諸岡若葉
日々の生活の中で感じたことや考えたこと
2024年5月、6年間暮らした鳥取を離れて、初の熊本へ。引っ越し前後の日記。
読んだ本の感想や紹介など
旅行の記録、見たもの考えたこと
観たドラマや映画についての感想など
子どもの頃、たまに休日のゴルフの予定が入っていない父が「今日は出かけるぞ」と朝から妙に張り切る日があった。 我が家で父が出かけると言ったら、絶対だ。 いつまでも起きない妹は無理矢理に起こされて、気分の乗らない弟もさっさと着替えさせられて、母は調子が狂う上に家族全員分のおでかけの準備に汗かいて、その上どこに行くのかもわからない。みんな揃って楽しく出発、という日ははたしてあっただろうか。いや、そういう日もたまにはあっただろうが、なかなかみんなの気持ちが揃うことなんてない。それが家
先日、SNSでとある募集が目に止まった。「文章で生きるゼミ」という企画名で、約4ヶ月間、週に1回のペースで座学と実践を交えながら”文章で生きていくこと”を目的としたプログラム。主催している「日本仕事百貨」は、私自身も学生の頃や転職を考えていた時に何度も開いたメディアであり、実は学生の頃にインターンの面接を受けて、当時の自分には鋭く図星すぎる優しいアドバイスを受けて即落ちした苦い経験まであるほどには、ファンだ。 日本仕事百貨の記事を書いてる編集者・ライターの中には、ほんの二、
引っ越しというイベントに紐づいて、必ず直面する課題がある。”美容室探し”だ。私は、気に入った美容室と出逢ったら、脇目も振らず一途にそこだけに通い詰めたい。どこにお住まいで、どんな仕事で、といった初めましてのテンプレ会話は一度で終わらせたいし、何しろ2ヶ月に1回通う美容室に求めるのは安心と信頼と”無”だ。私は、美容室では無になりたい。できるだけ仕事や日常の雑多なことは忘れて、ぽやーんとした頭を毛染めの薬品で冷やされて「少し時間を置きますね」と共に一人になって、出されたお飲み物啜
両親と、高校生の私と、小学生の妹弟の5人家族。週末に家族みんなで郊外のイオンに出かけ、レストラン街の回転寿司で昼食を済ませ、ああ楽しかったの帰路の車中で、異変は起きた。 最初は、喉の奥に感じる少しの痒みと気持ち悪さ。違和感を感じつつ、食べ盛りのJKゆえ食べ過ぎの自覚は十分あったので、車酔いでもしたかと目を瞑る。母と妹弟のおしゃべりを遠くに聞きながら、家に着く頃には、気管がきゅっと狭まったような息苦しさがあり、帰宅とともにベッドに倒れ込んだ。大汗をかきながら「これ以上は苦しく
住み始めてもうすぐ4ヶ月になる熊本の家には、畳の部屋がある。ダイニングキッチンと別に、洋室と和室が1部屋ずつ。洋室の方を寝室にしているので、和室は、押し入れを収納スペースとして使っているだけで、正直持て余していた。 それが数日前に、私の中で小さな和室革命が起きたのだ。 なんだかここ1週間ほど、特に大きな理由はないのだけれど、気づけばため息が漏れるような日が続いている。人と会えば、はっきりとしない話や本心ではない愚痴がこぼれてしまって「なんでこんな話しちゃったんだろう…しば
私にとって、この引っ越しにおける大きな変化の一つは、個人事業主になったことだ。社会人になってからこれまでの約8年間、私は一度の転職を挟みながら、会社員として働いてきた。 ”会社員”と言っても、新卒で就職した会社は創業と同時の入社で、最初のメンバーは私を入れて5名くらいだった。次に転職した会社も、正式な社員は私だけ。どちらも、いわゆる”地方創生”のジャンルに当たるベンチャー企業で、一般的な会社と比べると自由に動かせてもらえる環境にあった。とはいえ、会社員は会社員だ。毎月、決ま
九州北部は、梅雨入りだそうです。 新しく暮らしている熊本の家には出窓があって、外の様子がよく見えるので、我が猫の格好の居場所になっています。私が仕事に出ている留守中も、おそらく1日のほとんどをそこで過ごしているようで、帰宅すると大抵、出窓越しに目が合います。外にいる自分と家の中にいる我が猫が、ガラス一枚を隔てて見つめ合うのは、なんだか不思議な感じです。自分の猫なのに「あら、あんなところにかわいい子!」と心の中で呟きます、毎度。 あんまりにも出窓で過ごす時間が長いので、猫が丸
前職の最終出勤日の帰り道、愛車のジムニーが故障した話の続きです。 急にエンジンがかからなくなったジムニーがレッカーに運ばれて数日後、車屋さんからもらった連絡では、劣化した部品の交換だけなので部品さえ届けばすぐに取り替えてまた走れる、費用も数万円で収まるとのこと。 1年前にはエンジン関係の修理で十数万円かかったこともあったし、もっと悪い知らせも覚悟していたので、本来ならば喜ぶべき知らせ。でも、今回の急な故障で、私の中にはある予感のようなものが浮かんでいました。 この車は、
”鳥取、最後の帰り道”(事件)の前置きとして、まずは我が相棒・ジムニー のことをお話しします。これを書くにはまだ少し、いやだいぶ胸がチクリと痛むのだけど。 まずは私の、マイカー遍歴について。大抵のことは運が良い方で、いい出会いに恵まれているのが自慢の我が人生。しかし車に関しては、どうもそうでは無いなあ、というのがこれまで。 初めて自分の車を持ったのは、大学を卒業し、岡山県西粟倉村の会社に就職した頃。通勤はもちろん、車なしでは生活できない田舎だったので、引っ越してすぐに紹介
遠くに見える山、近くに迫る木々、田植えを前にたっぷりと水を湛えた田んぼ、畦道を歩く人、並走する車、通り過ぎた無人の駅、耳がつんとなるトンネルの暗闇、を過ぎたら、目に勢いよく差し込む光。どこも似ているようで同じではない、そんな初夏の田舎の風景を車窓にいくつも通り過ぎながら、私の胸は高鳴っていた。やっと会えるという楽しみな気持ちに、もし気に入らなかったらどうしようという不安が覆いかぶさるのを、「きっと大丈夫だからさ」と、私が私の手で私の内側をさする。 新八代駅から、玉名駅を目指す
来月に控えた引越しのため、今の住居を退去するための手続きと、転居先の契約に関する手続きがようやく落ち着いた。 相棒である猫のために「ペット可物件」という条件は外せず、希望のエリアでの物件探しにはなかなか苦戦し、やっと決まった新居にはまだ行ったことがない。遠方への引っ越しなので、内覧することが叶わず、引越しの日に初めて新居を訪ねる、というなんとも緊張感のある引っ越しになった。 一度決まりかけた物件が、物件側の都合(修繕工事が長期になるため入居者募集を取りやめるという理由)に
約6年勤めた隼Lab.を退職すること、そして鳥取を離れることをお伝えして、1ヶ月が経ちました。その間、身近な人たちに伝えたり、退職や引き継ぎに向けた準備を進めたり、引越し荷物をまとめ始めたりしながら、自分自身の気持ちも次のスタートに向けて整える日々です。 ありがたいことに、次はどんなことをするの?と興味を持って聞いてくださったり、メッセージを送ってくださる方もいます。現在鳥取で運営しているお店「ポトラ」の閉店についてご報告できたら改めてお伝えしたいと思っていたので、note
大切な決断をしたので、ご報告です。6年間勤めた隼Lab.〈(株)シーセブンハヤブサ〉を、5月末で退職します。そして、6年間過ごした鳥取を離れ、5月中旬には次の場所に移ることになります。きっとそれまでにお会いできない方も多いでしょうし、自分自身、この決断を、今思うこと記録しておきたいので、少し長くなりますが書き留めてみます。 隼Lab.で過ごした6年間まずは、6年間勤めた「隼Lab.」と、そこで出会った方々へ、溢れんばかりの感謝の気持ちをお伝えしたいです。私は昨年30歳になり
1月の末から読み始めた「炉辺の風おと」が文庫本だけどわりと分厚めで、本の中に流れる空気もゆったりしたものであったので、少し時間をかけて読んだ。途中、「熊本かわりばんこ」(田尻久子/吉本由美)を読み始めたのもあって、冊数としてはスローペースな2月であった。「熊本かわりばんこ」はまだ読み途中なので、2月の読書録には入れていない。 今、春からの日々に向けて家探しをしていたりするので、”住まい”や住む場所と向き合う本が気になる。「炉辺の風おと」は、作家の梨木香歩さんが、八ヶ岳での山
二日目は、10:30頃にふたりが宿泊しているYpubへ迎えに行く。鳥取を訪れるのが初めてというサオリは特に「砂丘には行きたい」と事前に聞いていたので、砂丘へ向かう。三連休の中日とあり、たくさんの観光客で駐車場も混んでいた。地元の人っぽく、砂丘入口から少し離れた無料駐車場(道に面しておらずこちらはすかすか)に停める。 底が薄く抵抗力のなさそうな靴を履いていたサオリは、靴の中が砂丘のようになっていた。普段であれば不快でしかないそれさえも、面白がって写真を撮り、LINEで写真を家
後輩二人が、福岡から鳥取へ遊びに来てくれた。12歳から18歳までの6年間通った学校は、中学校と高校が一緒になった”中高一貫校”で、全寮制だった。一つ下の後輩である二人とは、5年間、同じ女子寮で暮らしたことになる。1学年40人、女子は18人(今は男女半々になったようだが、私の代はまだ男子の方が受験倍率が低いのに入学枠は4名分多いという状況で、それは私が初めて感じた”女子”と”男子”の不平等であった。むむむ。)という小さな規模で全寮制となれば、1年生から6年生まで全員が全員の顔も