あの子の日記 「雨粒を数えて」
日本のどこかの、誰かの1日を切り取った短篇日記集
「姉ちゃん、おれさ、よく分かんないんだよね。生きるとか死ぬとか。
今朝となりの家のおばあちゃんが亡くなったって聞いたけど、まだあんまり信じてないんだ。だってこの間まで普通に話してたし、元気そうだったんだもん。
お葬式に行ったら、亡くなってるってことを受け入れられるのかな。
棺の中で眠ってる姿を見たら、もう会えないってこと、ちゃんと受け入れられるのかな。
いつかはさ、姉ちゃんも、父さんも、母さんも、じいちゃんも、ばあちゃんも、いなくなっちゃうんだよな。
明日そうなったら、おれ、現実だって分かんなくてどっかに逃げちゃうかもしれない」
そう言った弟は、鼻をすすりながら、たくさんの雨粒を抱えた空を見上げた。
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あたまのネジが何個か抜けちゃったので、ホームセンターで調達したいです。