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Melody Gardot〜ひそやかに秋は沈黙する

このところ心身ともに緊張感の続く忙しない日々を送っている間に、辺りはすっかり晩秋となっていた。
時間もサマータイム(デイライトセービングタイム)から冬時間へと切り替わり、時計の針が1時間戻った。このサマータイム、ヨーロッパでは廃止することが可決されているのに、未だ実現せず。人の体内時計は、自動的にすんなりとは切り替えられない状態…

秋になると何処からか、いぶしたような匂いが漂ってくる。
この香ばしい香りは何処から来るのか。
日本に住んでいた時も、秋になると何処からか焚き火のような匂いがふと漂ってくることがあった。
雨上がりの道を歩いていると、色とりどりの落ち葉が地面を覆っていて、枯葉の少し湿った匂いがした。
自分の中では、これらは秋の匂いだ。

今の季節によく聴くのが、Melody Gardot のアルバム『My One And Only Thrill』だ。
スモーキーな味わいのある彼女の歌声は、熟成されたウィスキーのように、じんわりと心を潤す。
アルバム全体がまるで映画音楽のような雰囲気で、全曲おすすめ。

「My One And Only Thrill」

「Lover Undercover」


しっとりと情感たっぷりに歌いあげるメロディの声を、更に壮麗でドラマチックなストリングスが盛り上げる、シャンソンのような雰囲気もある楽曲の世界に引き込まれる。

「Our Love Is Easy」


メロディ・ガルドーの深みのあるシルキー・ヴォイス、音楽には、彼女のこれまでの人生が滲み出ているような気もする。
メロディは19歳の時に交通事故に遭い、生死の境を彷徨う大怪我を負い、その時の後遺症で視覚過敏となり、生涯サングラスが手放せなくなった。
しかし、そんな背景を抜きにしても、彼女の歌声には一度聴いたら忘れられないような唯一無二の魅力がある。
自分的には最近のジャズ・ヴォーカリストの中では、ベスト3に入る好きなアーティストだ。
自ら手がけている楽曲も、ソング・ライティングの面からも素晴らしいと思う。

「Baby I'm A Fool」

MVもミュージカルのワンシーンのようで素敵。

メロディは生粋のアメリカ人だが、パリを拠点に活動していることもあり、よく一緒に名前を挙げられるノラ・ジョーンズなどアメリカの近年を代表する女性ジャズ・ヴォーカリストとは一味違うというか、自己演出もあるのだろうけど、古き良き時代の女優のような佇まいにも、どこかヨーロピアンなエレガンスを感じる。

「La Vie En Rose」

シャンソンの名曲「バラ色の人生」もフランス語で歌ってます。
MVもフランス映画のような世界でうっとり。

「 Your Heart Is As Black As Night」

彼女のブルージーな面を堪能できる曲。

「C’est Magnifique」

こちらはアントニオ・ザンブージョとの共演。
ポルトガルのファドにボサノバを加えた楽曲は温かみがあり心地よい。

他にも近年は、ブラジリアン・ジャズを代表するギタリスト バーデン・パウエルの息子であるピアニスト フィリップ・バーデン・パウエルとのデュオなども行なっており、メロディ・ガルドーは、ますます興味の尽きない動向が楽しみなジャズ・ミュージシャンだ。


深まる秋の街角


”ひそやかに秋は沈黙する”

これは小椋冬美さんの漫画のタイトルで、秋になるとふと思い出す。
彼女の作品は、タイトルも詩的で、カラーセンスも抜群によかった。
今でも小椋さんの色彩感覚に影響をうけた名残りが自分の中にあると思う。


紅葉と落ち葉に覆われた公園


階段にも落ち葉が積もっている


秋はいつも、忍び足で静かに深まっている

寒々とした海岸に乾いた風が吹き、カオジロガンの群れが空を渡ってゆく

色のない墨絵のような冬が、もう、すぐそこまで来ている



「First Song」 (feat. Charlie Haden)

最近リリースされたばかりの新譜は、陰影のあるさらに深みの増した歌声が胸に染みる。





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