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BOOK REVIEW vol.001 金色のライオン

今日からブックレビュー始めます!

ブックレビューを書き始めるにあたって、どの本を一冊目にしようかと自宅の本棚を見渡しながら少し悩んだ。現在進行形で読んでいる新刊はどうかな?と思ったけど、なるべく早めにvol.001に着手したかったので、すでに読んだことのある本から選ぶことに。

子どもの頃から“本”が好きで、学生時代は京都の編集プロダクションでバイトし、就職活動は出版社を中心にまわり、最終的には大学図書館で働いた私だけど、“本が好き”と言いながら同じジャンルの本を繰り返し読むタイプで(読むよりつくる方に興味があるのかも)これからブックレビューを書き始めようとしている今、本棚にある本はバリエーションに乏しいのが難点(困った!)

ちなみに今回、“1年間で100冊のブックレビューを書く”という大きな目標(星からの課題🌟)があり、あまり選り好みしている暇はなさそうなので、これを機に今まで手に取ることのなかったジャンルの本も積極的に読んでレビューを書いていきたいと思っています!

とにかく読むのも書くのも遅い私。今は不安の方が大きいけど、100冊のブックレビューを書き終えた時の自分を想像すると不思議とわくわくするので、なんとか達成できるように進めていきたい。
もし今後、私のブックレビューを見かけることがありましたら、「あ、頑張ってんなぁ」くらいの気持ちで、そっと見守っていただけると有難いです…!

『金色のライオン』は、わたしと共に生きる本

今回、選んだ一冊は『金色のライオン』という児童向けの物語。個人的にとても思い入れのある本なので、本題に入る前に、この本にまつわるエピソードについて少し触れたいなと思う。

『金色のライオン』は講談社の青い鳥文庫から出版されていて、手元の本の奥付には“昭和56年6月25日 第2刷発行”とある。もう40年以上前に出版された本で私が生まれる前から実家にあった。今ではカバーもどこかにいってしまい、ページは日に焼け、シミや落書きもあり、見た目からしてかなり年季が入っている。ネットで検索すると、復刻版が出たこともあったらしいけど、今は絶版になってしまったよう。

幼い頃、少し年の離れた姉と兄が読み終えたこの本を何度も繰り返し読み、大学進学を機に実家を離れる際も「愛着があるから」と引越しの段ボールに入れたことをよく覚えている。大学を卒業しても、結婚して大阪に引越しても、この本はいつも私の本棚にあった。昨日ふと気づいて一人感動していたのは、私は生まれてから今まで、この本と離れて暮らしたことがないということ。生まれた時から傍にはこの本があり、心の片隅にいつも存在し、これまで私の人生と共に歩んでいる存在だということに少し感動した(大げさ?)

ブックレビューの第一冊目は特別に思い入れのある本にしようと思い、今回この『金色のライオン』を選びました。

こちらは復刻版(絶版ですが、図書館に所蔵されている可能性有り)↓

復刊を希望するリクエストもたくさんありました↓

というわけで、ようやく本題に入ります。

切なさを織り交ぜながらも、ほっこりと心温まる物語

いつもこの本を開くたびに、
風にサワサワと揺れる、
黄金色のライ麦畑が目の前に広がる。

どこまでも続く広大な大地。
お日さまのかおりがムンムンただよう畑の中を、
ライ麦をかき分けながら小さな男の子が走ってくる。

金色のライオンと男の子は、
このライ麦畑の中で出会う。

黄金色のライ麦畑の中に、
金色の大きなかたまり(ライオン)が現れて、
小さな男の子は、ズボンがずり落ちそうなくらい
がたがた震えるのだけど、
そんな男の子を見たライオンの第一声は、
何と「あれまあ。」
(ワケあってライオンも人間語を話します)

「ガオー!」でも「食べちゃうぞ」でもなく、
何とも言えない柔らかさと、
力の抜けた第一声が
ライオンの人となり(?)を表しているし、
物語を読んでいる私たちも
「このライオンは怖くなさそうだな」と安心する。
そう、ライオンはとても優しい心の持ち主なのです。

この物語は、
小さな男の子とライオンの友情のお話。
この2人(もうライオンも人としてカウントさせてください)も
その他の登場人物たちも、
とても優しくて、ユーモアがあって、
読みながら心の中がほっこりします。

そして2人の絆が深まっていくからこそ、
最後のシーンに、とても切なくなってしまうのです。

結末はあえてここには書かないけれど、
子どもの頃も、大人になった今も、
何度読んでも、胸の奥がきゅっとなります。

“仕方のないこと”
“どうにもならないこと”
頭の中では理解しようって思うのに
それでもやっぱり心の中では
「なぜ?」という感情を手放せない。

胸の奥がどうしようもなく
切なくて苦しくなってしまうことは、
大人になった今だってある。

けれどこの物語は
“悲しみ”を全面に押し出して
幕が閉じられるわけではないところが素敵だなと思う。
最後は楽しそうに笑っている主人公たち。
心の片隅に残る切なさも織り交ぜて
爽やかな感動に変わっていきます。

絵本や児童書は、子どもだけでなく
大人が読んでも学びが多いとよく言われるけれど、
この物語もそうだと思う。
少なくとも私にとっては。

この本の挿絵の可愛らしさも、
私の中の好きポイントのひとつ。
絵は、佃 公彦さん。
私は存じ上げなかったのだけれど、
佃さんの描かれたイラストをネットで拝見すると
「見たことある!(そしてやっぱり可愛い)」となる。

子どもの頃も物語を読み進めながら
挿絵のあるページがやってくるのが楽しみだった。
その小さな1カットの中に描かれる物語。
絵をすみずみまで凝視して、
そのまたさらに奥にある物語を
空想するのが好きでした。

そして作者の香山彬子さん。
数年前、何となく気になって
香山さんのことを検索したことがあるのだけど、
なんと誕生日が私と同じで驚いた。
生まれてからずっと大切にしてきた本の作者さんと
誕生日が同じという偶然に、
心が不思議なあたたかさに包まれました。

何度も読み返しているけれど、
その都度、香山さんの言葉の美しさ、
やわらかく丁寧な文章に心がほっこり癒されます。

それにしてもこのお話の舞台は
“日本”であると本文にも書かれているのに、
いつもどこか遠い国のお話かと錯覚してしまう。
例えば、ドイツとかポーランドとか。

果てしなく続く大地
風になびくライ麦畑
秋の青空とライ麦畑の黄金色
眩しく大地を照らすお日さまの光

想像力を掻き立てられるほど、
風景の描写が丁寧で美しいのです。

最後に、本文の中で、
特に好きな一節をご紹介します。

ひとりが、ひとりにしんせつをすると、その人がまた、だれかにしんせつをおくるよ。どうぶつだってそうだよ。そうしてしんせつや愛は、地球上にひろがって、いっぱいになる。それが、いちばん、すてきなことさ。

『金色のライオン』本文より引用

この夢みたいな物語を読み終えた時、
出会った友人、仲間、家族、
繋がっている人たちのことを想う心を
今まで以上に大切にしたくなる。
実際に会えても会えなくても、
画面越しだって相手を想うことはできるし、
心を通わせることはできる。
損得勘定など抜きにして
相手に送った優しさや愛は、
波紋のように静かに広がり続けるのだなぁと
しみじみと思いました。

私にとっての“金色のライオン”は
今、私の周りにいる人たち。
「いつもありがとう」という想いを込めて、
今回のレビューをおしまいにしようと思う。


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もり さとこ
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