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島日記 初仕事
数日振りに原付カブで走る。
初仕事、カブに乗れば庭にいる寒さと違い、防寒具を着て、ストールをぐるぐる巻きつけて、風に触れるところはないのに、刺すような冷気に巻き込まれる。
「やーまはしろがね朝日をあびて すーべるスキーの風きるはやさ とーぶは粉雪か舞いたつ霧か おおおこの身もかけるよかける」
朝日を浴びる山肌や、ひかる海を見ながら走っていると自然にこの歌を口ずさんでいる。
雪も降ってないし、スキーの経験もないのだが、なんだか風をきって滑走している気分になるのだ。
道路沿いはハゼの赤やポインセチアの赤、ブーゲンビリアの濃いピンク、なかなか華やかな冬の景色だ。
今日はタンカンのサンテ被せ作業。
ヒヨドリ避けや、風の摩擦避けなどのためにタンカンに、両開きの袋を被せる作業だ。
一つひとつ被せていく根気のいる作業だが、やらないとヒヨドリに食べられてしまう。
集団で来れば突かれて多大な被害を被るのだ。
今飛んでいるヒヨドリはまるまる太っている。
ヒヨドリの突いたあとをメジロが食べる。
去年のポンカン収穫の頃から、体力に不安を覚えて依頼があっても断ったが、今年は気合を入れて新年早々作業に出た。
「⚪︎⚪︎さんは、私たちの目標ですよ、まだ頑張ってください!」
後輩の面々に思いがけない激励を受けた。
青空の下で、鳥の声を聞きながら(害鳥だが)、脚立に乗り作業をしていると、生きている歓喜を全身で感じる。
ちぎれ雲がまたちぎれ、儚く消えていく。
たかい空にトンビが舞うと、静寂が訪れる。
天敵の偵察だ。
思うほど疲労はなく、また今宵もだれやみのビールがおいしい。
「乾杯!」
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今日も読んでくださってありがとうございます。