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左足のふくらはぎに強い衝撃が走る
2025年1月11日、新年明けて初めてのサッカーをする。いわゆる蹴り初め。
その週の頭からお正月の不摂生な生活のせいか、風邪をひいていた。サッカーをすると風邪が治る体質なのもあって、サッカーをすることにした。
僕がサッカーをするときは、サッカーの助っ人募集をしているサイトを利用する。風邪をひいた週の水曜日あたりにそのサイトを開き、ちょうど週末に参加できる日時があったので友人Sを誘って応募した。
場所は最寄り駅から徒歩30分ほどの新砂運動場。朝8時開始。僕と友人Sは休みの日をサッカーで始められることに幸せを感じるタイプ。2時間サッカーをすることができる上に、まだ休みの日が10時間以上も存在する。その状況がとても幸福に感じる。朝10時から始まることが多いのだが、珍しくその日は朝8時からサッカーができる。ワクワクしていた。
サッカーをする日はいつもYouTubeでプレーのイメージを膨らませる。その時々の気分に合わせて誰のプレーを観るか、が変わるがたいていは自分と同じポジションの大島僚太だ。動画を見ながら身体を動画に合わせて動かし、プレーのイメージをより強固なものにする。特に大会に出るわけでもなく、ただただ助っ人募集している試合に出るだけでその後の何かにつながるわけでもないが、それでも自分がいいプレーをしたいその一心で、脳内に大島僚太をインプットする。
変わらず当日も動画を観てから出かける。友人Sと新砂運動場の最寄り駅で待ち合わせをし、歩いて向かう。
到着すると、案の定知らない人しかいない。ただしそれはいつも通りのこと。自分たちが申し込んだ募集の管理者っぽい人を探して、その人に声をかける。この3年くらいで身につけたあまり役に立たない能力の一つ、管理者っぽい人を見つける力をこの日も発揮し、無事に参加費を払って着替え始める。
この日の会場はおそらく105m×68mのコートだった。久しぶりにこのサイズでサッカーをするので体力面で不安を感じたが、でもやるしかないので準備運動を始める。
ジョギング、ジョギングしながら友人Sとパス交換、対面パス、逆足PK、上に高く上げながらのリフティング。これらがいつも行う準備運動で、この日も逆足PK以外は全てこなした。なんなら自分が参加したチームの方が優しくて一緒にトリカゴしよう、と誘ってくれた。万全の状態だ。もうすぐ試合が始まる。
その日は社会人チーム同士の練習試合で、20分ハーフをできる限り行うようだった。
割と感覚は良かった。1対1ではそれほど負けず、インターセプトもできる、1本目が終わり「上手ですね」と声をかけられるくらいだった。助っ人、というていで参加するので1本目はめちゃくちゃ頑張る。その心がけか自分はいつも1本目は調子が良い。
ただ、僕はスタミナがない。驚くほどない。50分を過ぎたあたりからだんだんと足が止まる。2時間サッカーするとだいたい足を攣る。
この日はもっと酷かった。サッカーは1ヶ月ぶりだし、お正月にたくさん餅を食べ、その後風邪をひいた。105m×68mのコートでサッカーをする身体ではなかった。30分くらいからちょっとずつ足が動かなくなった。
まあサッカーは体力がないのを誤魔化せるので、いい感じにサボって時折ちゃんと働いた。僕が2時間サッカーできるのも、サボっているおかげ。広いから疲れそう、という意見をよく聞くが、広い分自分が関わらない時間もそれなりにあるので動かなくていい場面はよく訪れる。
体力を誤魔化しながら2本目を終えた。
3本目はさらにひどくなった。多分1本目褒めてくれた人も内心がっかりしていただろう、申し訳ない。簡単なパスをトラップミスしてしまうほどだ。
疲れると予測が鈍り、認知と判断が遅れる。
ただそれでも身体は動く。
自陣でボールがこぼれてセカンドボールを拾ってパスを出したそのあと、左足のふくらはぎに衝撃が走った。
パスを出して伸ばした足に、死角から相手が突っ込んできたのだった。そして僕はうずくまった。
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