若者が過疎地域から離れているのではなく、過疎地域が若者を拒んでいる
私は秋田県北秋田市という人口3万2000人弱の、ごくごく普通の地方に住んでいます。
20歳前後がごっそりいない町
先日、秋田県の県庁所在地にある秋田大学に打合せでお邪魔したときに、若者で溢れるキャンパスを見て【これだけの若者がいれば、何でもできてしまうのではないか】という錯覚に襲われました。
私の暮らしている市では人口減少に加え、大学がないこともあり、20歳前後の若者層がごっそりと抜けているのです。さらに私の集落では人口の偏りが激しく、高校生の次は、30代半ばの帰郷してきた層まで飛んでしまいます。
高校を卒業した若者は、ほぼ100パーセント大学か就職で外へ出ていく状況。しかも、これらがすべて望まれた結果ではないことも問題だと思っています。
地元に就職したいけど、希望の職種がない、募集してない、あるのは介護や事務仕事ばかり…県外で経験を積んで、いずれは地元のために帰ってきて働きたいと、若者は口をそろえて言いますが現実は無情で厳しい。
田舎では若者にチャンスがない
田舎と都会で何が違うのか。
若者にとって一番大きいのは都会にはチャンスが無数にあることではないでしょうか。都会では年齢は関係なく、素晴らしいものは評価される文化があります。しかし、田舎ではことさら若者は低く見られてしまいます。若者の意見は参考まで、若者の行動は元気が良くてよいだけ、若者は青くて未熟。移住当初の私も、そんな無意識を会話の端々から感じとっていました。私は老人たちが発する「若者から元気がもらえて良かった」という発言が「地元にお金を落としてもらう」という発言の次に苦手です。
そういう発言をする人の大半が生涯現役、まだまだ若い者には負けてられない、という世代交代を拒む人物である確率が高いからです。都会を引っ張っている社長は30〜40歳代がメインですが、田舎にくれば60歳以上がまだまだ現役で頑張っていることからも、田舎がいかに世代交代に失敗しているか、若者にチャンスを与えられていないかが分かるのではないでしょうか。
それでも地元に就職したい
そんな状態でも、高校卒業後すぐに地元に就職をする若者もいます。その割合は10人中2~3人。家族のため、地域のため、自分のため、理由は様々ですが、どこか後ろめたさを抱えているのが気にかかります。周りと違うという、少数派の後ろめたさ。
私があった人物はとにかく大人しい子がほとんでした。真面目。もちろん友達と会えばバカ騒ぎもするでしょうが、初対面でもグイグイくるタイプの人間がいないのです。
大人に対する牙を抜かれてしまったような、去勢されてしまったような、そんな印象を受けました。町に出ても、若者向けの施設、お店はない。職場でも一番下っ端、町にも自分たちの居場所がない。それが田舎の若者の現実。
しかし、地元のために汗を流し、働いている若者は素晴らしい。一昔前はそれが当たり前だったのに、いつの間にか逆転してしまいました。
今の当たり前に逆らい、地元で頑張っている若者をもっと応援したいと心の底から思います。
50年後に消滅するかもしれない村や町
このまま何もしなければ、50年後には人口がゼロになる。単純計算だが、と前置きがついた資料を見たことはないでしょうか。消滅可能性都市。
自分たちが住む町がなくなるということが、これほどまでにリアルに感じられる時代になった。なってしまったのです。私は、自分の住む集落の場合、このまま行くと30年後にはなくなってしまうという計算で動いています。今の50代が80代になるとき、集落としての機能が維持できなくなります。感覚としてではなく、実感としてそう思います。そのためには、世代交代のスピードを速めなくてはなりません。若者に地元へ帰ってきて、働き、生活をしてもらわなくてはならないのです。
どうすれば若者を受け入れられるのか
若者が言う「働きたい仕事が田舎にない」という場合。若者自らが起業すれば解決します。(といってもそんなに簡単ではありませんが……)都会ではそういった土壌があり、仕組みが盛んに作られてきました。田舎も田舎にあった起業の仕組みを作っていかなくてはならないと思います。ローカルベンチャーという言葉も浸透してきましたが、田舎で若者が起業をするというのは、相当ハードルが高いことです。お金やら何やらはもちろんのこと、一度失敗してしまえば、噂が広がり再起のチャンスがないことが致命的です。チャレンジできない文化がある田舎から消滅していくことでしょう。
これからの過疎地域に求められていること
そこで、私が推し進めたいことは「シニアによる起業」です。若者に起業させるために、老人に起業させるとはどういうことでしょうか。つまりは、シニア層は若者にないものを沢山持っているということです。お金、経験、人脈と起業に必要なものを全て兼ね備えています。しかし、元気、行動力、IT技術など若者に頼らなければならない部分も多く、この両者をお互いにマッチングさせ、対等な関係で協力できるような仕組みを作れば、今までよりは円滑に事を運べるのではないかと考えています。最初は共同経営者とまではいかなくても、従業員としてでもいいと思います。シニア層と若者が本当の意味で対等な関係を築くことが、これからの過疎地域に一番求められていることではないかと感じているので、シニア起業が流行るか流行らないかに関わらず、少しでもお互いが歩み寄れる環境がつくれたらいいなぁと思う今日この頃です。
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