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SKIPのリアルについて考える「芝原博士の「ウルトラマンアーク」科学研究室 第8回」
「TSUBURAYA IMAGINATION」にて、コラム「芝原博士の『ウルトラマンアーク』科学研究室 第8回」が公開されました。
今回は、第15話、特別総集編、第16話の3話について解説。
オニキスの出現場所、オニキスが変異させた地球の地磁気など、映像の深読みからガチの科学的解説まで、多彩なジャンルの読み物がたくさん。第一線で活躍する現役の科学者がウルトラシリーズの科学監修を行い、しかもコラムまで執筆されるという豪華企画。
ぜひ「TSUBURAYA IMAGINATION」でお読みください。
芝原博士のウルトラマンアーク科学研究室🔎
— TSUBURAYA IMAGINATION公式<円谷プロ公式サブスク> (@m78_imagination) November 9, 2024
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芝原博士がお答えします!✍️
まずは
ゼ・ズーゲートについて!🤔
本編解説とあわせて
ぜひご確認ください!👀
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さて、この連載で繰り返し触れられているのが、SKIP星元市文書のセットや小道具に反映されている現実の科学知識。
裏を返せば、これはSKIPという組織、ひいては『ウルトラマンアーク』の世界観が、我々の現実世界に近い世界観に立って作られていることを意味します。
今回は、「SKIPのリアルについて」考えてみます。
こちら怪獣110番 〜SKIPセットのリアル〜
ウルトラマンシリーズの防衛チームで思い浮かぶのが、未来的なデザインのオペレーションルーム。
古くは科学特捜隊やウルトラ警備隊、最近ではGUTS-SERECTに至るまで、如何にも「ウルトラ」という言葉が相応しい、素晴らしいデザインの数々です。
一方で、最近では現実世界に寄せたオペレーションルームのデザインもちらほら。
中でも、ストレイジやSKaRDの基地は、我々の世界に普通にあるデスクや椅子を組み合わせてあり、両組織のミリタリー感も相まって、機能的、現実的な雰囲気を感じさせます。
『ウルトラマンアーク』のSKIP星元市分所も、ストレイジやSKaRDのような現実路線の延長線上にあるセットです。
しかしSKIPは全二者のように、怪獣攻撃が目的ではないため、セットの印象はずいぶん異なります。
まず所在地は一般のビル内で、分所の室内は大きな窓がとられ、太陽の光がさす明るい空間です。
壁に向かうデスク群は個人の仕事用、中央のテーブルはミーティング用に使い分けられ、給湯室やソファを備えた来客者用スペースもあります。
室内に設置されたホワイトボードには、分析資料がマグネットで止められたり、マインドマップが描かれ、如何にも研究所、という雰囲気を出しています。
SF感を感じるのは壁面のモニター映像ですが、表示だけなら我々が所有するテレビやモニターで十分転用できます。
結果として、SKIP星元市分所のセットは、どこにでもあるオフィス、または大学の研究室といった感じで、歴代チームのどれよりも現実感を持っています。
円谷作品で類似した本部を持つチームは極めて少なく、『怪奇大作戦』のSRI本部くらいではないでしょうか。
(SSPや星雲荘は、防衛チーム本部というより生活空間なので除外)
これがフジヤマ市やミヤコ市の分所になると、工場の改装やらプレハブやらで、ますますリアル感が強くなるのも笑えるところです。
謎を追え!怪奇を暴け! 〜調査・分析方法のリアル〜
セットのリアルさに対し、異常現象の調査は、若干SF色が強くなります。
怪獣探知機やシュウの電波探知機がそれですが、あくまでスペック上の設定にとどまり、ガジェット自体のデザインは極めて地味で、現実性を損なわないように配慮されています。
調査も基本2〜3名で行われ、万一の事態に対処しています。
本部との通信に使われるインイヤーのヘッドセットも、リンが主に使うタブレットも、普通に我々が使っているものと見た目は同じ。
30年以上前ではSFでしかなかったガジェットやサービスが、現在の我々の生活に深く浸透していることに驚かされます。
未来の世界の犬型?ロボット! 「ユピー」のリアル
本作のSF性は、ユピーをはじめとするAIロボットにほぼ集約されています。
人語を話すレギュラーの自立型等身大ロボットという設定は、『ザ・ウルトラマン』の分析ロボット・ピグ(ピグモン型)で初登場、その後『ウルトラマンマックス』のエリー(アンドロイド)、『ウルトラマンデッカー』のHANE2(ハネジロー型)と受け継がれています。
頭部の「ユー」は多数のスキャナーを備えたドローン、ボディの「ピー」は怪力を備え、脚部の車輪で高速走行可能な人型ロボット。
お茶汲み、電話対応から、至近距離での怪獣探査、ウルトラマンアークの戦闘補助までマルチにこなす万能ロボットです。
特にドローンである「ユー」の設定は秀逸です。
ウルトラマンシリーズでは伝統的に戦闘機をはじめとするライドメカが存在し、接敵や交戦を行うことで臨場感を高め、視聴者の興味を惹く工夫がされてきました。
ニュージェネ以後、戦闘を目的としないチームが登場する作品では、接敵や交戦が描かれず、チームが傍観者になってしまう欠点がありました。
これまでのシリーズでは、SSPやEGISといったライドメカを持たない非戦闘型のチームが存在しました。
『ウルトラマンアーク』では、ユーが怪獣に接近できることで、上記の欠点が解消されています。
現在の技術でユピーを完全に再現することは困難ですが、人型ロボットそのものの技術は目覚ましいスピードで進んでいます。
また、ドローンやAI技術は驚異的な発展を遂げ、既にリアルな戦争で使われているほどです。
SF作品は、数年〜2、30年先を想定した考証をすることが多いように思われますが、このままテクノロジーが進歩すれば、10年を待たずして、ユピーのようなロボットが作れてしまうかもしれません。
怪獣星人どんと来い、知恵と勇気で戦うぞ 〜対怪獣装備・作戦のリアル〜
戦闘を目的、手段としないSKIPではありますが、怪獣の暴威を傍観するだけではなく、能動的な対策も積極的に行なっています。
標準装備のソニッターは、殺傷能力を持たない超音波威嚇装置で、銃器に見えないデザインが、銃刀法を回避している感が出ており逆にリアルです。
第17話では、音波をチューニングすることで、幽体怪獣を実体化させる能力を披露しました。
同じ第17話では、ザンギルの音源を街中のスピーカーから流して、幽体怪獣軍団を実体化させています。
また、能動的怪獣対策として、ユーの活用が挙げられます。
ユーを使えば、至近距離での怪獣調査や、人が入るには危険な場所の調査も可能。
第2話では秘薬の入った甕をリオドに食わせて弱体化させる、第9話ではネロンガを高圧線まで誘導するなど、怪獣の活動を抑制させるための活動も行なっています。
バーチャル戦となった第8話では、ユピーのプログラムを飛行船のサーバーに送り込み、アークと共闘させカネゴンに立ち向かいました。
特殊な戦闘兵器を持たないSKIPだからこその、現実感を持った対怪獣作戦が展開されているように思います。
いかがでしたでしょうか。
『ウルトラマンアーク』の世界は、我々の世界より少し進歩した科学技術をベースとした世界観を持ち、これまでの作品以上に現実感を持ったドラマが展開されているように思います。
『ウルトラマンアーク』のドラマと、コラム「芝原博士の『ウルトラマンアーク』科学研究室」をともにご覧いただき、皆さんの脳内でも作品世界の深掘りを楽しんでいただきたいです。
四国の田舎からエールを送ります。