柏餅、味噌あん
ざあざあと音が鳴っている。昨日の夕方から降り出した雨は、朝になってもまだ続いていた。電車が去ったばかりの駅のホームは閑散として、人影もまばらだ。
少しだけマスクをずらすと、ふっと柏餅の匂いがした。その正体が雨に濡れた土や草だとは知っているけれど、ハリのある緑の柏の葉に包まれた白い餅のビジュアルは容易に想像できた。
丸みのあるすべすべの餅に詰められたあんが、味噌あんだったら嬉しい。
私と母親は食べることが好きだ。気軽なランチからホテルのビュッフェまで、二人で色々な食事を楽しんだ。今でも美味しかった料理やお店の情報を送り合うし、行きたいお店のリストばかり増え続けている。
さて、味噌あんの柏餅といえば、母親と偶然立ち寄った駅チカで買ったのが初めてだった。粒あんとこしあんの隣に並んだ味噌あんが物珍しかった。
小豆の甘さよりもほんのり塩気のある味に、私はすっかり虜になってしまった。お団子だってあんこよりもみたらしの方が好きだから、順当だったのかもしれない。
味噌あんの柏餅の虜になって日が浅かった頃に、一度だけ母親が作ってくれたことがある。柏餅そのものはスーパーでも買えるけれど、目当ての味噌あんは見かけなかったからだ。
柏餅はしばらく冷凍庫の一角を占領していた。私は文字通り飽きるまで食べた。
もうすぐ端午の節句だ。GWは実家に帰省する予定だから、母親との買い物も兼ねて出かけるだろう。またどこかで柏餅を見つけるかもしれない。
粒あんもこしあんも好きだけれど、やっぱり私は味噌あんを選んでしまう気がする。
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