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第56回 現実はドラマじゃない:仕事はしれっと忍者のように遂行せよ
皆様は、会議で議論が炎上した経験はありますか?
私が以前の職場で体験した、ある会議でのことです。
同僚が主力商品の販売戦略についてプレゼンをしていた際、会議の雰囲気はだんだんと緊迫していきました。
彼が戦略の方針を打ち出していると、マネージャーが「ここはこうしたらいいんじゃないか?」「この場合はどうするんだ?」と矢継ぎ早に質問を投げかけ、さらには「いや、違う、そうじゃない」と自分の意見を次々と出し始めたのです。
会議室の空気は一気に重くなり、同僚の顔もだんだんと曇ってきます。
同僚は最初こそ「そうしましょう」と受け入れていましたが、マネージャーの言われるがままに承諾するうちに、話がどんどん迷走し始め、最終的には議論の着地点が見えなくなってしまいました。
心の中で「このままでは埒(らち)が明かない…」と感じた私は、勇気を振り絞って、「このままだと結論を出すのが難しいと思うので、一度仕切り直ししませんか?」と提案しました。
正直に言って、全員の視線が自分に向いた瞬間はドキッとしましたが、なんとか場を収め、少しでも建設的な議論になるように仕切り直すことができたのです。
その後、同僚は議題をいったん持ち帰り、数日後にしれっと方針案が決まりました。
ヒートアップしていたミーティングから一度撤退することで、落ち着いて方針を出し直せたのでしょう。
改めて振り返ると、仕事とはこの「しれっと物事が進む」ことが上手くいくコツなのかもしれないと感じました。
仕事には、ある要因が決定打となって結果が出るというような、明快な因果関係があるわけではないと考えています。
時には、「本当にこの方法が正しいのか?」と疑問を抱きながら、運頼みで突き進むことだって多い気がします。
テレビドラマでは過程と結果がきれいに噛み合い、爽快な結末が描かれますが、現実ではそんなに上手くいくことは稀です。
稀だからこそ、それがドラマや小説になるのだとどこか納得もしてしまいます。
また、勉強なら「1 + 1 = 2」と明確な答えが出ますが、仕事は「2 + 3 + □ ÷ 2 - △ = ?」のような、複雑で予測がつかない虫食い算です。
そのブラックボックスに、仮説を立てて飛び込み、波風を立てずにしれっと結果を出すことが重要だと思っています。
そしてそれはまるで、忍者のように任務を遂行することではないかと、長いサラリーマン人生を通じて考えています。
有名な電通の「鬼の十訓」のようにパワフルな仕事ができない私は、粛々とやるべき課題を見つけ、一つ一つ丁寧に潰して、成果を積み重ね、しれっとサラリーマン人生を生き抜いていきたいと思っています。