<大人の童話>回想スープ店の本日のスープ
ある北国の深い森に小さな町があって、その更に森の奥に一軒のスープ店があった。
町には他にもレストランがあったが、とりわけ1人で行くにはその店はちょうどよかった。
重たい木の扉を開けると壁側には大きな暖炉があり、中では太い薪が煌々と燃えている。
間隔の開いた客席。1人がけのテーブル。赤いベルベット生地の椅子。音楽はかかっていない。
薪が爆ぜる音がパチリパチリと耳に届く。
おしゃべりが似合わないこの店で客は一様に静かになる。そのためか今日あったことを回想するには全くちょうどい