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春、はなびら

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2019年3月の記事一覧

わたしの日記 「ざらついた愛たちよ」

あの子の日記 特別編 出会った人のアンバランスさに惹かれたり引いたりしながら、またひとつ歳をとった。23回目の年齢更新をして数日たち、やかましい道路沿いの小さなカフェでコーヒーにミルクを入れながらこれを書いている。 白いカップに注がれた温かいコーヒー。鼻がつまってよく分からないけれど、たぶんいい香りがしている。限りなく黒に近かった茶色はミルクと混ざって、やさしい茶色に変化した。 そんなコーヒーをスプーンでくるくる混ぜながら、相変わらず真っ白なカップをうらやましく思う。ミ

あの子の日記 「さよならリボン」

日本のどこかの、誰かの1日を切り取った短篇日記集 誰かが椅子を引いた。椅子の脚と床がこすれた音はトロンボーンの音色に似ていて、シより半音低い音程だった。 もしかしたらどこかに奏者がいるんじゃないかと周りを見回してみたけれど、ショッピングモール内の小さなフードコートには私たちと似たような中高生がいるだけだった。 「さっきの聞こえた?」 「なにが?」 「椅子引いた音がB♭だった。あそこの東高の子たちのところ」 3年前、受験で落ちた東高の制服は県内トップクラスの可愛さだった