〽︎月が出た出た月が出た 星元市の上に出た 「芝原博士のウルトラマンアーク科学研究室」 第6回
『TSUBURAYA IMAGINATION』にて、「芝原博士のウルトラマンアーク科学研究室」 第6回が公開されています。
今回は第11話、第12話を深掘りし、怪獣災害の実態・対策から、宇宙人の言語解析に至るまで、幅広い分野について考察しています。
理系の特撮ファンの知的好奇心を揺さぶり、子供達には科学への興味を掻き立て、さらに防災に関する知識も得られる内容です。
現役の科学者が作品の科学考証を務めるスタッフとして、公式で解説をするというめちゃめちゃ贅沢な企画、読まなきゃ損、ぜひご一読を。
第11話、第12話を鑑賞、そして「芝原博士のウルトラマンアーク科学研究室」 第6回を読んで思ったのは、「地球に月があってよかったなあ」。
惑星メグマは、月(ムジャーリ)からのエネルギーによって文明を維持発展させてきた星でした。
その月がエネルギーを失い、滅亡に瀕したメグマを救うため、ギヴァスは「新しい月」を探す旅を始めたのでした。
惑星と月=衛星の関係には、どんなものがあるのでしょうか。
地球と月の関係を例に、考えてみたいと思います。
日本特撮史における月の危機
本題に入る前に少し脱線。
日本の特撮史上で月の危機をめぐる作品はいくつか存在します。
古くは東宝特撮映画の古典『妖星ゴラス(1962)』。
地球の6600倍の質量を持つ天体「ゴラス」が太陽系に侵入、その巨大な重力により引き起こされる異変と、それに立ち向かう人類の活躍を描く傑作です。
60年代らしい大らかさに溢れた映画で、ゴラスの引力で土星の輪や月が吸い込まれて破壊されるなど、インパクトのあるシーンが見られます。
科学考証を担当された当時の東大理学部の堀源一郎博士から、あり得ない描写と難色を示されましたが、本多猪四郎監督、円谷英二特技監督以下スタッフは、映画的な面白さをねらい、敢えてこれらのシーンを作ったとの逸話があります。
新しいところでは、『ウルトラマンブレーザー』TVシリーズ(2023)。
謎の宇宙生命・V99が送り込んだ最後の宇宙怪獣「ヴァラロン」は、月に大爆発を起こして軌道を変え、月を地球に衝突させようとしました。
ウルトラマンブレーザーの活躍で、月の軌道変更は阻止されましたが、もし月が地球に衝突していたら、地球の全生命が助かる見込みはないでしょう。
名著『もしも月がなかったら』
本題です。
今回使用した参考書はニール・F・カミンズ著『もしも月がなかったら』
(竹内均監修、増田まもる訳 東京書籍 1999)
地球が形成される段階で起こり得た、さまざまな「もしも」を想定し、それによって起こる地球への影響をシミュレートした科学エッセイです。
現在絶版ですが、中古品はネットで購入可能です。電子版の発行を切に願います。
ちなみに監修の竹内均先生(1920-2004)は、地球物理学者で東大名誉教授です。
小松左京先生のSF小説『日本沈没』の執筆ブレーンとなり、映画化された同作にも出演されています。
地球と人類にとって月は大きなお友達
我々の住む地球は、生物の生命維持に必要なエネルギーのほとんどを太陽からの熱と光エネルギーで賄っています。しかし、生物が生息する地球環境の維持において、月が大きな役割を果たしていることを忘れてはいけません。
Wikipediaによれば、月 (直径3,474km) は、
木星の衛星 ガニメデ (直径5,262km)
土星の衛星 タイタン (直径5,150km)
木星の衛星 カリスト (直径4,800km)
木星の衛星 イオ (直径3,630km)
に次ぎ、太陽系で5番目に大きい衛星です。
また、惑星に対する衛星の直径比率は、
月は地球(直径12,742km)の約1/4
ガニメデは木星(直径142,984km)の約1/27
タイタンは土星(直径120,536m)の約1/23
となり、月が地球に比べで桁違いに大きい衛星であることがわかります。
このように、並外れて大きな衛星を持つ地球は、月からの重力による強い影響を受けています。
月は地球の環境を豊かにした
最も重要なのは、月の重力=引力による地球の海面変動、すなわち潮の満ち引きです。
周期的な潮の満ち引きは、海洋生物に住処や食物を提供し、繁殖の周期を決定するなど、生存になくてはならないものです。
また、潮の満ち引きによる水の動きは地球の自転にブレーキをかけています。
上述『もしも月がなかったら』には、月が誕生した当時の地球の自転は6時間、それから40億年以上かけ、現在の24時間になった、という記述があります。
もしも初めから月が無ければ、現在も地球の自転は6時間のままであり、そうなれば地上は絶えず強風が吹きつける、過酷な世界になっていたことでしょう。
また、月の起源についてはいくつかの説がありますが、中でも原始地球に火星ほどの大きさの天体がぶつかったことで月が誕生したという「ジャイアント・インパクト説」が有力です。
その衝撃により地球の自転軸が23.4度傾き、その後も月の重力により自転軸が安定しているため、地球には四季が生まれたと考えられています。
このように、地球の生態系を形作る上で、月はなくてはならないものです。
残された謎
惑星メグマの月(ムジャーリ)が、どのような天体で、どんなエネルギーを生み出していたのかは作中で詳細に語られてはいません。
また、ギヴァスが探していた「第二のムジャーリ」についても謎のまま。
12話の最後で、ギヴァスはユウマに示されるままに、地球の月に向かって飛び立って行きました。
果たして、ギヴァスは第二クールで再び地球にもどってくるのか?
ギヴァスが変な考えを起こして、地球の月を持っていかないことを願います。
四国の田舎からエールを送ります。
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