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15歳の地図

息子は先日、15歳の誕生日を迎えた。
今は少し落ち着いてきたが、最近まで次から次へとやらかし、エラいことになっていた。
遅刻、授業途中で抜け出す、教師に反抗するのは日常茶飯事…今まで何度学校から連絡が来たかしれない…
”行儀よくまじめなんて 出来やしなかった〜” by尾崎豊。息子の尾崎化が止まらない…

成績もどんどん下降し、このままでは高校進学は難しいかもしれない、と教師からも警告される始末…マジか!?
新学年が始まる前の日の夜には、友達とこっそり酒を飲み、飲み過ぎて気分が悪くなり夜中に何度も吐いて、登校初日になんと二日酔いで欠席するという事態になった…
ほんっとに、アホかっ!!!
急性アル中にでもなったらどうするつもりなのか!
…もう呆れ過ぎて怒る気にもならない…
ただでさえこの国ではアル中が社会問題になっている。恐らくこうして若いうちから飲酒を始める輩も多いせいではないか、と思われる。
それにしても、息子のヤンチャっぷりは、一体誰に似たのだろうか…
えっ?私?
いやいや、どちらかというと、私の父親似な気がする…隔世遺伝?イヤだなぁ…

息子は勉強が好きではない。
美術、音楽、体育にも興味がなく、得意な教科が一つもない…そして授業態度も悪い。
はじめはいちいち怒っていた私と夫も、いくら親が勉強しろ!しろ!と口酸っぱく言っても、本人にやる気がないんじゃ、どうしようもない…と、半ば諦め気味…
 
息子は常に "今" しか頭にないようだ。
毎日友達と遊び呆けて、宿題もしょっちゅう忘れている。
でも子供って本来 "今" が全てなんだろうな、とも思う。
息子は社交的でフットワークも軽く、友達の友達は皆んな友達という感じで輪を広げ、果てはSNSで知り合った子の街まで会いに行ったり(これはしつこく根掘り葉掘り相手の子について尋ね、出かけた先はGPSで追跡している)
最近では親が把握しきれないくらい、どんどん交友関係が拡大しており、内向的で非社交的な親とは真逆に、息子はコミュニケーション能力が高いとも言える。
息子を見ていると、つくづく、親と子は血が繋がっているとはいえ、全く別の人間なんだな…と思い知らされる。

この国では数年前から、なんと、高校まで義務教育になった。
だから息子のように勉強嫌いな子でも、たとえ高校へ入れなかったとしても、職業専門学校へは行かなければならなくなった。これは有難いのか、大きなお世話なのか…。
この国では高校入試はないが、中3一年間での主要教科成績の平均点で、どの高校に入学できるかが決まってしまう。
ある意味、一発逆転を狙える入試よりも、長いスパンで努力し続けなければならないので、厳しいとも言える。
そんなわけで、テストが近くなると夫がマンツーマン付きっきりで勉強を見るようになったのだが、全然わかんねぇ!とすぐ息子は叫ぶし、夫も次第にイライラするしで、お互い怒鳴り合いながらやっている(苦笑)
これは、息子がまだ日本語補習校に通っていた頃に、私が毎日宿題をみていた時と全く同じ状況なのだ(苦笑)
それでも流石に息子もこのままじゃマズいと思ったらしく、頑張った時は点数も上がるようになってきたが、何しろやる気にムラがあるタイプなので、結果もマチマチになってしまう。

この国では、高校を卒業する時に唯一、大学入学資格試験という厳しい試験が待ち受けている。
しかし入学出来さえすれは、大学院まで全ての学費が無料であり、逆に学生は補助金まで国から支給される。私立大学というものはなく全て公立だ。
夫など大学時代は当時のガールフレンドと二人分の補助金を合わせてローンを組み共同でアパートメントを購入し、同棲しながら大学に通っていたというから驚く。
だから、この国では家庭の経済的な事情で進学出来ないということは一切無い。社会人になった後からでも、何歳になっても、何度でも学校に通う人も多い。
夫も二つの大学、大学院にも行き、この国の教育システムを最大限に享受し、30歳近くまで学生だったが、そんな人も珍しくはない。
学費が高く自腹な日本人からしたら、大変有り難い教育システムなのだが、息子のような子にとっては、ブタに真珠、猫に小判…なんて勿体無いとつい思ってしまう。
以前は留学生まで学費無料だったが、教育費はもちろん国民の税金で賄われているため不満が噴出し、現在EU外からの留学生は有料になった。

ここ数年、反抗期の息子と正面から衝突する回数もどんどん増えているが、ぶつかり合ってもしばらくすると、いつの間にかくっついてきて、かわい子ぶって目をパチパチさせながら、未だにお母ちゃん〜と甘えてくる。
なんとまだ、私の膝に乗ってます…(苦笑)
ほぼ完全に体は大人で、身長もすくすく伸びついに180cm超えたというのに…
小さい私は、デカい息子に押しつぶされている(苦笑)
「お母ちゃん、ボクのこと好き?」
息子は小さな頃から、私に叱られるといつもそう聞いてきて、ハグしてという仕草をする。そんな時、私の方がすぐに気持ちが切り替えられず、なかなかハグもすぐしてあげられなかったりする。
我ながら度量の小さい人間だと思う。
そんな肝っ玉の小いせぇ親を、子は試しているのかもしれない。


今年も恒例の小豆クリーム抹茶ロールケーキを作った
相変わらず誕生日ケーキとは思えない地味さ
工程を間違え失敗して、もう一度作り直し疲労困憊…
年に一度しか作らないので
毎年同じような事でつまずいてる気がする…
   


息子は学校が終わっても真っ直ぐ家に帰って来ないことも度々あり、毎日のように、友達と夜遅くまで何時間もあてどなく外をほっつき歩いている。
それは、学校とか、親とか、煩わしいこと全てからの逃亡なのか。
そういえば息子は、小さな頃から地図を見るのが好きだった。
今もSNSやネットでゲームや動画を見ることに飽きると、スマホでGoogleマップを見ていることがよくある。
「どっか遠くへ行きたい」が、息子の口癖だ。
気づくと列車に乗って家から2、3時間はかかるけっこう遠くの街まで行っていて、GPSを見て驚くこともある。
行った先でも特に何をしたいわけでもなく、ただ彷徨うろついているだけなんだが。
この放浪癖は、私に似てしまったのだろうか…。
私も子供の頃は、いつの間にかふらっと外へ出て、知らない場所を歩き回っては親を心配させていたが、どうしてそうしたくなるのか自分でもわかってなかった。
大人になった今では、知らない街を歩くなんて、方向音痴だし、どちらかというと苦手な方だ。

15歳ともなれば、ここからは自分の人生を自分の頭で考え、いずれは自分の足で歩んで行かなければならないだろう。
あと3年もすれば、この国では自立するのが一般的だ。その後は、もう二度と親と一緒に暮らすことはない。
必ず独り立ちする時がやって来る。
どんなに危なっかしかろうと、心配だろうと、いつまでもつきっきりで面倒をみることも、ましてや息子の人生を代わってやることも出来ない。
親は側で見守るくらいしか出来ないのではないか。

息子はいったい、何処へ向かっているのだろう。
いずれは、人生地図を見つめ、自分で行き先を決め、生きて行かなければならない。




思えば昨年の今頃もやらかしていた…
誕生日の記事が、息子のやらかし記録になってしまっている…
後から振り返れば笑い話に、早くなってほしいものです


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森野 しゑに
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