34歳男、はじめての占い。いざ占いの館へ。
何かにすがりたい思いで、僕は占い師のもとへむかった。
僕は、占いというのは信じていなかったし、意味のないものだと思っていた。どうせ上手く言葉を誘導して、それっぽいことを言ってるだけの詐欺まがいな行為だと思っていた。
だが、僕は歳を重ねるにつれ、何も経験していないのに、あれこれ言うのは間違っていると思うようになってきた。
経験してみて、違ったとなれば、まあそれはそれでも良いだろうというような感じだ。何事もまずは経験である。
童貞のくせにサークルの女子たちを品定めするようなクソダサ人間にはなりたくないのである。ちなみに童貞ではない。
占いというのは、調べてみると、金額が幅広く500円くらいで占ってもらうのもあれば、がっつりと5000円くらいで占いをするなど色々あるのだと知った。
500円に僕の未来を託すのはあまりにも心許ないと思ったので、僕は、30分3000円コースの占いに決め、店へと赴いた。
人は、値段がちょうど中間くらいのものを選ぶのだ。
「占いの館千里眼」というテナントが入ったビルにやってきた。
その名前から、薄暗くて、紫色のヴェールを被った占い師が水晶を睨みつけている感じを想像していたのだが、店内は明るく、パーテーションで仕切られたブースに数名の占い師が待機している、という感じだった。よかった。
ブースに入るとまず占い師は、遊戯王の武藤遊戯が持っている千年パズルをもっと小さくしたようなものを振り子のようにゆらゆらと盤面でくゆらせた後、こう言った。
「あなたは頭の回転が早くて、人を笑わせるのが好きな方ですね。」
なるほど、こんな感じで始まるのか。
すっかり気をよくした僕は、へへ、そうですかねえ、なんておどけていた。
アイスブレイク、というやつだ。
そして、タロットカードでの占いが始まった。僕はその光景にワクワクしていた。
というのも僕はゲーム「ペルソナ5」が好きで、作中にタロットカードが登場する、とまあそれだけの理由なのだが、次々に繰り出されるカードをみて、今度は、子供の時に熱中した遊戯王カードのことを思っていた。
放課後は、よくデュエルしてたな…。
今回占ってもらったのは、住む場所、そして今後の仕事についてだ。隣のブースでは恋愛相談が繰り広げられていてヒートアップしていた。占いといえば確かに恋愛のイメージが強い。知らんけど。
何かを新しく始めるには絶好の機会だと占い師は言った。それは本当なのかは、わからないけど、嬉しかった。
僕は背中を押してほしかったのだと思った。
あとは、だいたいこんな感じだ。
あとは、占いとかスピリチュアルなものについて自分で勉強してみるのも良いと言われた。意外な提案だった。僕の知識欲がそそられた。見破られているのか、どうなのだろう。
昔のテレビのイメージで「ズバリいうわよ!!」みたいな感じで来られたら嫌だなあと思っていたのだが、なんだかカウンセリングを受けているような感じだった。まあ客の感じを見て判断するのかもしれない。違う人が言ったら、「ズバリいうわよ!!」みたいに豹変していたのかもしれない。それはわからない。
現場からは以上である。
実際に占いを体験してみて、行ってよかったと思ったし、結構楽しかった。まあ向こうも話術のプロなのだから、上手くのせられただけかもしれないが、それでも良いと思った。
結局のところ何かをするのは自分自身であり、背中を押してもらえたのだからそれはありがたく受け止めるべきだと思った。