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今世界金融市場で何が起きているか?2022年前半の振り返り(2022/07/20)

《今世界金融市場で何が起きているか?》

2022年1月。米国、EU中心とした好景気とコロナ禍の金融緩和を背景に①世界的インフレと、②賃金上昇とサプライチェーンの混乱が連鎖的に起きている。そして世界中のインフレ率を示唆する経済指標の一つ、消費者物価指数(CPI)に注目が集まり、世の中は金融引き締めに向かっている。

《金融緩和を背景にお金の価値の希薄化が進んだ》

日本にいると日常生活においてほとんど実感はないのだけど、世界的にはお金が溢れてしまっている。「お金の価値が下がっている」その事実に気づき始めている富裕層や資産家は、お金を別の価値に変換する方法を模索している。例えば「総額◯億円のお金配りキャンペーン」を行ってSNSのフォロワー数に変換したり、代替価値へのシフトが模索されたのは記憶に新しいと思つ。図らずもお金を何か別の価値に置き換える取り組みが活発に行われたのは金融緩和の影響で世の中のお金の総量がどんどん増えていってしまっている。

話を戻すと、①世界的インフレを背景にコロナ禍の金融緩和からアフターコロナの金融引き締めに向けて、世界の中央銀行とも呼ばれるFRBはテーパリング(バランスシートの縮小)に着手する議論をしている。

②賃金上昇を背景に人件費は膨らみ、また人件費の高騰はサプライチェーンの混乱を引き起こし、企業の利益は圧迫されている。流通や製造生産にも滞りが発生している。

①と②が同時に起きているため、政策金利が上がると数年先の企業業績まで折り込んでいる高PER銘柄からどんどん投資資金が抜けていっている。マルチプルコントラクションだ。マルチプルコントラクションとは、市場参加者の評価が下がり、1株当たり利益(EPS)は悪くないのに株価が上がらない状態のことを指す。

2021年12月31日を境に米国で時価総額の大きい主要500社で構成する時価総額加重平均型の株価指数であるS&P500は下落の一途を辿っている。

ウォール街の人々は難しい言葉が大好きだ。きっと厨二病なんだろう。とにかく遠い将来に高成長しているに違いない、と過大評価(プレミアムが乗った)された企業は厳しい局面に立たされている。

マルチプルエキスパンションからマルチプルコントラクションへ。金融相場から業績相場への過渡期と考えている証券関係者は多いはず。

《金融引き締めの背景と現状》

なぜ政策金利の利上げが話し合われているのか?それは金融緩和を背景に、米国中心に好景気が進みすぎたので景気の過熱感を冷やす必要がある。つまり景気が良すぎるため、熱を冷ますための施策として、米政策金利を上げることがFOMC(連邦公開市場委員会)にて検討されている。投資家はFOMCの議論の中身に一喜一憂するのは、タイミングや内容次第では株価が大暴落する引き金を引く恐れがあるから。alphabet、Apple、Amazon、Microsoft、といったNASDAQを中心に、決算ミスしたら株価が大きく下落、クリアしていてもFF金利次第では下落、上値の重い展開が続いている。、比較的若い企業は既に半値近くまで時価総額を落とした企業もでてきている。

《中央銀行の政策金利が上がるとなにが起こる?》

政策金利が上がる=金融を引き締める。つまりコロナ禍の金融緩和によって市中にばら撒かれた大量のお金を吸い上げる必要がある。具体的には、政策金利が上がると企業はお金を借りにくくなる。個人はお金を預けやすくなる。企業の過剰な成長速度を平常運転に戻す狙いがある(2022年は5〜7回利上げを行うと議論されているが過去ほぼ前例がない早いベースで利上げが実施されることになる。)

《Tips そもそも国債ってなに?》

そもそも国債とは「国債=国の借金」とも呼ばれる。「国債を買う」とは、国にお金を貸すことと同じで、いずれは利子がついて戻ってくる。リスクが非常に少ない金融商品の一つ。米国債10年は沢山買われると利回りは下がる、売られると利回りは上がる性質がある。金融商品である性質から利回りが上がると利益が大きくなるため国債は買われやすくなるということになる(3日連続で米国債10年利回りが上がると米国株安が進みやすい傾向にある)

《Tips 米国債10年利回りはなぜ重要か》

結論としては、米国債10年利回りの上下は米国株の少し先の未来を占う先行指数となりうるため。金融市場の多くの参加者は意識をしている。国債を組み入れている投資家は、一般の投資家よりも1枚も2枚も上手というのは有名な話。実際に国債を買ったいるのは誰か?を考えると良いかもしれない。

《Tips 地政学リスクに投資家が右往左往するのは何故か》

またロシアとウクライナの地政学リスクが後押しして原油関連企業の株高につながっている。期待が先行する形でややプレミアムが乗っているという見方ができる。ロシアは天然ガス生産量世界第2位、原油生産量3位。不買運動に発展すればロシアからノルドストリームから大規模なエネルギー供給を受けるドイツは、ロシア以外の国から天然ガスを買わないといけなくなるが、天然ガスはそう簡単に輸送できるものではない。ということになれば石油株の需要が高まると予想される。需給環境の変化に着目することがエネルギーセクターに投資する上では非常に重要となる。

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