経営者に「刺さる」監査報告書の作り方
以前、「経営者に『刺さる』監査指摘の出し方」というnoteを出し、幸いにも多くの方にご購入いただきました。あちらでは、実際の作業としてどういったアプローチを取ればよい監査指摘が出せるか、という内容を説明しました。しかし、監査指摘は通常バラバラに被監査部署に渡すのではなく、まとまったレポートの形式で作成するものです。このレポートの作り方も色々と工夫がありますし、ここで見せ方を誤れば、せっかくの良い監査指摘も台無しになりかねません。監査法人の行う会計監査の監査報告書は、文面がほぼ定型的に定められている部分が多いですが、内部監査の監査報告書の書き方に決まりはありません。その分工夫が求められますが、うまい作り方をすればより内部監査の結果を効果的に伝えることができます。本noteではそのための工夫について説明していきます。なお、購入いただいた方は、監査報告書のひな型の例を付録としてWord形式でダウンロード可能です。
内部監査の監査報告書の記載内容としては、一般的に「監査の概要」「監査の結果(総合意見)」「個別指摘事項」が含まれます。さらに、「指摘事項サマリー」と「配布先リスト(監査報告書を誰に配布したかの一覧)」も含めたほうが良いと思います。
「監査の概要」
ここは形式的な記載事項が多いでしょう。あまりこだわるところではありませんが、「宛先、監査の対象、範囲、実施期間、監査実施者」といったところが含まれていれば良いと思います。
「監査の結果(総合意見)」
会計監査の監査意見は「無限定適正意見」が圧倒的に多く、「限定付適正意見」がごく一部、「不適正意見」及び「意見不表明」は極めて稀です。そもそも会計監査では指摘事項を詳細に書く「長文式報告書」の形式を取っていないので、監査報告書に対する利用者の期待が内部監査の場合と大きく異なっています。内部監査の場合は、本当に指摘事項が全くないという場合を除いては「限定付適正意見」に近い体裁をスタンダードとするのが合理的です。文面の例を挙げると
「内部監査部門はxx部門に対して上記の監査項目に記載された事項の監査を実施した。結果、同部門の業務は全体としては法令及び社内規定等に従って適正に行われていたが、以下の指摘事項が発見された。」
というような形です。なお、重篤な指摘事項が多数存在したような場合には、会計監査でいう「不適正意見」に近い文面が想定されます。
「内部監査部門はxx部門に対して上記の監査項目に記載された事項の監査を実施した。結果、xxとxxについて重要な指摘事項が存在し、同部門の業務は全体として法令及び社内規定等に従って適正に行われているとは言えなかった。指摘事項の詳細は以下のとおりである。」といった形です。
基本的に監査の結果発見された指摘事項の重大さに応じて、この二パターンの意見を使い分ければ十分と私は考えています。会社によっては一つ一つの指摘事項の重要度を点数化して、総合的な点数を出し、それに応じて総合評価を点数やA~Eの五段階などの細かい形で出す実務もありますが、もう少し簡素化した方が読み手にとっても分かりやすく実用的でしょう。どの程度、重要な指摘事項があった場合に「不適正意見」とすべきかは、後述する指摘事項一つ一つの重要度の評価と同様、内部監査部門及び部門長の判断に依拠するべきと考えていますが、部門として経験を蓄積し、人事異動等で判断に大きなブレが生じないようにする努力が必要です。
この「監査の結果」のところに、指摘事項のサマリーも記載すると読み手には親切です。サマリーには監査項目・重要度・内容が分かるタイトルを含めておき、経営陣がここを見ただけでも、特に問題が多い事象はどこかがすぐにわかるようにするべきです。下記がその一例です。「重要度」については後述します。
指摘事項の重要度の基準
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