明年の田園都市-アフターコロナの都市計画-
タイトルを見てピンと来る方はどのくらいいるのでしょうか。エベネザー・ハワード著「明日の田園都市」。都市計画分野では世界的な名著です。「都市と農村の結婚」は有名なフレーズですね
ハワードは、19世紀のロンドン都市部の人口集中に起因する交通渋滞や大気汚染といった問題の解決策として、郊外へ住居を移すことを提唱するとともに、自らロンドン郊外に「Garden City(田園都市)」を築きました。「レッチワース」はその代表とも言えます。その後、多くの富裕層がロンドン都市部から郊外の田園都市へ移住してきました。
なぜ今こんなエントリーを書いているかと言うと、"アフターコロナ"の時代は、19世紀のロンドンで起きたのと現象が起きるのではないかと考えるからです。実は日本でも、高度経済成長期に郊外の宅地開発が盛んになりました。巨大団地が建設され、多くのサラリーマン世帯が郊外に住居を構えました。多摩ニュータウン、港北ニュータウン、千葉ニュータウンといったニュータウンが各地で建設され、平日都心へ労働力を供給する一大拠点を形成しました。
しかし、21世紀に入ると都心回帰が進み、主要駅前やベイサイドエリアを中心に超高層マンションが林立するようになりました。これらのマンションのウリは「通勤時間の削減」にあり、多くのマンションの販売広告が大手町や霞が関、新宿など、都心部への時間的アクセスの良さ、いわゆる"職住近接"を売り文句にしていました。
そして訪れた令和の時代の新型コロナウィルスの感染拡大。多くの企業でテレワークが導入され、人々はオフィスに行かずとも仕事ができる術を短期間で身に付けました。実際のビジネスの現場におけるメリットはさておき、テレワークは企業、従業員の双方にメリットがあります。企業にとっては、オフィスの延床面積や従業員の通勤手当の削減が期待されます。従業員にとっては、家族と過ごす時間や余暇の増加、満員電車での通勤時間の削減といった効果が期待されます。このような効果がある以上、コロナウィルスの感染拡大が終息した後もテレワークが支持される可能性は高いと思われます。
テレワークが定着した先に待ち受けるのは、再びの郊外進出でしょう。テレワークの定着によって、人々は「職場からの帰還先としての自宅の価値」よりも「仕事場としての自宅の価値」に重きを置くようになると推測されます。家賃が同じなら、建物が密集した都心部の狭い家ではなく自然を感じられる広々とした郊外の家への需要が高まることは想像に難くないと思います。まさに、19世紀後半のロンドンと同じ現象が再び起きようとしているのです。
あとがき:本当は6年前にレッチワースを訪れた時の写真を何枚か載せたかったのですが見つからず...。携帯の待受画面に設定していたレッチワース駅の写真(サムネイルに採用)と、レッチワース方面へ向かうナショナル・レールの電車が発着するキングスクロス駅の写真しかありませんでした。コロナウィルスの感染終息後、必ずやレッチワースを再訪したいと思います。
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