「よんもじ」vol.5 SPRING 感想
春惜しむまもなく電車まいります
相田えぬ
時間の移り変わりを感じさせる「春惜しむ」の季語に、肉体を移動させる「電車」を出してくるところがおもしろい作品。
「電車まいります」という駅のアナウンスの様な言葉も、まだ春にいたいのにせわしなくどこに連れて行かれるような感覚を思わせます。
上と下とに二つに分かれる、流れるような言葉の構成も句に合っています。
花明かり小さな魔法瓶の湯気
西川火尖
花明かりの薄寒さ、暗さの中に見つける小さな温かさにとても惹かれます。
「魔法」という字が入っていることで、湯気がどこか幻想的に感じます。
私は吟行の場所から色々と発想を飛ばして作ったのですが、火尖さんの句は吟行場所の中にあるものを丁寧に詠んでいて、夜桜の元を歩いているような感覚を楽しめます。
エッセイはファン待望の綿菓子日記!
ミッフィーの口元ゆるむ桜餅
藤田亜未
いつも同じ表情で、絵本を読む側に感情を想像させるミッフィー。そのミッフィーの口元が桜餅を前にゆるんだように感じた。
笑うのでなく「口元ゆるむ」という表情のさじ加減が上手いです。
春の訪れを感じさせる桜餅を前にした時の幸せをほのぼのと感じます。
エッセイは電車の中の描写に情景が浮かぶようです。
見送りの朧月まで飛ぶ機体
諸星千綾
自句自解です。羽田空港第3ターミナルの展望デッキで、見送り気分を味わいながらつくりました。
飛ぶ飛行機?だと飛の字が重なるし、字余るなぁ、と。こんな時はネットで類語・関連語を引きます。「機体」なら3文字だし、人工物感が強まって朧月という自然物と対比になるかな、と思い「機体」に決まりました。
月に帰る時、下界への情愛が消えて無機質な表情となるかぐや姫を見送るような気持ち・・・までは詠みきれてないかな(;^_^A
関西と関東に分かれて住んでいて、多忙なメンバー達ですが、それぞれに出かけるというスタイルで春の吟行が実現できました🌸*.゚
それぞれの春を楽しんでみてください♪