うちの宿の自慢は〇〇という話
皆さん元気ですか。コロナ禍が終わって、倒産件数が急激に増えているのだとか…。
でもでも、危機やピンチは進化が加速するチャンス。変化できれば1番いいけど、できなくて淘汰されても種全体としては伸びるのだから問題ない。楽しく淘汰される方法があれば良いのだけれど。そんなことを思いつつ。
今日は私の宿「森吉山麓ゲストハウスORIYAMAKE」の自慢について紹介させてください。
一般的に“宿の自慢”といえば、美味しい料理や贅沢な温泉、あるいは眺望やサービスの充実ぶりなどを思い浮かべる方が多いと思います。実際、私も秋田県北秋田市の山奥で宿を営む身として、地元の食材をふんだんに使った郷土料理や、冷涼な気候ならではの心地よい空気、そして自然の恵みを満喫できる景色は、胸を張って皆さんにおすすめしたいポイントです。山に囲まれた静かな環境で、日常の喧騒から離れてゆったりと過ごしていただけるのも魅力のひとつでしょう。
しかし――。
私の宿にはもう一つ、誰にも負けない“自慢”があります。
それは「お客さん」です。
なぜ“お客さん”が自慢なのか
私の宿にはいくつかの「ハードル」があります。まず、予約はインターネットのみの受付です。地理的にもアクセスが悪く、しかも和式トイレしかない。正直、快適さを求める人には向いていないかもしれません。
それでも、そんな不便さをものともせずにやって来る方々は、決まって穏やかで思いやりがあり、私たちのちょっと“古め”な設備さえ含めて楽しんでくれます。では、なぜそのような“良いお客さん”が集まるのでしょうか。
“良いお客さん”が来てくださる理由
予約手段の“ハードル”
ネット予約のみという制約があるため、まず私の宿を見つけられる方々は、自ら情報収集をし、目的意識を持って宿を選ぶ傾向があります。結果、予約の段階から「ここならではの体験を楽しみたい」「山奥の静けさを求めたい」と考えている方が多いのです。アクセスの“ハードル”
山奥の不便な場所にあるので、車やバスを乗り継いで時間をかけて来てくださる方がほとんど。移動に手間をかける分、到着した瞬間から「ようやく着いた」という安堵と達成感が生まれ、“特別な旅をしている”という思いも強まります。そうした旅への前向きな気持ちが、宿での過ごし方にも表れます。和式トイレなどの“昔ながらの設備”
和式トイレや少々古めかしい施設は、現代では一種のレア体験かもしれません。最初は戸惑うかもしれませんが、「むしろレトロで面白い」と好意的に捉えてくださる方が多いのです。最新設備が当たり前の時代に、あえて古いものを味わいたいという“探究心”をお持ちの方が集まりやすいともいえます。
こうした条件をすべてクリアし、なおかつ「ここに行きたい」という強い思いを持って選んでくださる方は、心に余裕があって、何事にも柔軟に対応できる方が多いです。
だからこそ、私の宿に集まるお客さんは、ひとりひとりが特別で、一緒に過ごしているだけであたたかな空気が生まれます。
“不便さ”が生む、特別な体験と絆
私自身、山奥の宿を営みながら「もう少しアクセスを良くできないだろうか」と考えたこともあります。しかし今になって思えば、この“わざわざ感”こそがお客さんを選び、お客さんを育て、そして何より私たち宿側にも大きな学びをもたらしているのだと実感しています。
「こんなところまで、よくいらっしゃいましたね!」
「ほんとに来るの大変でしたけど、来て良かったです!」
そんな会話が自然と交わされるたびに、通常よりも深い安心感と結びつきを感じます。
ここまで足を運んでくださる方には本当に感謝しかありませんし、その感謝の気持ちが積み重なって“やっぱりお客さんが自慢”だと胸を張って言える宿になりました。
最後に
料理や温泉、景色や空気、どれも私の宿の自慢には違いありません。けれども、それらを最大限に活かしてくれるのは「お客さん」の存在です。
さまざまなハードルを越え、自分の意思でここを選んでくださる方々だからこそ、たとえ不便でも笑って楽しみ、心からの感動を分かち合うことができるのだと思います。
不便な要素も多い私の宿ですが、それゆえに出会える“良いお客さん”との物語こそ、私の最大の自慢です。
これからも、そんな皆さんと一緒に、新しい旅の価値を紡ぎ続けていきたいと思っています。
今日もお読みいただき、ありがとうございました( . .)"