冥界から来た半透明大怪獣!『ウルトラマンアーク』第16話「恐れの光」
後半戦第2クールからは、連続ドラマの要素も帯びてきた『ウルトラマンアーク』。最終回に向けて徐々に盛り上がりを見せています。
一方で、ここ数回のエピソードでは、第1クールにおける設定や伏線の整理・回収も行われています。
オニキス然り、アークとユウマの出会い然り。
そして今回は、本作のメインヒロインもう一人の主人公、石堂シュウの物語が一つの決着を見る重要回です。
脚本は、第9話「さよなら、リン」で登場人物の心情描写が光った根元歳三氏、監督は『ウルトラマンブレーザー』第9話「オトノホシ」や、『アーク』第8話「インターネット・カネゴン」でのユニークな演出が印象深い、越知靖監督です。
私、もうすぐ転校するんだ・・・
冒頭、星元市分所でシュウの移動が発表され、分所メンバーは動揺します。
次いでシュウの分所勤務最終日の朝、シュウはユウマとの世間話の中で、特別調査員はスパイと同じく人と馴れ合うことはない、という旨の話をします。
一方で、宇宙科学局就職の理由を聞かれ、思わず質問に質問を返してしまうシュウ。
一連のシーンから、明らかにシュウの内面が変化していること、その変化にシュウ自身が戸惑っていることが伝わります。
そこに事件発生を告げる連絡を受け、シュウとユウマは分所に急ぎます。
原因不明の集団パニック事件が発生したキャンプ場、先行したユピーに合流するようユウマに指示を出したヒロシ所長に、シュウは自分も同行すると宣言。
勤務最終日とあってか渋るヒロシ所長に強く迫るほどの熱意を見せます。
湯豆腐こわい 別れもこわい
ここから本日のゲスト、幻視怪獣モグージョンの登場です。
現地調査を開始したシュウとユウマ。
木陰に潜む何者かの気配をシュウが感じた刹那、悲鳴が上がり二人は急行。
そこには湯豆腐を怖がる男性が倒れていました。
続いて現れた怪獣の腕、その掌から放たれた怪光がシュウを襲います。
さてさてシュウの怖いものは?と思いきや、まさかのユウマ!?
瞬時に場面はシュウのインナースペースに、そこではシュウに別れを告げる分所のメンバーたち。
シュウの怖いものは、SKIPの仲間と別れることだったのです。
モグージョンの能力を使いシュウの内面を描くアイデアが秀逸です。
姿を現したモグージョンはシュウとユウマを攻撃しますが、そのすべてはすり抜けてしまい、エレマガンも効かない。
結局、モグージョンは謎の人物が発する金属音で消滅してしまいました。
それにしても、気合でモグージョンの精神攻撃を退けたシュウは凄い。
分所に戻った後、怪獣の情報を語る所長をバックにしたシュウの表情の変化も素晴らしいです。
この時点で、シュウは自分の心に引っかかっていたものの正体に気づき、納得したのかもしれません。
再登場怪獣の「追い設定」
分所にてモグージョンの分析を行うメンバーたち。
今回のモグージョンは新怪獣として認知されているようで、「光線で相手を恐怖させる能力」についてあらためて丁寧に説明されています。
話は変わりますが、料理の世界では、一度出汁をとった鰹節を使ってもう一度出汁を取る時、うまみの追加目的で鰹節を加える「追い鰹」というテクニックがあります。
同様に、旧作怪獣の再登場時には、魅力を追加するために「追い鰹」ならぬ「追い設定」、つまり新しい設定が追加されることがあります(例:海に住むツインテール、ドリル回転するテレスドンなど)。
「追い設定」には、怪獣の魅力を深掘りしたくなるものから、たまに「なぜその設定必要?」よくわからないものまで色々。
今回のモグージョンの「追い設定」は、「実態を持たない幽体」であり、その不気味さが、高い効果をあげています。
光を見るな!
実態を持たないはずのモグージョンが星元市に出現、SKIPは避難誘導のため出動します。
光を見ないための各自装備は、
ユウマ・・・・高価なサングラス
シュウ・・・・フルフェイスのバイク用ヘルメット
リン・・・・・黒い傘
ヒロシ・・・・溶接用マスク
ユピー・・・・黒い樹脂板
ユピーに扁桃体はあるのか?
大勢のエキストラを動員しての避難シーンは、緊迫感にあふれた名シーンです。
越監督、怪獣の演出が本当にうまいです。
決して努力を諦めない
アークに返信するユウマ、アークアイソードを手に切り掛かります。
しかし幽体であるモグージョンに全ての攻撃は素通り、逆になぜかモグージョンの攻撃はヒットするという理不尽さ。
流れ弾が着弾し吹っ飛ぶヒロシ、リン、ユピーに、シュウは無線で叫びます。
防衛隊が間に合わない今、市民を安全に避難させられるのは我々しかいない、いや、我々ならできると。
ウルトラあるある、「決して諦めない」シーンです。
防衛隊としての上から目線では無い、仲間としての呼びかけ。
直後に交わすアークとのコンタクトも含め、シュウとSKIP、アークが一つになった瞬間で、胸熱です。
鬼に逢うては鬼を斬り、亡者に逢うては亡者を斬る・・・
しかし実態を持たないモグージョンにアークの攻撃は通用せず、逆にボコられ「イヨラ・・・」と倒れ伏します。
そこに現れたのは、宇宙侍・ザンギル。
あんた成仏したんじゃないんか?でも楽しいから許す。
ザンギル、アークアイソードに右手の刃を当て金属音を発生させます。
その音に苦しむモグージョン。
亡者を成仏させる効果を得たアイソードを手にしたアーク、ザンギルとともにモグージョンに立ち向かいます。
今週のビックリドッキリ「バリヤー王子」の技は・・・?
wヒーローが力を合わせて強敵に立ち向かう図、いいですね。
男性コーラスが勇壮な「ウルトラマンアークのテーマ」が華を添えます。
優勢と見える最中、なぜかダウンするザンギル、フラグいただきました。
光を放つ構えを見せるモグージョン。
アークはバリヤーを展開、叩き割った破片で光を乱反射させ、モグージョンに突っ込みます。
自分の光を浴びたモグージョンの怖いもの、それは黒雲と目玉のように光る光球。
刹那、幻影を割いてアークアイソードが一閃、モグージョンに一太刀。
開いた傷にすかさずアークファイナライズが打ち込まれ、モグージョンは昇天しました。
そして星元市での勤務は続く
モグージョン撃破に喜ぶSKIPの面々、少し離れて見ていたシュウ。
その表情に浮かぶ考えは何か。
考えを断ち切るように、仲間たちに駆け寄ります。
後日、通勤するユウマはシュウと遭遇。
シュウはユウマに、「星元市の危機は去っていないので、SKIP分署での任務を延長することにした」と告げます。
そして、自分が宇宙科学局にいる理由も。
「かつては宇宙人を脅威と考えていたが、今は宇宙人のことをよく知りたいと思っている」と。
未知なるものをただ恐れるのではなく、理解を含めることで、警戒すべきは警戒し、友好を深められれば深めれば良い。
ご近所付き合いからビジネス、国同士の外交にも必要なスキルです。
シュウのこの言葉が、子どもたちの心に残るといいですね。
ザンギル再び!
お互いを名前呼びする仲になったユウマとシュウ、そこに現れたのはザンギル。
人間態ではなく宇宙人の姿での登場です。
声は以前と同じ唐橋充さんなので、顔出しもしてほしいとところ。
1クール目の1話完結もいいですが、こういった緩い連続ドラマもいいですね。
次回は「幽体怪獣軍団」として、ゲードスとタガヌラーが参戦!
昭和の怪獣少年にとって、怪獣「軍団」は、血圧が20上昇するキーワード。
公式予告で「軍団」が語られる、嬉しいことです。
長生きはするもんだ。
四国の田舎からエールを送ります。
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