況によって、評価が分かれる本もないなあと思い始めたのである。
というのは、この本についた、こんなレビューを見つけてしまったからだ。
す、すごい。
絵本に「学校や地方自治体、政府などと揉める」描写を求める人がいらっしゃるとは。これだけ荒唐無稽なお話に、妙なところでリアリティを求める人もいたものである。
評価が分かれる作品ほど、良い作品である、と言われることもある。しかし、「カルトっぽくて気持ちわるい」とまで書かれる絵本が、はたしてあらゆる子どもにとって、安全に面白く作品世界の中で遊んでもらえる内容なのか、と言われると、ちょっと自信が無くなってきた。
私は大好きなんですけど、みなさんはどう思われます?
**連続投稿119日目**