帰ってきた、という感覚
新幹線は人間のこころの許容速度を超えていると思う。
数時間前まで数百キロ先にいたのに、もう戻ってきた。
飛行機はまず飛んでいる時点で理解の範疇を超えているので、浮ついた気持ちのまま瞬間移動した気分になれる。
新幹線は鈍行電車の延長のような顔をして地に車輪をつけて走るから、騙される。
こころが追いつかないが、ともかく帰ってきた。
この帰ってきた、という感覚は人によって違うと身に染みた。
地元のもつ空気は知らず知らずのうちに自分の中に多く含まれている。
故郷の駅に降り立った時の、えも言えぬ安心感はなんなのだろうか。
瀬戸内の空気はカラッとしていた。
東京の空気は生ぬるかった。
関西出身の友人は前者の空気が懐かしく、私は後者の空気に安心する。
上京してきた人にとって、東京は故郷になり得ず、この生温かい空気はずっと他人行儀のままなのかもしれない。
地元が違うと、その距離は平行線で、交わることがないのだろうか。同じ場所で安心することはこの先ないのだろうか。
私がこの先も帰りたい場所は、東京なのか。
かしこ
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