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小説家の頭の中が気になる。ーノーベル賞作家の著作「シンプルな情熱」を読んでー
[以下、とりあえず思ったことを殴り書き]
こんばんは。
最近ある作品を読んで、小説ってどこまでが実体験に基づいていて、どこからが想像、もしくは創造なのだろうと気になった。
もちろん小説家によりけりだと思うから一概には言えないだろう。
ある作品とは昨年ノーベル賞を受賞したフランス人作家アニー・エルノーの「シンプルな情熱」だ。読み終わって、「やっぱり自分の体験に基づいて書かれているのよね!だからこそ刺さるのよね!」と思った。著者自身も作品の中で「自分の体験を共有したかった」みたいなことを書いていて、もはや自伝に限りなく近い小説ではあった。実体験に基づいているからこそ、虚構と現実の境目が限りなくあいまいだからこそ、そこにはリアルな面白さがあるのではないか。加えて、自分の体験と重ね合わせることができるからこそ、胸が苦しくなったり心があたたまったりするのだと思った。
私にとって小説を読むのが楽しいと感じるのは、大きく分けて2つの要素がある。1つは、移動しなくとも、お金をかけなくても、物語という世界の中で旅をすることができるということ。私は新しさという刺激に溢れる旅が大好きだ。そしてもう1つは、ーこちらの方が私にとっては大きい要素かもしれないー、自分の体験と重ね合わせて、共感したり、時に泣いたり、時に「私もこんなバカなことしたな」ってくすっと笑ったり。自分の中の過去の様々な思い出やそれらに紐づく感情の引き出しを引っ張り出すこと、その引っ張り出す過程の中で心が揺れ動くこと。それらがとても楽しいのだと思う。
だから、その面で、小説家にはありがとうを伝えたい。心を動かしてくれてありがとう、と。小説を読むというのが、単なる娯楽に終わらず、自分の感情に向き合う、自己との対話の時間になっている。自分を知るという死ぬまでの宿題みたいなものを解く上でのいい教材を与えてくれてありがとう、と。少々大袈裟ではあるが、そんなことを思うのだ。
そしてだからこそ、聞いてみたい。どんな風に小説を作っているのですか、と。どれくらい自らの体験に基づいているのですか、と。基づいているのなら、それはどんな体験ですか、どんな思い出、どんなエピソードですか、と。小説家たちとそんな話がしてみたい。小説を作る過程を知りたいとともに、小説家のリアルな人生の物語を知れたら、それはそれは面白いだろうなと思う。だって、物語を作る人たちのリアルな「物語」が面白くないわけないじゃないか。
2023/04/05 モロヘイヤ