
【20歳以上限定】ウイスキーのスモーキーフレーバーをわかる人になりたい!わたしの話
この記事はお酒に関する情報が含まれておりますので、20歳未満の方は閲覧をご遠慮下さい。
ウイスキーが、お好きでしょ〜
わたしは、ウイスキーと聞くとこの音楽とともに、井川遥さんが脳裏に浮かぶ。
わたしももうお酒を嗜むには十分な年になる。
今回は、色気もありつつ、可愛らしさもある、そしてお酒の似合う井川遥さんのような素敵な女性になるべく、ウイスキーの知識でも蓄えよう、という企画です。
ただ、角瓶ではなく、ウイスキーの源流である、スコットランドのスモーキーモルトについてお話ししていこうと思います。
ウイスキーはどのようなフレーバーのものが好きですか?
わたしは、そこまで詳しくはないのですが、最近になってスモーキーっぽい香りのするものがおいしく感じるようになってきました。
あの、スモーキーさ。よく考えてみれば、どこからきているのか?
ウイスキーはこうできる
その前に、そもそもウイスキーってどうやってつくられているのか知らないと、スモーキーも何もわからん!
ということで、わたしの森の師匠に聞いたり、調べてみたり、しました。
これまた、深掘りしていると、酵素がどうたら、アミラーゼがどうたら、とうんちくおじさんのように、話が止まらなくなってしまうので、今回はざっくりした作り方をご紹介します。

このように、「発酵」まででウイスキーのベースとなるビールに似たようなお酒ができ、そのお酒を蒸溜(銅の釜で2回)、(オークの樽で何年も、場合によっては何十年も)貯蔵・熟成させます。
さて、冒頭でもお話ししていた、
スモーキーフレーバー。
これには「乾燥」の工程がキモです。
どういうことかと言うと、「ピート」と呼ばれる、泥炭、草炭を焚いた熱風で、発芽した大麦麦芽を乾燥させているんです。
この時、あんまり熱すぎる風を送ると、「糖化」に必要な、せっかくの酵素が壊れてしまうので、火加減が大切らしく、なんとも繊細。
なので、炎を出すというよりは、煙を立たせるくらいにするために、わざと多少湿ったピートを使ったりもします。
その結果、いぶしたピートの香りが麦芽に移り、その後のウイスキーの味わいに影響してくるというわけです。(「ピーティー」と言うらしい。)
ピートとは?
「ピート」というのは、泥炭と呼ばれるもので、炭の一種です。見た目は土みたいなのですが、よく燃えます。なので、麦芽を乾燥させるための燃料として使われることもあります。
ピートは、湿原の枯れた植物が、浸水していて空気に触れないため、長い長い年月をかけて、ゆっくりと分解され、炭化し、泥炭に変わっていきます。
どこにでもある訳ではなく、ウイスキーの本場であるスコットランドのような、気温の低い湿地帯でよく採れるそうです。
スコットランド北部などは非常に寒いので、樹が育ちにくく、ピートが身近で手に入る一番手ごろな燃料でした。たまたま燃料として馴染みのあったピートを使ったら、おいしいウイスキーができた!というような感じだったのでしょうか。
ピートで変わるウイスキーの味わい
ピートを使用していれば、全て同じ味になるということは、もちろんありません。
それぞれの蒸溜所が目指す味が異なるので、焚くピートの量、使うピートの水分量、燃焼のさせ方、燻煙時間などによって、それぞれウイスキーの味わいは変わってきます。
また、それだけではなく、ピートがある土地柄も大きく影響してきます。
海に面している土地では、潮風の影響を受け、強い海風が運んできた海草がたくさん含まれています。こうした環境からスモーキーさの中に潮の香が感じられるなど、どこのピートを使用するかで、香りが大きく変わるらしい。
見た目はただの黒っぽい塊なのに、奥深さを秘めていますね。
ピートとマザーウォーター
さらに奥深さを感じるのは、これまでお話ししてきたピート。
実はウイスキーの味わいに影響しているのは、燃料として使われる時だけではありません。
ここでも影響してきます。
「浸漬」と「糖化」です。
ここで使われる水は「マザーウォーター」と呼ばれ、ウイスキーの個性を決めます。水が変われば、ウイスキーの味わいも変わる。「乾燥」と同じくらい大切な工程です。
スコットランドの場合、この仕込み水はピートのある湿原(ピートランド)の中を流れてきた水を使うことが多いらしい。だから、ピートランドの環境によって、水も変わり、ウイスキーの味わいにも影響してくるというわけです。
ピートの危機
ウイスキーの味わいや水にとって、とても重要なピートランドですが、実は現在、本来の姿を失いつつあるらしいのです。
経済が発展するにつれ、農業や林業、道路のインフラ建設、牧草地開発など、さまざまな理由で、水を抜かれてしまった湿原がどんどん増えているんだそうです。
ピートランドにとって、乾燥は命取り。
浸水していることで炭化するのですが、水がなければ、ピートにはなりません。
そして、乾燥して酸素に触れたピートは、どんどん分解されて、CO2の排出源になってしまいます。
(炭素(C)と酸素(O2)が結合してしまう)
さらに、実はスコットランドで掘られているピートの99%以上が園芸用のピートのようで、そのピートモスの採掘も影響しているらしい。
意外にもウイスキー用のピートはほんの少しなんですね。
ピートランドって地球の陸上面積のわずか3%しかないのに、土壌炭素の40%がそこにあります。つまり、排水して乾燥させたり、採掘して利用しちゃうと、その40パーセントがどんどん減ってしまう。
技術面などで地球温暖化にどんなに取り組んだとしても、ピートランドの乾燥や破壊が進めば、必然的に地球温暖化は進行するのです。
ピートランドの存在というは、地球全体に関わってきます。
これまであまり注目されていなかったのに、実は地球の未来を握っているなんて。
そういうわけで、いま、スコットランドでは、巨額の税金を投入して、傷ついたピートランドの復元に取り組み始めています。
でも、政府のお金だけでは、目標面積を復元するには足りません。
ピートとサントリー
サントリーグループは、スコットランドに5つの蒸溜所を持っています。
そこで、サントリーグループも、2021年11月からスコットランドでの泥炭地および水源の保全再生活動「Peatland Water Sanctuary」を開始しました。もちろん、我らが師匠も深く関わっています。

2030年までに400万米ドル以上を投資して、1300ha(東京ドーム278個分!わかりにくい!)の泥炭地を保全再生し、同時に水資源も守っていく予定だそうです。
「この面積はサントリーグループで使用しているピートを持続可能にするために必要な面積で、それだけでは、当たり前の義務みたいなものだから、2040年までに、その2倍の面積を目指す。」
と師匠は言っていました。(がんばれ、師匠!)
そのはじまりとして、アードモア蒸溜所周辺地域の約15haで活動をスタートさせました。
日本の「天然水の森」の時もそうですが、スタートは小さいところから、そしてここから一気にスピードアップさせていくのだろうと思います。
ちなみにアードモア蒸溜所はここ。

スモーキーフレーバーはウイスキーの源流
なんだかウイスキーは奥深くて、お酒を嗜むいい女になるには程遠い気しかしないのですが、ほんの少しでも知識を知ってからウイスキーを飲むと、このウイスキーがどんな風につくられてここにあるのかイメージが膨らんだり、土地柄に思いをはせてみたり…。
知識を蓄えれば蓄えるほど、狭く感じていた自分の世界が広がる気がします。「勉強」と言われると、反抗したくなるけれど、何かを知るという行為は尊いことかも。
今回お話しした、ピートを使用してつくられた麦芽は「ピーテッド麦芽」(滑舌のせいか、声に出すとアホっぽくなってしまう。)と呼ばれていて、大昔は、ほとんどすべてのウイスキーがこのピーテッド麦芽を使用していたらしいのですが、最近は、あまりスモーキー、ピーティーさを強く感じさせない、あるいはピートを使用しない「ノンピーテッド麦芽」を原料としたモルトウイスキーが主流となっているようです。
たしかに、居酒屋などで飲むハイボールは、スモーキーというよりはスッキリした印象がありますよね。
「ピーテッド麦芽」を使用した、スモーキーフレーバーはウイスキーの原点。そのうち、サントリーグループが蒸溜所を構える、「ラフロイグ」「ボウモア」「アードモア」の3つのブランドは、この伝統的な香りを守り続けています。

今回はアードモア片手に執筆してました。
アードモアに使われているピートは潮の香を受けていないようで、スモーキーさの中でも爽やかな印象でした。おいしい!
ちなみにラベルの鳥は、イヌワシ(ゴールデンイーグル)です。
ラベルのイヌワシは全てゴールドのシルエットでデザインされていますが、本物のイヌワシは、頭の部分だけがゴールドで「ゴールデンイーグル」という名前がついたらしいです。
時々、蒸溜所にも飛んでくるみたい。
前回の土は育つという記事でも思いましたが、普段から何気なく嗜んでいるもの、わたしたちの糧となっているものはすべて、地球の営みの中にあります。
知れば知るほど、わたしたち人間は自然のほんの一部であり、繊細で大胆な自然、地球をきちんと感じて、生きていきたいと感じます。
そして、4月22日は「アースデイ(地球の日)」のようで、世界中で地球自体や環境のことを考える日のようです。
きっかけはなんでもいいですが、少しだけ一緒に地球について思いを馳せてみましょう!
もし、ウイスキーから地球を考えてみようかな、なんて思った方は、一緒に飲み比べしましょう。
▼土は育つぞ、という話