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ごめんなさいは、だれのため?

私は、神奈川県の相模原市というところに住んでいて、週に一回「谷戸保育のびる」という、未就園のちびさんたちを預かって野山で遊ぶ活動をしています。今日は、その「のびる」で起きたお話。

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のびるで子どもと過ごしていると、いろんなことに気づかされます。

先日、カタバミの土手で、こんなことがありました。

土手の上には、2人の子どもが座って、酸っぱいカタバミの茎をかじっていました。

ほしいものは自分でとりに行く子たちなので、美味しいものがある、と思えば自力で土手をよじ登るのも頑張っちゃうのです。

下から男の子が一人、この土手を登ろうとしていました。

この子は、好奇心旺盛で走り回るのも大好きな子なんだけど、今は手が汚れるのが嫌な時期みたいで、土手に手をつこうとしないわけです。

立ったまま登るにはちょっと傾斜があるので最後のひといきが登れない。
半べそで困ってる。

自力で何とかしてくれるとうれしいなあと思って見てたんだけど、これ以上は無理かなと思って、上にいる二人に

「助けてあげてくれない?」と声をかけてみました。

二人とも、我先に手を伸ばす。

助けてあげたいんですねえ。

引っ張り上げるのも楽しい遊びだし、ありがとうって言われるのもうれしいし。
なので、それそれ「じぶんが」助けたいんです。

そのうち、片方が、もう片方の子を押しました。
「自分がやるんだから、手を出すな」と主張したかったんでしょう。

押された方の子は、土手をころころ転がって、途中で止まり、びっくりして泣きだしました。
すぐに、あいちゃんが下からその子のフォローに行ってくれました。

私は上にいて、どうしたものかしら、と思っていたのです。

押しちゃった気持ちはわかる。
心の動きも手に取るように読める。
ここで怒っても意味は無い。

じゃあ、どうしたらいいのかなあ。

そこで、気持ちはわかってるんだよ、と伝えるために声をかけました。

「自分で○○君を助けたかったんだねえ。」
「うん」
「一人でやりたかったの?」
「うん」
「でも、押すのはよくないよねえ。」
「だって、ひとりでやりたかったもん」
「そうだねえ。でも、一人でやりたいから、手を出さないでって言えばよかったんだよ。
押したら、転がっちゃって痛かったよねえ。ほら、まだ泣いてるよ。」
「(だまる)・・・」

この間も、ほかの子たちが、いろいろ声をかけてくるので、会話は途切れがちです。
そして、当の男の子は、ぢーこの気が逸れたら、解放されるんじゃないかと思っているふしもある。
そりゃそうよね、遊びたいのに、嫌な時間が続くのは耐え難いよねえ。
でも、今日は、もうちょっと押してみよう。

「泣いてるよね、どうしようか」
「(目をそらす)・・・」
「助けてあげたかったのはすごくわかるんだけど、何もしてない◎◎を押したらダメだったよね」
「(泣いている子の方をちらっと見る)・・・」
「泣いてるねえ」
「(下を向く)・・・(その子の方を見ずに)・・・ごめんなさい」
「ごめんね、って言えたねえ。でも、聞こえてなかったみたいだよ。ちゃんと◎◎の方を向いて言ったら?」
「ごめんなさい!(おおきなこえで)」

たぶん、すごくすっきりしたと思うんです。

もともと、押しちゃった子のことも大好きで、よく一緒にいるからトラブルも増えるわけで。
嫌いだったら、関わりが無いから、ケンカなんておきないしね。

「大好きな◎◎ちゃんが泣いていて、泣かしてしまったのはぼくで。。。
もやもやする。すっきりしない。
なんだか、胸のあたりがちょっと痛い。」

この感情を味わわないうちに、ごめんなさいが言えても仕方ないと思うんですね。

形だけ「ごめんね」「いいよ」が言えたって、
本当にごめんって思ってるの?本当にいいよって思ってるの?ってことを、
自分でもちゃんと感じてないとしたら
感情のやり取りがない言葉に、なんか意味があるのかしらって思う。

自分を大事にするっていう事は、自分の感情を大事にするという事。

「大事な友達を泣かせてしまって、胸がちくんと痛い。」
これを感じて、初めて、自分の心を大事にするために(痛いままにしないために)
「ごめんなさい」
を言うのだと思います。

泣かせた友達のためではなく、自分のために。

「あなたを傷つけて、私の心は、これだけ痛んだんです。だからゆるしてもらえませんか?」
という気持ちが、ごめんなさいなんだと思います。

あいちゃんも、下で
「ごめんなさい、って言えたねえ」
と喜んでくれている。

まだ、自分の心の扱い方が上手でないこどもたちなので、何回も何回もぶつかって、痛い思いをしたりさせたりするんだと思うけど、

まずは、自分のためにごめんなさいを言えるようになるといいなあ。

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はんだあゆみ
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