【無職日記】その1: 安楽が人を腐らせる

3日ほど前、って「ほど」ってなんでつけているかっていうと、もうあれから何日経ったかわからないくらい、既にこの時点でボケてるから。ここまでのあらすじ。自分は[お遍路]を無事完遂し、フェリーに乗って徳島から和歌山へ。高野山まで行って文句を言って。そっからまた梅田まで行ってオフ会して。大阪から夜行バスで新宿に行き、パレスチナ支援のイベントが開催されてるってんで東大まで行き、そんで電車に乗って千葉の実家まで「帰って」きたのだった。長いようであっという間。旅は終わった。無事に。最後まで。

それはいいのだけど、実家に帰ってきてからの自分がどうだったのかが、もう既に記憶が曖昧なくらい、完全に安全、安心、疲労も責任もない今のこのシチュエーションに落ち着ききってしまっている。本当はここからが「忙しい」はずなのに、その「忙しい」に突入するのが嫌なので、何もしなくていいこの一時のモラトリアムに、できるだけ長くとどまろうとしている。このままじゃまずい。ここまでの経緯を今のうちに思い出しておく。でないとすべてがとろけていきそうだ。

実家にたどりついたその日の夜は一瞬で気絶するように眠った。前日深夜バスでの移動だったとはいえ、日中はまったく眠くなかった。むしろバスの中なんて睡眠環境としては素晴らしいものだ。壁もあれば屋根もあり、エアコンさえついている。野宿に比べれば天国だろう。バスの中で熟睡したし、たとえ熟睡できなくても朝から動けないようではお遍路なんてできない。そういうテンションだったのでちっとも眠くなかったのだが、家につくとついにお遍路が旅が終わったということで安堵し、緊張の系が切れてしまったのだと思う。気づいたらその日は翌朝だった。

翌日からは引越しの荷物解きに集中する。が、ちっとも作業が進まない。1ヶ月前に家財道具一切を送ったが、引越し先は実家である。[本はほぼすべて処分した]ものの、仕事場と自宅と。二箇所の荷物を一箇所の、それも実家の「子ども部屋」にすべておさめろというのだから無茶な話で、ダンボールを開けて中を確認、外に全部出しては見るものの、収まる場所がないのだから、部屋は着実にカオスになっていき、ますます次のダンボール開封がしにくくなり効率が低下するというフローをただただ繰り返していた。

作業中に気づくと何度も眠っている。肉体の疲労がとにかくすごい。寝ても寝ても眠い。いくらでも眠れる。寝て起きると体が回復しているのがわかる。結局、肉体的にはとっくに「限界」だったのだろう。脳内物質を大量に分泌させることで麻酔をして疲労に気づかないようにしていただけだったらしい。昼寝も合わせて何時間寝たんだろう。わからないが、寝るたびに体から疲れが消えていき、それとともに「日にちの感覚」もなくなっていった。何もしなくてもごはんが出る、風呂がわいている、ゴミも捨ててくれれば洗濯もしてくれる。そんな「[ゲストハウス実家]」の暮らしがこの頽落にますます拍車をかける。安楽すぎる。動けなくなってきている。

気づいたときにはAmazonの電子書籍セールで購入した『[Getbackers 奪還屋]』を読んでいた(1冊11円だった)。まったりと。お遍路でのテンションと落差ありすぎ。そりゃ1ヶ月以上の大冒険の後である。数日しばしの休養、休息も大事だろう。でも、自分の性格から言って一度ダラダラとしてしまったら、その後えんえんとそれが続いてしまいそうな気がする。それはよくない。お遍路で学んだこと。それは「とにかく動き続ける」ことだった。動きさえすれば必ず変化が生まれる。変化さえあればそれが次の動きを持ってくる。そうやって前に進んできた一ヶ月だったが、このままでは「静止」につかまってしまう。

というわけで、やらなければいけないことを順にこなしていこう。まずはデスクトップのPCをネットワークにつなぐ。実家の間取りの関係から有線で直接つなぐことは難しそうなので、Wi-Fi中継機を買ってくる。「近所」の電気屋までとりあえず行ってみるか。なんだ、たったの5kmじゃないか。これなら自転車でいける。ついでにもろもろ買い物も済ませる。役所の手続きもだ。[やまざきしんじ]さんに買い取ってもらったPCを発送しなければ。そしてなによりお遍路の記録の続きを書く。こちらは毎日最低1日分は更新することにしよう。

それと同時にいよいよ就職活動をしなければならない。果たして仕事なんて見つかるのか。見つからなかったらどうするのか。まったく何も考えてないのだが......。お遍路は大変だった。が、なんだかんだで楽しかった。それは結局、実人生からの逃避でしかない。逃げて逃げて、でも最終的に我々はこの現世に捕まる。一ヶ月の逃避に「意味」があったのかどうか。それは今後の人生如何によって決まる。安楽に腐ってる暇はないのだ。

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