当て屋の椿16/川下寛次

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殺し殺される「次郎」
次郎を追いかけ賑わう街の住人に、椿たちも巻き込まれてゆく。
煙管を直す羅宇屋の男が登場し、体を結びつけたままの女郎の噂を口にする。
彼女の話に突き動かされるのは侘助。
彼にもまた因果な過去があった。



1年以上ぶりの椿との再会が嬉しくてたまらない。
理解不能な動機(理屈)で動く謎の人物たちと、相変わらずエロとグロにまみれた江戸のあり方。
よく調べているなあと、尊敬してやまない。
仏教やら拷問のやり方やら、ここまで綿密に調べたり細かく描いたりしていたら、少しは疲れて休みたくなるのもうなずける。

体を結びつけたままの女郎がキーパーソンのよう。
かねてより只者ではないと察していた侘助がついに動き出す。
侘助と辞書で引くと、おもしろい事実に行きあたる。
【侘助】椿の一品種。
これを知ったときの私の感動よ。
絶対に、侘助、ただのコメディ担当じゃないじゃん。
これ絶対に何かあるやつじゃん。

ついに来ましたね。
みなさんついに来ましたよ。
侘助の過去回が回収されますよ。

侘助も(当て屋の椿における)江戸の恒例、捨て子だった。
菖蒲を親から押しつけられたときが、母親との最後。
妹を抱えながら一人で生きなくてはならない侘助は、得意の木彫りを生業に生きていく決意を固める。
その矢先、彫師として同業者から罵倒される彫師の棉(わた)を見かけ、弟子にしてほしいと頼む。

彫る物が異なっていたが……。

棉が彫るものは、現代でいうところのタトゥー。
だが彼は罪人に「入墨」を行ったことで同業者から叱られてしまったのだ。

「入墨」は罪人が体に罪を刻まれる、不本意に「入れられる」ために「入墨」であり、
「彫り物」は装い、つまりファッションとして自ら望んで「彫る」ために「彫り物」である。

「彫師」は罪人との関わりを持ちたがらないために「入墨」は拒む傾向があったようだ。

罪人とはいえ、人の無事を願う心優しい棉はそんな仕事でさえ受け入れていた。
魔除けを願う賽子も隠れて罪人の体に彫りながら。

後半にはほぼ「次郎殺し」の記憶が薄れつつある中、ついに出てしまう。

侘助が慕っていた棉が、仕事で赴いた先。
罪人として流刑に処され、あの孤島で椿たちと出会ったあいつが。
そして町奉行所で拷問を行う、当て屋の椿きっての異常者伊豆の代官。

ここからさらに1年待たされるのかと思うと長いが、前巻から待ったかいがある濃ゆい1冊だった。 まるまる長編の前編部分だった。

さて、1巻目から読み直すか。

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篝 麦秋
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