【手記】移動ドを「感じる」-コダーイ・メソッド編-
※本記事は学術的記述ではなく、個人が独自の研究・経験をもとに作成した文章で構成されていることをあらかじめご認識いただきたい。
ソルフェージュ・メソッドの選定
例えばジャズをプレイするとき、クラシックの正統な階名で考えるか、バークリーメソッドで考えるかという議論は度々見かける。
しかし、コダーイメソッドで考える、という記事に出会ったことがない。
それも、個人的には何ら不思議を感じていない。
ジャズのために「コダーイメソッド」を習得するということが、おそらくハンガリー以外の国では全くメリットがない。
ではなぜ、自分はコダーイメソッドを用いて音楽に取り組んでいるのか。
端的に言えば、最初に学んだソルフェージュ・メソッドがたまたま「コダーイメソッド」であった、ということである。
バークリーメソッドとコダーイメソッドの違い
小学生のころから合唱をやっていた際、先生からは「ハンドサイン」と「階名読み」で音楽を教わった。コダーイメソッドの根幹である。
半音上昇を歌う際、母音に「i」を入れる。バークリーメソッドでもお馴染みの「ドディレリ唱法」だ。
しかし、半音下降を歌う際は、母音に「a」が入る。
ここが、バークリーメソッドと根本的に違う。
ハンガリーおよび日本におけるコダーイメソッドの教育の違い
また、日本とハンガリーの教育現場で指導されているメソッドにも違いがある。
コダーイ協会の人と話をしたわけではなく、ザクッとネットで調べた程度だが、そのようなニュアンスの公式コメントを読んだ事があった(現在は削除されている様子)。
例えば、
1.日本では、頻出の半音階については言及されるも、使われない半音階については特に細かく決めていない
2.自分は「la」の半音下は「lo」と習っていて、上の原則とは異なっている。(これは、日本人が発音しやすいように「lo」に置き換えたとのこと)
自分は、キーCで「G G# A」と鳴らされると「so si la」と聞こえるし、「A A♭ G」は「la lo so」と聞こえる。
コダーイメソッドとジャズ
コダーイメソッドのソルフェージュでジャズ解説をしている本や資料は今までに見たことがなく、インターネットで調べても文献が見当たらなかったため、バークリーメソッドを参考に独自で研究を行なった。
コダーイメソッドの認知が他に比べ低いとはいえ、決して劣ったメソッドではない。
コダーイの作品やハンガリーのわらべうたを学ぶにあたり、この唱法が適用されている。
コダーイの言葉から推測するに、おそらく汎用的・分析的・機能的に階名を使用するというよりも、トーナリティを十分に感じるというところに重点をおいた結果、頻出の半音階に絞って教育がなされたのだと思う。
事実、合唱団で行われた歌唱指導のなかで、その目的は十分に達成されていたと感じる。
転調をどう歌うか
以降は、メソッドに関係なく、ソルフェージュにおけるアイデアである。
転調は、すべて転調後の階名に読み替える。
読み替えるとは言うものの、「そのように聴く」という方が表現としては正しいかもしれない。
それを、ジャズではどこまでを転調と考えるかで読み方の選択肢が変わる。
テーマを歌うときに限っては、転調と考えずに最後まで歌うことができる(Moment's Noticeなど)
しかし、アドリブのアプローチでは通用しないケースが多くある。
四度メジャーに向かうツーファイブワンなどは、全く転調としてとらえず、C7の7度を"ta"として読むことでフレージングすることも可能である。
しかし、短三度メジャーが出てくると、同主調として捉えた方が考えやすいケースもある
曲のコードをきちんと覚え、適切にアナライズすることが移動ドでジャズを行う上での近道だと思う。
曲を聴いてもフレーズが移動ドで聞こえないケースは、それがなされていないことに尽きる。
裏を返せば、曲さえ覚えれば(そしてコードの響きをつかめるようになれば)、自ずと移動ドで聞こえてくるようになる。
そしてそれは、人に学ぶことによりさらに早く理解が進むように思う。
市場への自己適用を図るか、自分のこだわりを追求するか
バークリー式の階名読みを習得しようか悩んだ時期もあったが、結局耳の残ったコダーイ式をずっと使っている。
だから、コダーイ式でポピュラー音楽をやりたい、という人がいれば、多少は相談にのることができるのでご連絡いただければと思う。
ただ、正直まだごちゃごちゃしているので、もっとアナライズと読む練習をやらないと、というのが僕の現実的な段階である。
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