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憧れの場所。谷中「HAGISO」での間借り営業を終えて
5月に西尾久での間借り本屋の営業を終えて、早1ヶ月。
本当にちょうど1ヶ月後に、さまざまなご縁がつながり、なんと谷中にあるHAGISOで間借り営業をさせていただきました。
この記事を書いている今は、2週間の間借り営業を終えてホッと一息ついているところ。2週間と短い期間ではありましたが、今回もいろいろと学びや気づきも多く、その過程や気づきをちゃんと残しておこうと思います。
簡単なメモでの記録になりますが、どうぞお付き合いくださいませ。
谷中HAGISOで間借り営業を始められた理由
前回の西尾久での営業もそうでしたが、今回も偶然の出会いの連鎖で、間借り本屋の営業のお話をいただきました。
というのもまだ西尾久で営業をしていたころのこと。こどもの日に、軒先で駄菓子を販売する企画を立てていました。でも実際に販売するとなると、どこから仕入れをすればいいのか、値札や陳列など見せ方はどうしたら最適か、今どきの売れ筋商品は何なのか……。基本的なことが知りたいけれど、どうしたらよいのか分からなくて、壁にぶつかっていた時期がありました。
そんなある日、ちょうどInstagramを眺めていたら、友人が「谷中に駄菓子屋さんがなくなってしまった!有志で集まった大人こどもで、駄菓子屋を残す活動を始めてみます」と投稿しているではありませんか。
その投稿を見た瞬間に「いろいろ教えてほしいことがある!」とメッセージを送っていた私。すると「今日ちょうどイベントをやっているから、よかったらおいでよ」と返事が。月に1度しか開催されていないイベントが、メッセージを送ったその日にあるなんて。つくづく運があるなあと、仕事の合間をぬって自転車を走らせました。
そのときのイベントでばったりお会いしたのが、HAGISOグループ全体のグラフィックデザインの監修や、ギャラリーのディレクターなどを務める、ピンピンさんでした。私が連絡した友人と一緒に、駄菓子イベントを企画されている方だったのです。
見学させていただいた駄菓子のイベントの数日後、個別で連絡をいただき「6月にうちでも間借り本屋をやってみませんか」とお誘いいただいたのです。
ピンときたイベントや人には、都合がつく限り、勢いでいいから会いに行ってみる。昔から直感型の人間ではありましたが、今回もそうしてご縁がつながったことに、感謝の気持ちでいっぱいです。悩んでいる暇があったら行動する。大事!
西尾久との違い
せっかくなので、異なるエリアで間借り営業をしたからこそ分かったことも残しておこうと思います。
前回の西尾久で営業させていただいた場所は、商店街の一画で、人が集まる人気の銭湯「梅の湯」の隣、という立地。ですから「遠くからわざわざ人が来てくださる場所」というよりも、近隣にお住まいの方や職場がある方がたまたま歩いていて見つけて入ってきてくださった、という人の流れがありました。
一方谷中は、近年都内でもかなり人気の観光街。歴史がある建物も多く残っていたり、路地裏にひっそりとあるカフェや喫茶店、雑貨屋さんなどもあるので、散歩をしていて楽しい街です。最近は海外の方も多く見かけるようになりました。そのため、訪れてくださる方は近隣にお住まいの方よりも、やや離れたエリアにお住まいの方が多くいらっしゃいました。
そんな街で、しかも谷中の街づくりの中心であるHAGISOでの営業ということもあり、選書の傾向もやや変えてみました。
ベースとなる本はあまり変えていないのですが、特にHAGISOだからと仕入れた本は、例えば建築、アート、映画などのカルチャー系のジャンルの本。また街づくりに関するものや、有名な企業の代表の方が書かれたビジネス系の本も入れました。さらにHAGISOはグループで宿泊施設を運営されていることもあり、海外の方もよく訪れます。そのため外国の方が見てもわかりやすいような絵本や、ガイドブック、日本の手仕事にまつわる本も少し手厚くしました。
これらは事前に予想して仕入れたものももちろんありますが、1週間営業してみて、お客様の傾向を見て買い足したものが多いです。
お客様の空気感や温度感を見ながら、選書の傾向を変えていく……。単日のイベント出店ではなかなか味わえない、醍醐味があります。
それから面白かったのは「私もこんな店をやってみたいですが、どうしたらいいですか」「なぜ始めたんですか」「自分もやりたいので参考のために来てみました」といった類のお声がけをいただくことが多かったこと。「SNSでずっと活動を見ていたので、実際に来てみたかった」「noteを見ていたので、勉強のために来ました」という声も。
間借り本屋の営業を始めてまだ数ヶ月ですが、少しずつ認知していただくようになり、興味関心のある方にじわじわと届くようになっている手応えを感じました(まだまだですが……)。また谷根千エリアという場所柄もあり、西尾久よりも「おでかけのついで」の目的地にしていただくことも多かったのでしょう。HAGISOのネームバリューの高さに大きく助けられました。
HAGISOは地元の人にも愛される店であると同時に、観光スポットとしても有名なこともあり、遠方からお越しの方とも多く出会えました。お話したなかで一番遠くの方は、三重在住の方!開かれた場所だからこその出会いや面白味を感じながら営業することができました。
反省もいろいろと
まず選書に関する反省点は、アウトドアや旅、おでかけなどのジャンルの本をあまり入れられていなかったこと。私自身の本棚でも若干手薄なジャンルです。わざわざ谷根千エリアに観光に来る方々ですから、おでかけ好きの方は多かったはず。こちらは次回以降の課題ですね。
それから本棚の仕様上、絵本の見せ方に苦戦しました。絵本は実用書などに比べて横幅があるものが多いので、面で見せるためにはそれなりに幅のある棚が必要です。今回のボックス型の見せ方では、面で見せられるのはせいぜい2冊から3冊程度……。もっと面で見せられる棚を増設せねば、と学びになりました。
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そして西尾久での営業との大きな違いでもあるのですが、今回はKAZENONE BOOKを目指してきてくださる方よりも、圧倒的にHAGISOカフェを目指して来た方が、待ち時間や帰りがけに立ち寄ってくださることが多かったです。当たり前ですが。
そのため、会話のチャンスがなかなか得られず、本を選んでくださった方としかほとんどお話ができなかったのが反省です。初めて来てくださった方にも、私が何者で、なぜこの場で間借り本屋なんぞをやっているのかという自己紹介を、より分かりやすく掲示するなど、仕掛けが必要だと感じました。
そうした取っ掛かりがあったほうが、本を手に取るきっかけになるかもしれないし、おせっかいな本屋として在りたい自分の姿だからです。
大きな気付きと、次なる野望
西尾久の頃は2か月間という長期にわたって固定で本屋をやらせていただいたこともあり「自分の本屋をもつ」という疑似体験ができました。常連さんができ、何度も足を運んでくださる方がいらっしゃることに喜びを覚えていたあのころ。
一方谷中では、ほとんど全ての人が初めましての方ばかり。さらに「本が好きだから入ってきた」という方ばかりではありません。常連さんが遊びに顔を出してくれる街の本屋さん、のようなものが心地よかったこともあり、正直初めは「私がしたいのは、間借り本屋ではなく、固定の本屋なのだろうか」と悶々としていました。
でも前述のとおり、この場所でやっているからこそ出会えた、トレンドにアンテナを張った感度の高い方々とお話することができたり、中には常連さんのような間柄になって、何度もお話することができた方もいらっしゃいました。西尾久のころの常連さんが、HAGISOにも顔を出してくださる方が何人もいたこともうれしかった!
そこで気づいたこと。私が心地よくいられる間借り営業のスタイルは「一定期間(1週間以上)」×ある程度「継続性のある」ものだということ。
固定の店舗をもつよりも転々とするほうが、飽きっぽい性格の私にはやっぱり合っているのだと思うし、土地柄にあった人たちとの出会いの偶然性も楽しい。さらに継続性があるほうが、じわじわと常連さんができていく可能性もはらんでいるような気がします。
相変わらずのワガママっぷりですが……。呼んでいただけるうちは、どこでも存分に楽しませていただこう、より良い本屋であるよう努力していこうと思っている次第です。
最後に次なる野望として見えてきたのが、自己紹介用のZINEを制作することと、そして荒川区での古本市の開催、の二つです。
前述のとおり、間借り本屋営業に関する質問をたくさんしていただいたことで、改めて内省し、言語化できることもあり、それらを明確に言葉にして残しておきたい気持ちがわいてきたんです。ビジネス的な視点でも、自分で販路を持っているからこそ、自己紹介本は原価も抑えられて、売上がある程度見込める売れ筋商品になるのではないかと。
また古本市の開催については「本屋を始めたいけれど、何から始めたらよいか分からない」という方の、ファーストステップに活用してもらえるような場になればと思うようになりました。
かつての私がそうだったように、初めの一歩を踏み出すために、いつも誰かが手を差し伸べてくれていました。ライターを始めたときも、間借り本屋をはじめたときも。実力も経験も何もないにも関わらず、です。
おこがましいですが自分もそんな存在になれるよう、そして私自身も自分の住まいである荒川区に、もっと本と触れ合うことを楽しむ人を増やしたいという想いもあり、二つのベクトルが重なる古本市の開催はできるだけ早く企画したいと思うようになりました。
どちらの野望も「いつかやりたいな」とは思っていたものの、実行に向けてこんなに早く動き出すとは、HAGISOでの営業前にはまったく予想もしていませんでした。
HAGISOでの営業を通じて、普段話すことのなかった方々とお話しながら気づきやきっかけをもらえたからだと思います。何かしていないと落ち着かない私に、新たな燃料を与えてくださり、本当にありがとうございます。
*
最後に。HAGISOのスタッフの皆様には本当に助けられました。皆様明るく、健やかに働いていらっしゃる方ばかり。短い期間ではありますが、私のこともHAGISOの一員として迎えてくださって、本当に感謝しています。
HAGISOカフェの様子は毎日ぼんやりと隣で見ていましたが、どの方も素晴らしい接客で、勉強になりました。私もいつか、HAGISOのような場所を作れたらいいな。
というわけで、第2回間借り営業、HAGISO編の報告はこのへんで。
また皆様とどこかでお会いできたらうれしいです!
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