第68回 なぜこの人と会話をしたくないのか
「この人、悪い人じゃないのになぜか付き合いたくない…」
そう思った経験はありませんか?
先日、大阪出張中に立ち寄ったいつものスナックで、そんな印象を受ける方と出会いました。
その方は60代くらいで、明るくおしゃべりな方でした。
初対面にも関わらず、ニコニコと笑顔で話しかけてくれる、感じの良い方だったと思います。
ところが、話を聞いているうちになんだか違和感を覚えました。
話の内容にオチがなく、正直なところ全然面白くないのです。
もちろん、すべての関西のオッチャンが面白いわけではない、と頭では理解しているのですが、どこか「期待外れ」と感じてしまった自分がいました。
さらに、私がよく通う近所のBARにも、悪い人ではないけれど少し付き合いにくい常連さんがいます。
その方は、人の悪口を一切言わない真面目な方ですが、会話が一方的です。
自分の知識や意見を延々と語り、「そういえば」と相手の話を遮って、自分の話題にすり替えてしまうのです。
最近よく聞く、「会話泥棒」だと思います。
この二人に共通しているのは、「会話がキャッチボールになっていない」ということだと思います。
どちらも相手に話す隙を与えないため、聞いている側に負担がかかり、結果的に「一緒にいて楽しくない」という印象を与えてしまうのでしょう。
私は持論として、極論、話の内容そのものが面白くなくても良いと思っています。
大切なのは、互いに話したいことを少しずつ交換し合い、会話が尽きたら同じ時間を共有する。
その「心地よさ」こそがコミュニケーションの本質だと感じます。
それだけに、「あなたはどう思う?」と一言添えるだけで、この方たちの印象は大きく変わるのにな…と、もったいなく思いました。
ただ、ふと自分の行動を振り返ると、同じように一方的に話している場面がないか気になりました。
特にお酒を飲んでいるときは要注意です。
自慢話をしていないか、相手の反応を無視して話を続けていないか。
気をつけているつもりでも、相手が我慢している可能性は十分にあります。
スナックやキャバクラで高額な料金が発生するのは、綺麗な女性が「話を聞く」という労力を引き受けてくれるからでしょう。
それでも、スナックのママたちは本音をハッキリ言うことが多い印象です。
「もう十分!」とお客さんにストップをかける場面を何度か目撃したこともあります。
こうしたやりとりは、対価として支払われる飲み代で帳尻が合うのかもしれません。
ちなみに、大阪のスナックで出会ったおしゃべりな常連さんも、話が盛り上がりすぎた結果、二本目のボトルを頼む羽目になっていました。
話を聞いてもらうためにもお金がかかるなんて、人生は苦行です。
だからこそ、もしあなたの周りに親身になって話を聞いてくれる人がいるのなら、それは本当に幸せなことだと思います。