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[アクナイ]『彼方を望む』で一番好きな回、キアーベ一味のおしっこ回「荒野悠々」

キアーベの明るさが、この重苦しいアークナイツの世界と対比してむしろ辛い

2023年4月4日から”記録復元”が解放された過去イベント『彼方を望む』。毎回、世界観やキャラクターを深掘りした、複数の短編が登場するオムニバスイベントのひとつです。この『彼方を望む』は2021年の7月に開催され、メインストーリーの一区切りである第8章実装後初めてのオムニバスイベントとなりました。ロドスのオペレーターたちが、理想を求めて新天地への一歩を踏み出すことをテーマに物語が描かれます。

そのうちの一幕「荒野悠々」は、アークナイツらしくない明るさから始まり、「でもやっぱりアークナイツ」なストーリーでした。

シラクーザ出身、ロドス男子高校生枠のキアーベファミリー

「荒野悠々」で描かれるのは、”キアーベ”、”ブローカ”、”アオスタ”の3人。彼らはマフィアが支配する国シラクーザの元マフィアで、裏切りと追放、そして鉱石病への感染をきっかけにロドスへと訪れます。「荒野悠々」は、そんな3人がロドスへと加入する少し前の話。

ファミリーを抜け出し街から逃げ出したキアーベ一味は、逃げる際に盗みだした車で荒野の先にある次の街”ロコモティヴァシティ”を目指します。しかしその道中、彼らは車両の故障により立ち往生することに。

『アークナイツ』といえば”鉱石病”と呼ばれる不治の病気をテーマに、それに感染し迫害を受ける人々を巡った重たい空気の漂うストーリーが魅力のひとつ。一方、このキアーベ一味を主人公とした物語では男子高校生のような若さのある3人の、明るい導入から始まります。

壊れた車を治すアオスタの横で、虫を眺めるキアーベ。立ち絵のアオスタの顔が、心なしかだんだんと睨みつけるような表情にも見えてきます。そりゃそうだ。

元修理工のキアーベならすぐに終えられるであろう自動車の修理を、元マフィアであるアオスタとブローカが行っているのは鉱石病を患った彼を気遣ってのこと。特にアオスタは、ファミリーで唯一鉱石病に感染しなかったため、自分が頑張らなければと気負うあまり2人から「母親のよう」と言われてしまうほど。

実際、キアーベは血を吐くほどの重症で、この旅路も彼にとっては辛いもののはず。しかしそれを見せないような明るさは、大胆不敵で自由奔放と評される彼の人となりなのでしょう。

まさかアークナイツで「ションベン」や「立ちション」というワードを目にする日が来るとは。
おしっこに完璧な曲線などあるのでしょうか。

再開した旅の車中では、カーオーディオから流れる音楽を聞きながら、キアーベファミリーとしての再出発や、古いマフィアが支配するシラクーザの社会への不満など、若者特有の社会への反発や将来への希望に会話を膨らませます。

その中でも印象的だったのは、ブローカの読んでいた恋愛小説をきっかけに始まった恋の話題。マフィアやストリートギャング出身の彼らが、喧嘩や抗争に明け暮れる日々で恋愛を経験したことが無いことが明らかにされます。

一方で、そんな恋愛小説を「暇なときに読むのは悪くはない」とするブローカ。寡黙な彼が、そのような小説に多少なりとも興味をもっているのは、個人的には意外でした。

組織から裏切られた経験もあり、ロドスのような大きな組織に対する嫌悪を隠さないブローカ。ボイスからも薄々勘付いていましたが、意外とカワイイとこあるじゃんか君~!!

リーダーは相変わらずこんな感じ。

天災の影響から人が一人もいなくなった荒野を駆ける最中、3人は野盗による商人の襲撃に出くわします。キアーベの症状や、手持ちの物資の少なさから冷静にその場を去ることを提案するアオスタに、キアーベは商人を助けることでお礼をふんだくろうと画策します……。

退屈な荒野の中で突如現れたケンカに、満面の笑みを浮かべるキアーベ。やっぱり恋愛よりケンカのほうが好きそう。

”超シラクーザ人”でも描かれた、キアーベファミリー

そんな3人の様子は統合戦略”ファントムと紅き貴石”のシナリオのひとつ、月次小隊”超シラクーザ人”でも描かれていました。

この物語では、キアーベが高級レストランの偽クーポン券を掴まされるところから始まります。レストランの名前はクラシックレストラン。安くで食事ができるということで、キアーベがアオスタとブローカを連れて訪れようとしますが、出どころの分からないクーポン券に2人は訝しみます。

アオスタ「行きません」ブローカ「行かない」

しかし、ブローカにはクーポン券に書かれたおすすめ料理の”マーマレードマカロニ”に聞き覚えがあるようで……?

恐らく、彼らの物語はいつも破天荒な性格のキアーベをきっかけに動き出すのでしょう。

オペレーターたちの何気ない日常が描かれる月次小隊の通信レコーダー。キアーベファミリーを描いたこの超シラクーザ人は、故郷であるシラクーザのマフィアが支配する特殊な社会や、食に対するシラクーザ人の熱意、そして彼ら自身がその一員であることを、この日常会話から感じさせてくれるシナリオとなっていました。

明るく振る舞いつつも、”鉱石病”という不治の病に向き合うアークナイツのキャラクターたち

アークナイツの暗い雰囲気からは一歩引いて、明かるい青年たちを描かれることの多いキアーベ一味。しかし荒野悠々のストーリー後半では、そんな彼らの鉱石病に対するやり場のない感情が描かれます。

荒野の真ん中で止まってしまった車を押して進む3人。しかしここで、最も重症なキアーベの体に限界が訪れます。元々マフィアを抜け出した段階で鉱石病を患っており、その上ただでさえ過酷な荒野に薬なしで挑んできた彼ら。

病気や将来への不安を持ち前の明るさで無理やり押し殺してきたキアーベでしたが、自分を苦しめている鉱石病への怒りをアオスタとキアーベの2人に吐露します。

元々いたファミリーに裏切られたのも鉱石病が原因でした。

ゲームでは威勢のいい掛け声が響き渡り、元気のある青年というイメージの彼ですが、そんな彼もロドスの他のオペレーターと変わらない鉱石病患者の一人であることを感じさせます。

マフィアとしてキアーベファミリーの3人で成り上がるという彼の夢は、いつ生命を失うかも分からないような危ない夢ですが、それでも彼の大きな目標でした。それが鉱石病という病で挫かれるのは、誰にとっても辛いもの。車の後部座席に横たわる彼のセリフからは、そんな悔しさが滲みてていました。

困難な状況にありながら、新天地を目指して駆け抜ける3人の青年を描いた荒野悠々。そこにあるはずだった日常や未来が鉱石病により失われてしまう、そんなアークナイツのメインテーマが色濃く描かれた物語でした。

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