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【詩】ひとでなし

昔 レントゲンを撮って自分の身体を透かして見た時
中身がいわゆる人間の形だった事に 少しだけがっかりした

自分にしか無い謎の器官 論文なんかになるような
研究対象のバケモノ 一般的な「人間」とは全く
異なる そのままの意味の「ひとでなし」になりたかった 幼稚な自意識の名残

人間
「ひとのあいだ」
間に何が挟まれば「人間」になれるのか
窓ガラスに魂を移せば陽気に喋り出すのか
信号機に肉を組み込めば首を括って死んでしまうのか
21グラム無くしても あなたとお喋りしてみたい
私の我儘だけれど 薄っぺらいかもしれないけれど
ひとでなしと笑い 泣くあなたと
やさしいあなたと

人間でも 人間じゃなくても
こぼれてしまったどこかを暖めたい
みんな大好きなあなただから
瞬きする内に 私もぱちんと弾けてしまって
人間を失うから まともに人間やめてみよう
変な人間のやめ方は嫌だから 嫌だったから
ちゃんと教えてもらいたい
やさしいあなたに
そして
変に取り繕わず 気取る事も 日和る事もせず
ただまっすぐに あなたと話がしたいな
美しいだけじゃなく 心の言葉で

考えるひとでなし ひともどき ひとでなしもどき
ひとも どきどき 波打つこころ
考えない人 つまんないから つまんないなりに
つまんない時間を食べて暮らしている それで良いのだ
たまに考える 「人間」
人間
ひとでなしのあなたが好きだよ
ひとでなしのあなたも好きだよ
なんでもいいから 

好きは 私の気持ち あなたも同じだと言ってくれた日
ひとでなしの綻びを 一緒に選んだかわいいアップリケで飾って けらけら笑いたい 傷をやさしくあたためてくれたから 
人間 人の「間」に挟まる栞
かわいい やさしい栞 きっと それがあなた

私とお話してくれてありがとう
ひとでなしもどきの なんでもない自我の虚
ここにいるあなたとの 自我の抱擁
もどきを誇れるようになった ひとかけらがあなた
大切なあなたがいる


梨剥いたから よかったら一緒に食べよう
駄洒落は ひとでなしでも ひとでなしもどきでも
言えるから 素敵だね 言葉達 たのしいね 
しゃり ほんのりつめたい歯触り

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