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優しいわけでも、動物が好きなわけでもない僕が、獣医師を続けている理由。

こんにちは。
沖縄県西原町にある動物病院「杜ノ庭どうぶつ病院」の院長の田代修です。

獣医師や愛玩動物看護士や獣医療助手、トリマーなど「動物病院で働く人」に、どんなイメージをもちますか?

「動物が好き」
「動物への愛が溢れている」
「やさしい」 などでしょうか?

「動物病院で働くこと」を目指す方は、動物が好きな方が多いのはたしかで、採用をしていると志望動機に「動物が好き」と書いている方がほとんどです。

だけど実を言うと、僕は、ものすごく動物が好きなわけではありませんし、自分のことを「やさしい人間」だと思っていません
そして「飼い主さんに寄り添った獣医療を」を目指しながらも、実は「人」に対しては苦手意識があるほどです。

動物が好きなわけでも、優しいわけでもなく、人が苦手な僕が、どうして獣医師の仕事を続けてきたのか。今日はそんなことを書いてみます。

長続きするのは「好奇心」をもっている人

「動物病院で働きたい」と思う人は、動物が好きな人がほとんどです。
でも一概に「好き」と言っても、その中身はさまざまではないでしょうか。

動物全般に対して、なんとなく抱く感情、
散歩先でよく出会う近所の方の飼い犬に対して抱く印象、
自分が飼うペットに対して抱く愛情、
獣医療に携わる専門家として動物に向ける眼差し……

どれが優れていて、どれが劣っているというわけではありません。

ただ、獣医療の臨床に携わってきた経験から言うと、「動物に対する愛情」が深い方よりも、「動物のことをもっと知りたい!」などの好奇心を強くもっている方のほうが、この仕事に馴染み、長続きしているように感じます。

* * *

以前、院内の研修を行った際、動物の輪郭を描いた紙を渡して「動物の内臓を書き込んでください」という課題を出したことがあります。

書かれた内容は、一人ひとり全く違っていて、「ざっくり」としか書いてない人もいれば、ものすごく詳細な構造まで書いている人も。

ここで少し補足をすると、動物病院では色々な職種の方が働いています。ただ、獣医師や動物看護師以外の職種では、資格取得に際してこうした学習が必須となるわけではありません。

しかし、この課題に対する回答は、こうした知識が必ずしも必須にならない職種のスタッフでも、書いている内容が一人ひとりまるで違っていました。

そして、後々になって振り返ってみたら、詳細な構造まで書いていた後者のスタッフのほうが成長していたのです。

僕は、こうした違いは「好奇心」から生まれるのではないかと思います。

* * *

動物に対する愛情は、大切なものだと理解しています。
ただ、愛情などの感情は、一時的なもので、いずれ変わり得るもの
一方「知りたい」という好奇心や探究心は、感情よりも、もっと長続きするのではないでしょうか。

もしかしたら他の仕事もそうかもしれませんが、
獣医療の臨床は、ある意味では地味なことの連続です。
だからこそ、好奇心をもてる人が、続けていけると思っています。
そして、好奇心をもって長く探究し続けることで、成長していけるのではないでしょうか。

「動物」がそこまで好きではない僕が、獣医師を続ける理由。

この辺りで、あらためて僕自身のことに話を戻します。

言っていることや書いていることだけから判断すると、僕は「優しい人」のように思われるかもしれませんが、動物がすごく好きなわけじゃありません(嫌いなわけではありませんが)。

ニュアンスを伝えるのは難しいけれど、僕にとって動物は、とても不思議で「なんでこんなことになるんだろう?」と思わずにはいられない存在で、どこか面白がって見ているとこがある。
だから、優しい人どころか、性格は相当よくないという自覚があります。

僕は、小さい頃から、ずっと生き物全般に興味があって、大きな石をひっくり返しては、その下にいる昆虫たちを眺めているような子ども時代を過ごしていました。

あと、小学生の頃、お祭りか何かで金魚をもらった時「この金魚は、魚類から両生類に進化するのだろうか?」と疑問に思い、金魚の水槽の水を少しずつ減らしていったことがあります。
今になって思えば残酷なことをしたなぁ……と感じます。
でも、これも「好奇心」からの行動だったのではないでしょうか。

もちろん、今はそんなことはしませんが(苦笑い)、根っこの部分はそう変わっていないと思っています。

動物や生き物は、本当に面白いし、興味がある。だからこそ、もっと理解したい——そうやってこの仕事を続けてきました。

「人こそが最も面白い生き物なんじゃないか」

「性格の悪さ」をバラすついでに、もう少し付け加えると、正直なところ、僕は人が苦手で、人付き合いに苦手意識があります。

これまでのnoteや動物病院のHPで、何度も「飼い主さんに寄り添って」や「飼い主さんとの対話を大切に」などと書いてきました。

「人が苦手なヤツがよく言うな」と思われるかもしれませんが(笑)、どちらも本音です。

僕は、ずっと「動物」や「生き物全般」に興味をもってきましたが、実は「人こそが最も面白い生き物なんじゃないか」と思っています。

なんと言っても面白いのは、人はお喋りができること。その分、色々と探り合いができるのが、人と関わり合う興味深さです。

ただ、普通に生きていると、大人同士が1対1で向き合って、本気で何かを問うたり、答えを返してくれる場面って、そんなに数多くあるわけではありません

一方、獣医療の臨床は、時としてシビアな決断が必要になる場面が少なくないことは、過去に何度かご紹介してきましたが、こうした場面は、まさに飼い主さんと真剣に向き合う限られた機会。

プレッシャーや大変さもありますが、実は、そんなところに面白さや興味深さ、やりがいを感じて働いています。

「小さい頃から動物が好きで」以外の志望動機を読んでみたい

……と、今日のnoteでは僕の性格の悪さを余すところなく披露してしましましたが、まとめると、残念ながら、僕は「愛情深い人」でも「優しい人」でもありません
だから、性格が良くて「動物のことも、人のことも大好きです」という人は、もしかしたら、僕とは合わないかもしれません(苦笑)。

なお、今、僕たちの病院に届く履歴書・職務経歴書の志望動機は、ほとんどが「私は小さい頃から動物が好きで〜」から始まります。
その後の内容はそれぞれですが、多くが「動物が好きで、自分で飼っていた動物が具合が悪くなってしまい、それを見つけてあげられなかった」とか「その時に助けてくれた獣医師さんに憧れて〜」などと続いていくのですが……そうした志望動機を読むたびに、正直なところ「またか」と思ってしまいます。

「元々好きだった」でも、いいとは思います。
しかし、好きになったり、興味をもったりするのに、どんなきっかけがあったかを言葉にして伝えてくれる人のほうが、どうしても興味が惹かれます。

そういう意味では
「私は元々、動物が嫌いでした。でも、◯◯をきっかけにすごく興味をもつようになりました」
などと書いてある人のほうが、会ってみたくなるかもしれません——なんて思ってしまう僕は、やっぱり性格が悪いでしょうか(苦笑)

ただ、動物に対する深い愛情をもっていて、真面目で熱心で真剣な人ほど潰れてしまい、続けられなくなってしまう……そんな様子をこれまでに何度も見てきました。
だからこそ、本当に動物を嫌いである必要はないけれど、根拠のない「好き/嫌い」よりも、興味をもって面白がって見られる、少し冷めた人のほうが獣医療の臨床の現場に向いているのかもしれない——それが、僕が経験から気づいたことです。

僕の意見は、決して多数派ではないかもしれませんが、こんな考えを面白がり、臨床の現場で、ともに探究してくれる「仲間」を募集しています。

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