食品は食べ物ではなく商品
です。
この記事は『あまくない砂糖の話』というドキュメンタリー映画の感想です。
味や値段をウリにしたものや、健康効果を謳ったものなど、世界は様々な食品に溢れていますが、そのどれもが、食べ物であるよりも前にまず商品なのだと改めて認識しました。たとえば、低カロリーを謳った食品の中であっても、脂肪分を減らした分の味や口当たりを良くするために、大量の砂糖が入っているものもあり、食品というのはまず味覚などに訴えて買わせることが第一なのだということは理解しておいた方がいいと思いました。この映画では砂糖の強い依存性や毒性を、出演者自らが砂糖を大量に摂取する生活を実体験することと、各地への取材を通じて訴える内容となっています。もちろん、砂糖が完全に悪者というわけではありませんし、摂り過ぎが悪影響を及ぼすのはどんなものにも言えることです。しかし、オーストラリアの一般的な食生活では、1日にティースプーン40杯分の砂糖を摂取している現状があり、これを摂り過ぎの域に達していると感じるのは、わたしだけではないでしょう。
アメリカ ケンタッキー州の虫歯
ケンタッキー州では虫歯が問題になっており、虫歯の患者の大半がマウンテンデューという砂糖とカフェインが大量に入った清涼飲料の中毒だという。そうした歯を“マウンテンデュー・マウス”と呼ぶ医師さえいるほどだ。しかも、患者の中には三歳の子供までいて、かれらはほ乳瓶からジュースを飲んでいるというのだ。
映画の中で、実際に歯の治療を受ける患者が登場するが、17歳にして総入れ歯にしなくてはならないほど歯の状態が悪くなってしまっていた。しかも、感染症の影響で麻酔が効かず、激痛のため治療を延期せざるを得なくなった。そんなかれは、マウンテンデューを今後も飲むと言う。
販売元のペプシはマウンテンデューについて“適量ならヘルシー”とコメントしているらしい。繰り返しになるが、マウンテンデューは大量の砂糖とカフェインの入った飲料である。
虫歯の対策として本当に必要なのは、大量の砂糖が入った飲料の依存性の高さや危険性についての教育なのでしょう。でも、企業がそれをすることはない。利益にならず、むしろ損になるから。
砂糖の摂取は自己責任?
企業は商品を購入させるため、そして再購入……リピートさせるために、人間の本能や人体の構造を的確に突いた食品を売り出します。至福点はその一環ですが、依存性の強い砂糖に関するものでもあり、いったんこの味が習慣化してしまうと、そこから抜け出すのは至難の業でしょう。しかも、引用の通り、砂糖の入った食品は多岐に渡り、通常の何気ない食生活のなかで、砂糖の“至福点”を避けることは不可能です。映画の中では、もし砂糖がなければスーパーマーケットの食品は8割がなくなってしまう、とも。また、ネズミを用いた動物実験では、コカインよりも砂糖を選ぶケースさえあったとのことです。それだけで人間にも同様に当てはまると言うことはできないにしても、砂糖が依存性の強い物質であることはたしかでしょう。
もちろん、この映画も商品であり、すべてを鵜呑みにすることは避けた方がいいかもしれません。様々な謳い文句が掲げられた食品を、鵜呑みにしない方がいいのと同様に。