COVID-19の医学情報をどう扱い行動するか(3)免疫を高めることの意味
では、どうすれば感染のリスクを下げることができるのでしょうか?そこには身体の防御システム、免疫が関わってきます。
症状の強さと、感染拡大リスクば別
エボラ出血熱やSARSは恐ろしい感染症ですが、COVID-19に比較すれば封じ込めは容易でした。なぜなら、発病すると多くのケースで強い症状が現れ、それが周囲への感染力とリンクしているからです。
エボラは過去の事例では致死率が90%に達することもあり、患者が長期間動き回り広範囲にウイルスをまき散らすことは少なくなります。しかも潜伏期間中は感染力はなく発病後に発現するので、症状自体は激しいものの感染予防という意味では対処しやすい面もあるのです。SARSもこれは同様で、潜伏期間や無症候感染者は周囲への感染力はないか、あっても非常に弱いといわれています。
暴露を避けることの難しさ
では新型コロナウイルスはどうでしょう?ご存じのように感染者の大半は症状が軽く重症化の比率は高くありません。しかも厄介なことに、最長2週間に及ぶ潜伏期間の段階や、無症候感染者であっても症状がある患者と同等の感染力を持つらしいことが分かっています。ということは、私たちは知らず知らずのうちに感染力が高い新型コロナウイルスに暴露されるリスクが高いということになります。むしろ暴露がある前提で考えるべきだと言ってもいいかも知れません。
暴露と、感染の成立はこれまた別
私たちの口腔や鼻、眼の粘膜にウイルスが接触する(暴露される)ことと、感染の成立、つまりウイルスが体内に入り込むのに成功することはイコールではありません。粘膜には様々な、そして強力な防御機構が備わっており、ウイルスに暴露されたとしても、それを排除する力が強ければ感染が成立しない可能性が高まります。その仕組みを知ることで、いま私たちができ得る対処法が見えてきます。
粘膜の防御機構は「粘液」が左右する
粘膜の防御機構には大きく分けて物理的バリアと、化学的バリアに分けられます。
物理的バリア;最も重要なものは粘液です。タンパク質の一種ムチンを主成分とする粘液は粘膜表面を覆い、病原体から細胞を護っています。気道粘膜には線毛があり、侵入した異物を排除するように運動しますし、口腔内には消化液を兼ねた唾液が1日に約1.5リットルも分泌されています。また、粘液はこれからお話しする化学的バリアの主戦場にもなっています。
化学的バリア;粘液中には様々な抗菌・抗ウイルス物質が分泌されています。代表的なものをあげるとラクトフェリン、ディフェンシン、リゾチームなどです。これらの分子が粘液中に分泌されて病原体を無効化し、感染を防御します。
「粘液防衛ライン」が突破されたら、「免疫」の出番
粘膜の物理的・化学的防御だけで守り切ることが難しくなっても、そこで諦める必要はありません。外からの敵を排除するために構築された精緻なしくみ、免疫が控えています。
自然免疫;病原体が侵入する前から、免疫のシステムは常にパトロールをしています。ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、樹状細胞などの「免疫担当細胞」と呼ばれる白血球の仲間が、侵入してきた敵を捕捉して排除し、同時に敵の情報を細かく収集して次の段階の「獲得免疫」を準備していきます。また、敵の種類によらず幅広く防御するために産生される免疫グロブリンA(IgA)も粘液中に分泌されます。抗ウイルス作用のある免疫物質、インターフェロンが産生されるのもこの段階です。
獲得免疫;樹状細胞などが収集した敵の情報をもとに、免疫システの作戦会議が開かれます。特定の敵を倒すための専門の武器を与えられたキラーT細胞、敵の弱点を突くために特化した抗体の産生をうながすヘルパーT細胞などが活躍し、敵を排除するためのシステムがフル回転します。ワクチンを接種する目的も、この獲得免疫の機能を利用したものですし、「検査で抗体ができていたから感染の心配はない」と判断できるのもこのためです。
どうすればウイルスの侵入を阻止できるのか?
ちょっと難しい話になってしまいましたね。この記事でお話しした防御・免疫機構のシステムはとても精緻で複雑です。専門家でなければ詳しく理解するのは難しいと思います。
ですが、皆様が心がけて頂きたいことをお伝えすることは可能です。このシステムを十分に稼働させるためには様々な要素が必要になります。次からの記事では、それを具体的にお伝えしようと思います。
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