終戦記念日、この1冊『母と子』【絵本紹介】
8月15日、終戦記念日にあわせて1冊絵本を紹介します。
戦後の日本の一場面です。
お話の会のメンバーの一人も「私たちの小さな頃の風景よ」と。
戦争で孤児になった少年の戦前と戦中、戦後のおはなしです。
主人公が過去を振り返るかたちで、浮浪児暮らしや、収容施設「かねの鳴る丘」での生活をへて、上野駅のガード下で母によく似た女性と出会い、実の親子以上に仲むつまじく暮らすようになり、やがて夜間中学の教師になるまでを語ります。
激動の時代の中で、子どもを傷つける大人、守ろうとする大人、無視をする大人、新たな家族……そして、大人になった主人公。
地元で出版社を経営されていた神津良子さんが、「語り継ぐ戦争絵本シリーズ」(23巻)の1作品として原稿を書き、出版されずにいたものを、県内で絵本や文芸誌の挿絵を手掛けている、こばやしひろえさんが「お志を継がせて頂きたい」と、番外編として刊行された一冊です。
安曇野の少年更生施設「有明高原寮」の取材や資料収集を重ね、以前に書籍『とんがり帽子の時計台―ドキュメント鐘の鳴る丘』を出版されている神津さんは、その時の反省から、今回の絵本の中に出てくる「かねの鳴る丘」は架空の施設に設定されているそうです。
ただ、架空とは言え、森のおうちのすぐ近くに「鐘の鳴る丘集会所」として遺っている「有明高原寮」。
私たちが暮らすここでも(※施設自体は移設保存とはいえ…)繰り広げられていた風景だと、想像力をしっかり働かせて、様々な思いを巡らせて読みたい1冊です。
8月22日までは、塩尻市立図書(えんぱーく))で原画展も開催されています。
語り継ぐ戦争 絵本シリーズ/番外編 戦後の再生
『母と子』 神津良子/文 こばやしひろえ/絵
数少ない書店でしか取り扱いのない絵本ですので、お手にとりたい方は、当館内「絵本書店 星めぐり」(TEL0263-83-5670)にお問い合わせ下さい。
*
学芸員 米山裕美