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孤独な青年と宇宙人の友情物語『ウルトラマンアーク』第10話「遠くの君へ」

本稿はタイトルに記載された作品のネタバレを含む感想です。
事前情報をほとんど入れず、作品を見ただけで書いておりますので、多少の間違いは笑ってご容赦ください。

ユウマの同級生・カズオはアマチュア無線愛好家であり、鬱屈とした日常の中で夜な夜な無線で「フィオ」と名乗る人物と交信することが唯一の幸せな時間だった。だが、その「フィオ」との交信の電波に誘われ、宇宙からノイズラーが飛来してしまう!隠された「フィオ」の真実が発覚する時、ユウマはカズオを守ることが出来るのか!?

『TSUBURAYA IMAGINATION』より引用

イントロダクション

第10話「遠くの君へ」は、脚本を足木淳一郎氏(第4話『ただいま怪獣追跡チュウ』)が担当し、監督は前話に続き湯浅弘章氏が務めています。
今回は、引きこもりの青年カズオと、遠い星の宇宙人との不思議な交流が描かれる、感動的なエピソードです。

アマチュア無線と特撮文化

冒頭に登場するのは、何者かとアマチュア無線で交信する青年カズオ。
カズオを演じるのは、『仮面ライダージオウ』でアナザージオウを演じた佐久間悠氏です。
そして、特撮界でアマチュア無線といえば、円谷プロの『緊急指令10-4-10-10』が思い出されますね。

ここで少し現実に目を向けると、日本のアマチュア無線は2000年には90.5万局あったものが、2024年には35.9万局にまで減少しています(『日本アマチュア無線連盟』データより)。
インターネットが発達した現代では、少しノスタルジックなアイテムとして描かれていますね。

宇宙人フィオとの交信

カズオは、ひょんなことから遠く離れた星の「フィオ」と名乗る宇宙人と交信するようになります。しかし、どうして彼らが通信できるのか、その理由は本人たちにもわからず、視聴者にも一切説明されません。このあたりのゆるい展開は大昔のSFのようでもあり、説明不足を楽しむのも魅力のひとつではないでしょうか。

ユウマとカズオの再会

一方で、謎の怪電波を追ってカズオの家を訪れるユウマ。彼らは中学時代の同級生という設定です。
久々に再会した二人の会話が噛み合わない様子は、まさに「久しぶりに会った同級生あるある」で、笑いを誘います。
カズオの陰キャ的態度と、それをなんとか打破しようとするユウマの姿勢が対照的で、キャラクターの個性が際立ちます。

騒音怪獣ノイズラー登場

今話のゲスト怪獣は、1980年の『ウルトラマン80』から騒音怪獣ノイズラー。
今回、ノイズラーには電波をもエネルギー源としている設定が加えられ、空気がない宇宙でも活動できる謎が明かされました。
音波は空気の密度変化が波として伝わる「縦波」で、電波は光子が振動する「横波」。
今回のノイズラーは、異なる物理的性質を持つエネルギーを同時に吸収する「ハイブリッド怪獣」、復活怪獣のリファインとして時代に合ったものになっています。

カズオとフィオ、そして別れの時

ユウマはカズオに無線交信を止めるよう説得しますが、カズオはフィオとの繋がりを絶ちたくないと抵抗します。そんな中、フィオが母星の危機を告白し、交信が続けられなくなることを告げます。このシーンでのカズオの悲痛な感情表現は、佐久間悠氏の熱演が光り、観る者に深い印象を残します。

ノイズラーとアークの戦い

ノイズラーとの戦闘シーンは、地上から空中、さらには宇宙へと舞台が目まぐるしく変わり、視覚的にも圧巻の演出です。特に、ミニチュアワークで描かれるビルの窓の破壊シーンは、アナログ特撮ならではの迫力と魅力に満ちています。エクサスラッシュで音波(&電波)を発生させ、ノイズラーを宇宙に誘導するアークの戦法もユニークです。最後にはノイズラーを宇宙へと送り出すことで戦いが終わります。

別れ、その後に・・・

フィオとの別れに涙するカズオ。フィオと離れたくないという、彼の願いは叶いませんでしたが、フィオとの交流は確かに心に残るものでした。
涙だけでなく鼻水まで垂れ流して号泣するカズオ、佐久間悠氏の演技が素晴らしいの一言です。

我々ウルトラマンは、決して神ではない。どんなに頑張ろうと救えない命もあれば、届かない想いもある。

『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』ハヤタの台詞より

今回、フィオを救うことはできませんでしたが、カズオの想いは、フィオに伝わったことでしょう。
エンディング、ユウマと語り合うカズオのセリフが胸に刺さります。

こうやって空を見上げてみても、フィオの星がどこにあったのかもわからない。彼女の喪失を実感するには、あまりにも遠くて。でも・・・なんで、こんなに悲しいんだろうな・・・

カズオのセリフより

それに対し、「カズオ君にとって大切な人だったってことだろ?距離は関係ないよ」とさらりと言ってのけるユウマ、ヒーローですね。
それを聞いて笑顔になるカズオ、彼の中で何かが変わっていくのかもしれません。

まとめ

今回の『ウルトラマンアーク』第10話、特撮の迫力と感動的なドラマがバランスよく織り交ぜられていました。
湯浅監督、前話も思いましたが、人物の感情表現の演出が上手いです。
復活怪獣が3週続いたので、そろそろ新怪獣が見たくなってきました。

四国の田舎からエールを送ります。

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