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猫派

私は、猫が大好きだ。
犬も嫌いじゃないけど、一緒に暮らすなら、だんぜん猫派だ。
猫は、一匹でいるのが当たり前で群れない。散歩させる必要がない。眠たくなったらすぐゴロンと横になり、夏は涼しいところ冬は暖かいところに、いつの間にか移動してる。
ご飯が欲しい時や、甘えたい時だけ寄ってきて気まぐれ、マイペースで人に媚びず、忠誠心なんてものはカケラもない。

猫の何がそんなにいいのか?
そもそも猫の形状というか、みめかたち、仕草が魅力的。猫の身体は、しなやかで流動体みたいにグニャグニャとして柔らかく、全てが曲線で描ける。
その時の機嫌で、シッポをビシビシ床に叩きつけたり、そっと揺らしたり、足に巻き付けたりしている。
おちょぼ口から、たまにチロっとはみ出してる小さな舌なんて、悶絶する愛らしさ。
ω型のマズルと呼ばれるぷっくりとした口周り、ぴくぴく動くヒゲ。三角のイカ耳。
まん丸に瞳孔が開いたり糸みたいに細くなったり、しょっちゅう表情が変わる、ガラス玉みたいにキラッと光る凛とした瞳。
猫の顔を見つめていると、だんだんヒトの顔に見えてきたりして、ついついヒトの言葉で話しかけてしまう。
よーするに、食べちゃいたいほど可愛い。猫は甘えてくる時、甘噛みと言って弱く噛んでくる時があるが、私も愛猫が愛しすぎて、ときどき首根っこを甘噛みしたり、頬ずりしていた。

うちの猫は人に対して警戒心が強く、一緒に暮らし始めてからも1年以上、私が外から帰宅し顔を合わせる度に「どちら様デスカ!?」といったテイで、ビビって逆毛を立て、恐怖のあまりピョーンと床から50cmくらいは爪先立ちで飛び上がり、驚いていた(笑)
朝、出勤前に化粧してる時は、仕事行っちゃダメ!という感じで膝に乗って来て甘えてたくせに、数時間経つと私のこと覚えてないんかい!とツッコミたくなる(笑)

猫は人じゃなく家につく、などと言われたりするがそうてもなく、私の体調が悪かったり、落ち込んでいる時は、いつの間にか側に居て、ふわふわの毛皮とモフモフの温かい体をぴったりくっつけて寄り添ってくれたし、ザラザラの舌で私の手や顔を母猫のように舐めてくれた。
ある時、私が泣いていたら、愛猫がぷにぷにの肉球で、私の頬に流れる涙をチョイチョイっと拭って慰めてくれたこともあった。
いや、ほんとですって(笑)
朝寝坊して電車に乗り遅れそうになってる時も、バタバタしてる私の後ろで、大丈夫?と心配そうな顔をして、というか半分面白がって、一緒に部屋中を駆け回ってくれたり(笑)
うちの猫がとくべつ愛情深かったのかもしれないが、しまいには、私が愛猫の面倒を見てるのか、愛猫に私が面倒見てもらってるのか分からないくらいで、姉や母親みたいに思える時もあり、私が愛猫のぷよぷよのお腹に顔を埋めて、甘えたりしていた。

しかし一度だけ、子猫の時、布団に続けてオシッコするようになった際に、霧吹きで水をかけ何度もダメ!と厳しく叱ったら、ジトーっと恨めしそうに目が据わり、次の瞬間、立ってる私の腕に飛びかかり、ガブリと噛みついてきたことがあった。
亡くなるまで唯の一度もシャーッと威嚇してきたことはなく、概ね優しい猫だったが、意外と気は強かった。いつもは猫可愛がりしてくる私に突然強く叱られたことにショックを受け、悔しかったのかもしれない。
私の腕には2本の牙が食い込み穴が開き、床にボトボト血が滴り惨事になったが、そんな時でも心底腹が立つということはなかった。
今でもその時の傷は私の腕に残っているが、その噛み跡さえも愛おしく、今も傷を見ると愛猫を思い出し、恋しくて泣けてくる。
愛猫がいた時は、毎日、相思相愛だった。
一人暮らしだった頃から、一緒にこの国へ移住してからも18年間、いつも私の側に居てくれた。

家族の誰よりも長く共に暮らし、夫や息子に対しては許せないことがあっても、不思議と愛猫には何をされても許せた。
はっきり言って彼らへの愛より、愛猫への愛のほうが優るくらいだったのは、内緒の話だ。

 人も、猫っぽいひと、犬っぽいひとに大別できる気がするのだけど、どうだろう?
私は、つり目なので猫っぽいとよく言われる。性格的にも猫寄りな自覚がある。基本夫のいう事は聞かない(笑)集中してる時に邪魔されると噛みつく(笑)
夫は、どちらかというと犬っぽい。体もデカいので大型犬、というか白熊の方が近いかも(笑)
優しそう(に見える)とよく言われるが、言い争いになると、夫は私に口では勝てないので、吠える(苦笑)
息子は性格が猫的。都合が悪くなると、目をパチパチさせ可愛こぶって、甘えて誤魔化そうとする(苦笑)
犬や猫は、飼い主に顔つきや雰囲気、性格まで似てくる、と言われたりもするけれど、当たらずしも遠からずかもしれないな、と思ったりする。




愛猫との出会いと別れ


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森野 しゑに
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